ウクライナ保安庁は7月8日、大規模な電気窃盗容疑にて、仮想通貨のマイニング施設を摘発したと発表した。同事件は、その押収物のなかに3800台ものPS4本体が含まれていたことで一部で注目されたが、実際には『FIFA 21』を使ったファーミング行為を中心おこなわれていた可能性があるようだ。海外メディアEurogamerなどが報じている。
今回ウクライナ保安庁の捜索を受けたのは、ヴィーンヌィツャ州の地元電力会社JSC Vinnytsiaoblenerhoの敷地内にある旧施設。ヴィーンヌィツャおよびキエフ出身の容疑者たちが、ここに仮想通貨マイニング設備を構築し、電力使用量を偽装する特殊な電力メーターを使って電気窃盗をおこなっていたとのこと。被害額としては、ひと月あたり約2000万〜2800万円にもおよんでいたそうだ。ウクライナ保安庁は、この違法行為に関わった人物を特定し訴追するとコメント。電力会社関係者の関与があるかどうかも捜査すると発表している。
そして押収物の内容としては、500台以上のGPUや50台のプロセッサ、その他ノートPCや携帯電話などが挙げられており、さらに3800台ものゲームコンソールも含まれる。具体的な機種は言及されていないが、公開された施設の写真では、PS4本体がラックに大量に並べられている様子が写っている。
当局の発表では、当該施設でおこなわれていたのは仮想通貨のマイニングであり、国内最大の違法マイニング施設だったとしている。ただ地元経済紙Deloは、ウクライナ保安庁関係者の証言も交えながら、実際は『FIFA 21』を使ったファーミング行為がメインだったと報じている。そもそも、仮想通貨のマイニング目的にPS4本体を使用するのは、その処理能力からして効率的ではなく、また公開された写真では、PS4本体とともにに何らかのゲームディスクが写っていると指摘している。
写真は解像度が低くどのゲームタイトルかははっきりしないが、関係者はEAのサッカーゲーム『FIFA』シリーズのものだと証言したという。確かに、ラベルの配色は『FIFA 21』のものに似ている。そしてその関係者によると、この施設では同作とPC制御のBotを使い、獲得したゲーム内アイテムを販売していたとのこと。
『FIFA 21』のゲームモードFIFA Ultimate Teamにおいては、FUTコインと呼ばれるゲーム内通貨が存在し、新たな選手の購入に使用可能。FUTコインは、試合のプレイや移籍市場での売買を通じて入手でき、今回摘発された施設では、Botに試合をさせてFUTコインを稼いでいた模様である。
FUTコインの売買はEAによって禁止されているが、それでも取引をおこなう場が世界中に存在する。BANのリスクを冒してでもRMTに手を出すユーザーは後を絶たないようで、今回の犯行グループもファーミングにて獲得したFUTコインを売りさばいていたのかもしれない。
なお、Deloの取材に対し地元電力会社は、当該施設は同社はすでに管理しておらず、押収品に関しても関知していないため、事件の詳細は分からないと回答したとのこと。またウクライナ保安庁も、まだ捜査中であることから、PS4本体の使用目的など詳しいことは話せないとコメントしたそうだ。そのため、仮想通貨のマイニングではなくFUTコインのファーミングをおこなっていたとはまだ断定できないが、大量のPS4本体が押収されるという耳目を引く事件となった。