『ファイナルファンタジーVII リメイク』開発中には、ポールダンスの演出が存在したがレーティングの関係で削除された。蜜蜂の館を表現するための工夫

 

ファイナルファンタジーVII リメイク』共同ディレクター(シナリオデザイン)を務めた鳥山求氏は、スクウェア・エニックスのアメリカ公式サイトのインタビューを介して、同作の蜜蜂の館についてのシーンに込めたこだわりを語った。その中では、かつてポールダンスのシーンが存在していたが、カットされたことも語られている。

蜜蜂の館は、ミッドガルのウォール・マーケットに存在するお店。いわゆる風俗店である。主人公のクラウドたちは、ウォール・マーケットのドン・コルネオの館にヒロインであるティファがいると伝えられるが、そこはドン・コルネオの“花嫁候補”しか入れない場所だった。クラウドは苦肉の策として、女装をすることで潜入を試みる。その女装ができる場所が、蜜蜂の館なのだ。


やたら性の匂いを感じさせる場所であることや、クールぶっているクラウドがメイク をさせられること。鍵穴で覗き見ができたり、雄々しい男たちに囲まれたり、選択肢によって多彩なイベントが起こるなど、『ファイナルファンタジーVII』本編の中では特に異彩を放つ場所でもある。これらのイベントについて、記憶に残っているプレイヤーも多いのではないだろうか。

前述したように、蜜蜂の館の一連のイベントはかなり性に関する示唆が多い。オリジナル版では、過激すぎてカットされた要素もあるとしてファンの間では有名。『ファイナルファンタジーVII リメイク』は、北米レーティング機関ESRBでのレーティングはT(13歳以上)。事実上の大人向けであるMレーティングを逃れている。さらに、昨今では性描写についてオリジナル版発売当時よりも配慮が求められる傾向がある。オリジナル版でも蜜蜂の館のパートを担当した鳥山氏が、どのような工夫を込めたのかを語っている。


蜜蜂の館やクラウドの女装は、ファンからの期待が高かった要素のひとつ。一方で、性については慎重に描写する必要もある。そこで開発チームはミュージカル的なダンスの演出を取り入れたという。ミュージカルは原作にはまったくない要素だ。専用のムービーが流れ、リズムゲーム要素も盛り込まれている。なんとも豪華な場面である。クラウドはまず、いつもどおりの姿で華麗に踊り、最終的に美しくメイクされ女装する。このシーンやダンスにて流れる歌の歌詞には、女装についてポジティブでサポート的であることを示すメッセージが込められているそうだ。たしかに、蜜蜂の館は女装というセンシティブなテーマを扱いながら、女装を美しく表現しており、かつ爽やかも感じられる青春ドラマのような一幕に仕上がっている。


しかしながら、蜜蜂の館のシーンの中でもカットされた演出も存在するという。それがポールダンスだ。ダンスシーンについては、プロのダンサーを起用したモーションキャプチャーを実施。最初はポールダンスのシーンも用意されており、かなり準備して撮影していたそうだ。しかし最終的にカットされたという。レーティングへの影響を踏まえて判断したそうだ。ポールダンスはダンスおよび体操の一種。ショーダンスとして親しまれており、ナイトクラブなどで実施されてきた歴史がある。セクシャルな表現として認知されてきたこともあってか、レーティングの対象に引っかかりやすいと言われている。

ポールダンスが登場するタイトルとしては、『グランド・セフト・オートV』『ベヨネッタ2』『Mass Effect 2』『ペルソナ4』はいずれもMレーティング。いずれの作品も、ポールダンス以外にも過激な表現を含んでおり、ポールダンスだけが原因とは言えない。現に『ペルソナ』シリーズは『ペルソナ3』や『ペルソナ5』もMレーティング。とはいえ、該当タイトルのESRBページを見ればいずれの作品でも、性的な表現のひとつとしてポールダンスについて言及されている。レーティングを決める上でマークされているコンテンツであることは確かだろう。鳥山氏のいうレーティングがESRBを指すかは不明であるが、レーティングを変えかねない表現なのだろう。


蜜蜂の館のシーンは、『ファイナルファンタジーVII リメイク』が発売されるかなり前の段階から、鳥山氏が期待していてほしいとユーザーに呼びかけていた要素である。リメイク版ならでは豪華シーンのひとつであるが、そこにはジェンダー表現面での調整や、レーティング上のカットなど、さまざまな努力と事情 があったようだ。

『ファイナルファンタジーVII リメイク』はPS4向けに発売中。PS5向けに発売されている『ファイナルファンタジー VII リメイク インターグレード』では、強化されたビジュアルで、蜜蜂の館のシーンを楽しむことが可能だ。