『Apex Legends』にて、ワットソンの強化アイデアについて議論が交わされたようだ。次なるシーズンの開幕も迫り、そろそろプレイヤーたちは各レジェンドの調整について気になってくる頃合い。海外掲示板Redditでは、ユーザーから「こんな強化があったらいいな」というアイデアが話題になることが少なくない。注目を集めたアイデアには開発者が直々にコメントをつけることもあり、「それいいね」とお墨付きをもらえることもあれば、ダメ出しを受けることもある。
今注目を集めているのは、ワットソンが「周辺セキュリティ」で呼び出すフェンスにまつわる提案だ。その内容はいたってシンプル。現在は強烈な光を放ち目立っているフェンスを、ぐっと控え目に、見えにくくするというものだ。たしかにフェンスが視認しづらいデザインになれば、だまし討ちのような使い道も広がり、戦略の幅も広がりそうではある。しかし、スレッドに登場した開発者によれば、このアイデアには欠点があるようだ。
議論の発端で開発者は、なぜ現状のゲーム内におけるフェンスがはっきりと目立ち、敵に見えるようにデザインされているのかを考えてみるように問いかけている。開発者によれば、あえて目立つようにデザインされているからこそ、ゲームデザイナーにとってワットソンを調整する幅が生み出されているのだという。
投稿者が提示したフェンスは、黒地ではない背景や、戦闘中に視認するのが非常に困難なデザインとなっている。一般的なゲームデザインの感覚において、目に見えない罠に引っかかったときの影響やそれに付随するイベントが及ぼす影響は、できるだけ最小限に抑えなくてはならない、と開発者は語る。不可視の罠は予測できない死につながり、プレイするうえで大きなフラストレーションを誘発することになるからだ。
もし見えないフェンスを使うワットソンを敵に回してプレイする場合、プレイヤーは歩く前にあらゆる場所を注意しなくてはならなくなる。とくに、フェンスが開けた空間を広範囲にわたってカバーできる場合はなおさらだ。ゲームデザインにおいて、ある仕組みに対する警告は、その仕組みが及ぼす影響に見合ったものでなくてはならない、と開発者は語る。もしワットソンのフェンスを見えにくくするなら、ゲームデザイナーはその分だけフェンスの与える効果を抑えなくてはならない。よって、長期的なワットソンのバフという点で考えると、逆効果になってしまうわけだ。
あるユーザーからは、「フェンスがカバーする範囲に応じて、フェンスの目立つ度合いを変化させてはどうか」という提案も飛び出した。ただし開発者によれば、そうしたシステムを導入すると、フェンスを置くスペースの限られるエリアにて、プレイヤーは自分でフェンスの目立つ度合いを調節できないことにフラストレーションを感じるだろうとコメント。またどの程度のカバー範囲でどこまで目立つのか、といった感覚は敵にとってもワットソンにとってもつかみにくく、仕組みが複雑すぎるため適切ではないとしている。開発者は「単純明快であれ」と述べており、理解しやすいシンプルなキャラクターで自然なインタラクションを呼び起こすデザインこそ、エレガントな解法であると伝えた。
ちなみに開発者は余談として、同じ防衛型レジェンドのコースティックとワットソンについての比較も語っている。コースティックは「なるべくその場に留まらせて、ゆっくり死に至らしめる」のに対し、ワットソンは、「入ってこさせて、スローダウンして仕留める」ことが主眼に置かれているという。というのもワットソンのフェンスは、触れると移動速度のスローダウン効果が発動する。機動性を落とす効果のアビリティは『Apex Legends』において珍しく、走って銃弾を避けるのがきわめて難しくなる。あまり活かされていないものの、ワットソンの強みはスローダウンにこそあり、コースティックのガスとは根本的に性質が異なる、というのが開発者の見解のようだ(ただしコースティックのガスにもスロー効果はある)。
「不可視のフェンス」はたしかにワットソンにとって有利であるものの、ゲームデザイン全体から見るとバランスを欠いた設計になってしまう。レジェンドの能力は、つねにそれを使う側と、対抗する側の立場から熟慮されて用意されているのだ。ユーザーの提案から、レジェンドの設計思想が垣間見えた一幕となった。