ゲームをプレイするなかでは、実在のロケーションからファンタジー世界まで、作品ごとに異なるさまざまな環境を体験することとなる。そうしたゲームのステージをウェブ上に再現し、自由に閲覧できるウェブサイトが存在しており、海外で話題となっているようだ。
それはnoclipと呼ばれるウェブサイトで、Jasperなる人物と多数の協力者によって制作・運営されている。彼らは、ゲーム開発者やアーティスト、エンジニアなどであるとのこと。サイトには、3Dゲームが多数リストアップされており、タイトルと個別の収録ステージを選択すると、画面上にそのステージが表示される仕組みだ。
注目すべき点は、単にステージの画像を閲覧できるというわけではなく、オリジナルのゲームのステージをそのまま3Dで再現して描画していること。閲覧者はカメラを動かして、ステージ空間の中から外まで自由に見て回ることができるのだ。スクリプトで移動するオブジェクトや生物なども、実際のゲームそのままに動いている。なお、ゲームをプレイできるわけではない。
対応タイトルは、任天堂ハードの同社タイトルが特に多く、たとえば『スーパーマリオギャラクシー』や『ルイージマンション』『ゼルダの伝説 時のオカリナ』『メトロイドプライム』『大乱闘スマッシュブラザーズX』など30タイトル以上。また、『塊魂』や『ファイナルファンタジーX』『GTA3』などのPS2タイトルのほか、PC版の『ダークソウル』や『Half-Life 2』『Portal』なども。一見2Dゲームだが3Dで構築されている『Fez』もみられる。
このサイトは2019年頃には公開されており、一部では知られた存在だった模様。そして、最近になって著名タイトルを手がけるゲーム開発者らの目に留まり、広く知れ渡る結果となったようだ。サイト公開の目的は、ゲームの素晴らしいレベルデザインやアートに賛辞を送るためとのこと。また各タイトルの開発陣が、直面した問題の数々をどのようにして解決したのか、その手法を学ぶ機会になるとしている。
ただ気になるのは、各ステージの再現にはオリジナルのゲームデータが使用されていることだ。FAQでもそのことが明言されている。当然それらのデータは各社の著作物であり、基本的に許可なく使用することは許されない。これまでにも、アセットを流用したファンゲームが、権利元の要求によって開発中止に追い込まれた例が数多くみられた。
ただ同サイトは、noclipはゲームではなく、いわば美術館であるとコメント。権利元の製品と競合する性質のものではなく、また寄付を含め収益を得ているわけでもないため、権利侵害を訴えられることはあまり心配していないという。もっとも、実際に取り下げ要求を受ければ、それに従う考えを示している。
noclipは、人気ゲームのステージがどのように構築されているのかをつぶさに観察することができ、開発者目線では非常に有用なサイトとなっているようである。しかし権利関係においては危うさがあり、今後も存続し、さらに対応タイトルを追加していけるのかどうかは不透明である。