カプコンは6月15日、「Capcom E3 2021 Showcase」を放送。その中で『モンスターハンターライズ』開発者が、Redditのコミュニティから寄せられた質問に回答した。カプコンは5月中旬にRedditのr/MonsterHunterにてAMA(Ask Me Anything、何でも聞いていいよ)を実施していた。その質問に対する回答がビデオ形式にて公開されたかたち。質問に回答したのはプロデューサーの辻本良三氏と、ディレクターの一瀬泰範氏だ。
辻本良三氏はビデオ出演でそれらの質問に回答。一瀬泰範氏は文章にて回答し、カプコンUSAのシニアコミュニティマネージャーであるYuri Araujo氏が、一瀬氏の回答を読み上げる形式となっている。両氏のお気に入りのモンスターやプレイスタイル、開発時のエピソード、ボツになったアイデアなどについて語る内容となっている。かいつまんで見ていこう。下記動画の6時間11分40秒あたりから、該当コーナーを視聴可能だ。
まず、『モンスターハンターライズ』から登場したモンスターのなかで、どれがお気に入りかとの質問に答えている。一瀬氏は「新しく追加されたモンスターはすべて気に入っています。もっとも気に入っているモンスターをあげるなら、マガイマガドでしょう。マガイマガドについては長い間取り組んできて、完成させるのに長い時間がかかりました。ですから、このモンスターには強い思い入れがあります」と記した。さらに「当初は、トラのような姿のモンスターを作ろうと思っていました。しかしながら、メインプランナーが長い槍で武装した武者を思いつき、現在のマガイマガドのプロトタイプが生まれたのです」とのこと。
辻本氏は、アケノシルムがお気に入りであると回答。辻本氏は雨男で、行く先々で雨に見舞われてしまうという。そのため同氏にとって傘は重要なアイテム。雨が降った時にはアケノシルムに傘代わりになってほしいとの、チャーミングなコメントを寄せた。
マガイマガドの鬼火はどんな臭いがするのか、というモンスターの生態に関する質問も寄せられた。一瀬氏によると「マガイマガドは新鮮な肉だけでなく、腐肉も食べます。マガイマガドは肉を体内で分解して特別なガスを生成しますから、あまり良い臭いはしないでしょうね」という。マガイマガドのクールな鬼火は、意外とくさいのかもしれない。
『モンスターハンターライズ』から登場したモンスターは、妖怪がモチーフとなっている。それにちなんでか、子供の頃に怖かった妖怪が知りたいとの質問も寄せられた。辻本氏も一瀬氏も河童が怖かったという。一瀬氏は子供の頃、テレビで河童が人を川に引きずり込むシーンを見て、川で遊ぶ危険さを学んだそう。川に遊びに行くこともあった辻本氏にとっても、河童は身近に感じられる妖怪であったようだ。
もっとも使用している武器とお気に入りの武器についての質問もあった。一瀬氏は、開発中は狩猟笛とヘビィボウガンであったと回答。狩猟笛は、過去作で一瀬氏が使用していた武器だという。ヘビィボウガンについては遠距離攻撃をテストする際に使ったようだ。辻本氏はやはりシリーズをとおしてハンマーを愛用しており、本作でもハンマー使い。ギルドカードの武器使用率も、ハンマーのみであるようだ。
好きな翔蟲のアクションは何かとの質問に対しては、辻本氏は鉄蟲回転攻撃がお気に入りであると答える。辻本氏の愛用武器がハンマーであることはファンの間では有名。鉄蟲回転攻撃はジャンプして回転しながらハンマーを振り回す技だ。辻本氏いわく、鉄蟲回転攻撃は非常に派手で、さらに多段ヒットする気持ちよさがあるという。また距離を大きく詰めることができるので、ハンマーのなかでは中心的に使っている技であるとのこと。
一瀬氏は、震打がお気に入りであるという。震打は狩猟笛の鉄蟲糸技で、クナイを敵に刺してさらに、音撃の衝撃波で攻撃する。一瀬氏は「最初のダメージが気持ちよく、追加のダメージはさらに爽快です。1回の攻撃で2回楽しめるわけです」と述べる。
装備スキルのお気に入りは何かとの質問もあった。一瀬氏はビシュテンゴ装備の見た目を気に入っているとのこと。装備のデザインは日本の僧侶や山伏の衣装から影響を受けているようだ。お気に入りのスキルは笛吹き名人。狩猟笛と相性がいいスキルだ。
辻本氏はラージャンの装備が、見た目としても好きであるとのこと。『モンスターハンター』シリーズでラージャンの装備を作成できる場合、少なくとも1度は作るようにしているようだ。スキルについては、広域化をよく使用するという。自分を回復すると周りも回復できるため、少しでも周囲の手助けになればと使用しているそうだ。
『モンスターハンターライズ』の開発中に起きた面白いエピソードを教えてほしいという質問について、一瀬氏が回答している。「ある日、ゲームをチェックしていると、ヨモギのお手伝いのアイルーが地面に横たわっていました。チームに何が起きているのか聞くと、アイルーがヨモギの傷んでしまった団子を食べたときの状況をテストしていたようでした。良いアイデアですが、残念ながら製品版には反映できませんでした。ヨモギが重要な会話をしている間、アイルーが倒れていることになってしまうからです。意味が分からなくなってしまうので、そのアイデアは却下しました」とコメントした。
うさ団子のゲームメカニクスはどのように思い付いたのかという質問も飛び出した。うさ団子は食べるとハンターの体力やスタミナなどを強化する。さらに注文するときの可愛らしい楽曲も含め、本作のプレイヤーに愛されている要素だ。一瀬氏は「見ただけで『モンスターハンターライズ』だと分かるような、印象的な食事シーンがほしいと思っていました。そこで過去作の肉や魚の料理とは違うものにすると決めたのです。個人的にスイーツが好きで、ゲームも日本がテーマになっているので、和菓子をモチーフにすることにしました。甘いものが嫌いな人はいませんよね?」と回答している。
今後のアップデートについての要望も寄せられており、チャチャブー(Shakalakas)は『モンスターハンターライズ』に登場するのかとの質問もあった。チャチャブー『モンスターハンター2』から登場した獣人族。不思議なお面を被り、ハンターを攻撃してくる。辻本氏によるとガジャブー(Gajalakas)については現状登場させる予定はないとのこと。今後のタイトルにて世界観が合い、ガジャブーが登場する必要性があれば、可能性はあると述べた。ガジャブーは『モンスターハンター:ワールド』に登場した獣人族だ。辻本氏はガジャブーについて回答しているが、英語字幕はチャチャブー(Shakalakas)と出ている。いずれにせよ、両キャラともに今後の作品で登場するチャンスはあるのかもしれない。
シリーズへ新しい武器種を導入する計画の有無についても質問が寄せられた。辻本氏はまず武器種を追加するなら、既存の14武器種とは違う遊びができなければいけないと語る。もし良いアイデアがあれば導入するかもしれないが、今のところその予定はないようだ。可能性はゼロではないが低そうだ。
最後は開発チームの労働環境についての質問だ。複数のチームが同時に異なるタイトルの開発をしているが、チーム間でのコミュニケーションはどうしているのか、というものだ。現在同シリーズは、『モンスターハンターライズ』や『モンスターハンターストーリーズ2 ~破滅の翼~』、『モンスターハンター ライダーズ』など複数の作品が展開されている。辻本氏はたしかに複数チームが存在していると認めつつ、ゲーム開発は数百人のメンバーが関わることになるとコメント。そこでチーム間のみならず、全体的に情報共有ができる環境で開発を進めているとのことだ。
今回のAMAは、ユーザーがRedditで質問を寄せ、1か月ほどしてから開発者がビデオで回答するかたちであったので、やや特殊な形式。また寄せられた質問に対して回答された質問の数はかなり限られていた。とはいえ採用されなかったRedditの質問も、建設的なものがほとんど。ビデオでの回答も、和やかなスレッドの雰囲気を反映したものであった。開発時の興味深いエピソードや、一瀬氏や辻本氏のハンターとしての素顔をうかがえる内容となっている。
『モンスターハンターライズ』はNintendo Switch向けに販売中。PC版は2022年に配信予定だ。