PS5ホラー『Abandoned』、『サイレントヒル』最新作と勘違いされ開発元が謝罪。関連性をにおわすツイートと捉えられたため
とある小規模インディースタジオが、Twitterにて釈明を迫られるトラブルがあったようだ。トラブルの背景には、同スタジオの“におわせ”ツイートと、そのツイートに対する『サイレントヒル』にまつわるユーザーの反響があった。
インディーデベロッパーBlue Box Game Studiosは新興ながら、今年4月から注目を集めているスタジオだ。同スタジオは、PlayStation 5向けホラーゲーム『Abandoned』を発表している(関連記事)。同作は一人称視点で繰り広げられるサバイバルシューターで、細部までつくりこむリアル志向の作品だという。主人公の状態が、ゲームプレイに影響を与えることがあり、たとえば走った直後で息が荒いときや、恐怖を感じて震えているときなどは、射撃の精度が落ちるという。またDualSenseコントローラーを利用した銃の重みや3Dオーディオによる臨場感ある演出、4K解像度60fpsで表現されるリアルなグラフィックなど、PlayStation 5のポテンシャルを活かそうとする試みが期待を集めている。一方、ストーリーやゲームシステムについてはいまだ謎に包まれた部分も多く、追加情報の公開が待たれる作品でもある。
そんななか、6月16日Blue Box Game Studiosが発したツイートが注目を集めた。ツイート内容は「Abandoned=(最初の文字はS、最後の文字はL)。発表間近」。詳細は不明ながら、『Abandoned』に関する情報がもうすぐ明らかになること、そしてその情報が「Sから始まりLで終わる単語」に関係していることが示唆されたのだ。この謎めいた情報に対し、ネット上の住民はスタジオの思惑どおり浮足立つこととなった。ところが一部のユーザーは、スタジオの思いもよらない方向に熱を上げることとなったようだ。「Sから始まりLで終わる単語」が、すなわち『サイレントヒル(SILENT HILL)』を指しているのではないかとの憶測が広まってしまったのだ。
なぜ『Abandoned』と『サイレントヒル』がだしぬけに結びつけられたのか。その背後には、デベロッパーのBlue Box Game Studiosのはっきりしない素性がある。というのも同スタジオの公式サイトは、現在ホワイトアウトしておりほとんど何の情報も見られない状態。あまりにもつかみどころのない様子から、『Abandoned』についてはタイトル発表時からある疑惑がもち上がっていた。それは、同作が小島秀夫監督の最新作だとする説だ。Blue Box Game Studiosというスタジオ自体が、小島監督の関与を隠すカバー企業ではないかという考えである。
小島監督については、一部より「現在『サイレントヒル』最新作を制作しているらしい」との噂がささやかれている。噂の背後にあるのは、まだコナミに所属していたころの小島監督が手がけた『P.T.』の存在があるだろう。『P.T.』は『サイレントヒル』シリーズの新作『Silent Hills』のプレイアブルティザーとして、2014年に無料配信されたホラーゲーム。たしかな恐怖を与える演出手法や、巧妙な謎解き要素などが高く評価された。しかし『Silent Hills』の開発中止とともに、完成版は日の目を見ることがなくなった。そして根強い『P.T.』ファンの間では、「小島監督は『サイレントヒル』新作の制作に携わっているのではないか」という噂が流れているのだ。
小島監督が『サイレントヒル』作品に関与しているとの噂と、出自が謎めいた『Abandoned』の存在。その両者が、Blue Box Game Studiosの示唆的なツイートで結びつけられてしまった。「Sから始まりLで終わる単語」、すなわち“Silent Hill”ではないか、というわけである。もっともBlue Box Game Studiosは4月の時点で、正式に小島監督とスタジオの関与を否定する声明を出している。それでもファンの期待は冷めやらず、「Blue Box Game StudiosのTwitterアカウントがGeoff Keighley氏にフォローされているのは、小島監督と親交があるためではないか」「PlayStationブログで『Abandoned』を紹介しているHasan Kahramanなる人物は、“Hideo Kojima”のイニシャルをとった架空の名前ではないか」「Kahraman氏のLinkedInで確認できる“2014年からBlue Box Game Studiosに所属”という記載は、『P.T.』が2014年にリリースされたことを示唆しているのではないか」……といった推測が芋づる式に生ずることとなった(ResetEra)。
騒ぎを察知したBlue Box Game Studiosは、6月16日のうちに新たなツイートを投稿。同スタジオがコナミと一切関わりがないこと、『サイレントヒル』がコナミの保有するIPであること、スタジオが小島監督とも関わりがないことを改めて明言。くわえて、先述の示唆的なツイートにより『サイレントヒル』をほのめかす意図がなかったことを明らかにし、混乱を招いたとしてユーザーに対し謝罪した。
『サイレントヒル』についてはこれまでにも、コナミの意味深なツイートによりファンが沸き立ってしまうなどの混乱が見られてきた(関連記事)。今回の『Abandoned』騒動の一件も、シリーズに期待を寄せるファンの愛情が招いた悲しい事故といえるだろう。『Abandoned』自体については、すでに「一流の声優陣」によるボイス収録が済んでいるという。本作がどのような作品になるかについては、落ち着いて続報を待ちたいところだ。