『Apex Legends』ハッキング騒動、スタジオ・コミュニティ双方に傷をもたらす。休日を返上した開発者が嘆き
今週7月4日から7月5日にかけて、『Apex Legends』界隈を騒がせたハッキング被害(関連記事)。7月5日11時ごろまでに事態は収束したものの、その背後には開発スタッフの並ならぬ辛苦があったようだ。一部開発者が明かしている。
先週日曜より、『Apex Legends』のゲーム内のプレイリスト表示などに不審なメッセージが表示されるとの報告が多発。「SAVETITANFALL.COM」というURLと、「TF1 is being attacked so is Apex」というメッセージが表示され、国内外にて目撃例が伝えられた。なかにはゲームモード選択画面にも同じ内容が現れ、ゲームモードが選択できずプレイを続けられない状態になるケースも発生。『Apex Legends』サーバー全体がハッキング被害を受けているとされた。昨今、PC版『Titanfall』にてハッキング被害が問題視されていたことから、『Apex Legends』でのハッキング被害は『Titanfall』の現状に不満を抱く過激ファンの犯行であると目されていた。
事件が起こったのは7月4日から5日にかけてのこと。この日、『Apex Legends』開発スタッフのなかには休暇をとっていたメンバーも少なくなかったと思われる。というのも7月4日はアメリカ合衆国における独立記念日。クリスマスや感謝祭と並ぶホリデーとあって、開発チームは振替休日含めた連休を過ごそうとしていた矢先だったと見られる。
Respawn Entertainmentにてコミュニティ&コミュニケーションディレクターを務めるRyan K. Rigney氏もそうしたメンバーの一人だったようだ。同氏は、海外メディアの一つが『Apex Legends』ハッキング行為を批判した記事をシェア。DDoS攻撃など未解決の問題が残っている時点で、開発者が愚痴をこぼすことは憚られるとしつつ、「この記事は正しい」としてハッキング事件の裏側を語っている。 Rigney氏は事件について知ったとき、プライベートで生まれたばかりの甥を抱いていたところだったという。残念ながら同氏は、家族と過ごす貴重な1日を犠牲にし、ことの対応に当たらなくてはならなかったようだ。
またRigney氏は、ハッカーが『Titanfall』におけるハッキング問題啓発のために犯行に及んだ点についても触れている。同氏は先週、および5月に発信されたRespawn Entertainmentのツイートを引用。『Titanfall』内のDDoS攻撃問題についてはすでにスタジオで関知していると指摘した。続けて、問題は認識の有無ではなく、DDoS攻撃そのものが非常に解決の難しい課題であると述べている。チームはたえずDDoS攻撃やチート対策のために闘っており、DDoS攻撃問題についても必ず解決すると強調した。そしてこの約束はあくまでハッカーの犯行のために果たされるものではなく、犯人らのおこないは無意味なものであったと厳しく語っている。
『Apex Legends』ハッキングの事案は、ファンや開発者に大きな動揺を与えていたようだ。影響は思わぬところにも波及した。現地時間で7月4日、Respawn EntertainmentのプリンシパルアニメーターであるMoy Parra氏が独立記念日を祝福するツイートを投稿すると、一部のユーザーから『Titanfall』や『Apex Legends』のハッキング状況について糾弾するリプライが殺到。その後、Parra氏はしばらくTwitterを離れる旨をツイートしている。海外掲示板Redditなどのコミュニティ内では、サーバー問題に関わりのないアニメーション職であるHarra氏にまで詰め寄る一部ユーザーの過剰反応をいさめる声も。各自に自制が求められている。本件については、リードデザイナーであるChin Xiang Chong氏からも遺憾の意が寄せられた。
開発チームやユーザーにとって大きな影響を与えたハッキング騒動。『Apex Legends』および『Titanfall』ファン、いずれにとっても損失となる痛ましい事件だったことには違いない。『Titanfall』における問題は容易に解決しがたいが、スタジオが改善に向けて動いている。双方のゲームが安定して楽しめる環境になることを、落ち着いて待ちたいところだ。