USER101と名乗るチートツール開発者は7月13日、『Call of Duty』シリーズなどで知られるパブリッシャーActivisionからの要求を受けて、ツールの開発を終了すると発表した。そのチートツールは、PCからコンソールまで、あらゆるプラットフォームでのチートを可能にするとうたい注目を集めていた。
正式名称がなく仮に「CVCheat」と呼ばれていた問題のチートツールは、ゲームファイルやメモリの改ざんといった一般的な手法とは異なり、外部デバイスと画像分析技術を活用してチートを実現することが特徴だ。海外メディアArs Technicaが、開発者USER101氏への取材をもとに解説している。
*チートツールのPV(この投稿者はチートツール開発者ではない)
CVCheatの手法はというと、まずキャプチャデバイスを用いてプレイ中のゲームの映像をPCに取り込み(PCゲームなら別のPCを使用)、画像分析技術Computer Visionをもとにしたアルゴリズムにて、その映像をリアルタイムに分析する。そのアルゴリズムは、映像内の人間の形(あるいは頭部などの部位)を検出できるよう学習させており、敵キャラクターの存在を検出可能とのこと。
そしてプレイ中にいざ敵を検出すると、チートツールから操作情報がコンバーター(変換器)に送信される。コンバーターとは、主にコンソールにてマウス&キーボードを使用可能にする外部デバイスのことで、さまざまな製品が発売されている。すなわち、たとえばFPSゲームならば、検出した敵に自動的に照準を合わせて射撃するという仕組みだ。
このほか、映像内の文字分析から使用中の銃の種類を認識し、射撃時に銃に合わせて自動的にエイミングを動かすかたちで、アンチリコイルも実現していたという。こうした仕組みのため、PCゲームだけでなくコンソールゲームにおいても利用可能だと宣伝していた。
開発者のUSER101氏はArs Technicaの取材に対し、CVCheatはゲームの改ざんをおこなうことはないため、アンチチートシステムは検知できないだろうと自信を語る。ただ、今年2月にチート行為によってBAN処分された『VALORANT』のプロプレイヤーNisay選手は、何らかの外部デバイスによる操作アシストを得ていたとされる(本人は否定)。Riot Gamesのアンチチートシステムが検知し、人の手で再チェックして処分したとのこと。CVCheatにおいても、メーカーは対応不可能というわけではないかもしれない。
もっとも、CVCheatはチーターの手に渡る前に開発が中止された。USER101氏は、Activisionから連絡を受けたことを認め、CVCheatの開発と予定していた提供を中止すると宣言。もともと、違反行為に使用することを目的にしていたわけではなく、手足の不自由なゲーマーの補助になり得る技術でもあったが、ネガティブな影響を引き起こす可能性があると判断したと釈明している。
USER101氏の真意や、CVCheatの実際の性能については不明だが、Activisionとしては見過ごすことはできないと判断し、早めに手を打ったのだろう。YouTube上のCVCheatのPVも、同社が著作権侵害であると通報し削除させている。『Call of Duty: Warzone』などでチーターとのいたちごっこを続ける同社としては、さらに対策へのリソースを取られることを未然に防げて安堵しているところかもしれない。もっとも、似た案のツールが新たに生まれる可能性もあり、不正ツールの蔓延については引き続き予断を許さないだろう。