『マインクラフト』から「4chanへの言及」がこっそり削除。きれいになっていく『マイクラ』
Mojang Studiosは『マインクラフト』最新アップデート1.17のプレリリース版にて、とある文言を削除したようだ。その文言とは、「Woo, /v/!」である。Kotakuなどが報じており、一部で注目を集めているようだ。
『マインクラフト』には、スプラッシュテキストなる文言が存在する。タイトル画面にてロゴを横切るように黄色いメッセージが表示されており、これがスプラッシュテキストである。この部分には、短いながらもさまざまなテキストがランダムに表示される。実装されたことのあるスプラッシュテキストだけでも400種類以上存在。開発スタッフが仕込む、ちょっとしたお遊びになっているわけだ。
スプラッシュテキストは、『マインクラフト』の世界観とはやや切り離されている。何気ない独り言のような言葉から、アップデートに付随したジョーク、当時の社会情勢にまつわるものなど多彩。他のゲームや映画への言及やネットミームなども含まれており、なかには「日本ハロー!」といった日本人向けの呼びかけまで存在。ゲームの雰囲気からするとやや浮いている。ただし、茶目っけたっぷりでちょっと浮いているという意味でも、スプラッシュテキストは長きに渡り愛されてきたのだ。
しかしながら、アップデートによってその文言が削除されるケースもある。今回は「Woo, /v/!」の言葉が削除された。「Woo, /v/!」は、海外掲示板4chanのビデオゲーム板/v/に言及する文言だ。『マインクラフト』では昔から、さまざまな掲示板にてゲーム情報が共有されていた。開発者とユーザーが意見を交わしながら、ゲームが形作られてきたのだ。
2010年7月PC向けに配信されたJava版Alpha v1.0.14にて、海外掲示板に関わるトリビュート文がスプラッシュテキストとして複数追加。「Woo, worldofminecraft!」 「Woo, tigsource!」など、同作の生みの親Notch氏が、当時利用していた掲示板とそのユーザーに対し、普段の感謝を込めて追加したのだろう。4chanの/v/でも『マインクラフト』の情報交換が盛んであり、同タイミングで「Woo, /v/!」というスプラッシュテキストも追加されていたわけだ。
約11年後となる2021年5月末の1.17プレリリースアップデートにて、「Woo, /v/!」が削除された。4chanの/v/は閉鎖されたわけでもなく、サービスが終了したわけでもない。しかしながら、「Woo, /v/!」はひっそりと姿を消したのだ。理由としては、昨今の同掲示板に対して人々が抱いている印象を踏まえ、4chanへの言及が問題視されたという見方が強い。
4chanは、2003年にChristopher Poole氏が立ち上げた掲示板。2ちゃんねるやふたば☆ちゃんねるを参考にして立ち上げられ、英語圏における匿名掲示板として人気を博した。現在は西村博之氏が管理人を務めている。アンダーグラウンド系の掲示板として多くのユーザーを抱える一方、匿名掲示板であることやルールもゆるいことからトラブルも絶えない。政治思想をめぐる過激な論争は絶えず、人種性別に関する紛争の場にもなりやすい。飛び交う言葉や画像も過激である。使い方によっては有益であるものの、多くの企業にとっては関わりを避けたく、個人ユーザーとしても子供に見せたくない掲示板だろう。それゆえに、Mojang Studiosと親会社のマイクロソフトは、4chanに言及するスプラッシュテキストを削除したのだと思われる。「Woo, /v/!」は『マインクラフト』Java版にのみ存在しており、今回ひっそりと姿を消したことになる。
スプラッシュテキストが削除されることはそう珍しいわけではない。ゲーム内の仕様に言及したものは仕様変更時に削除され、停止されたサービスや初期に実装された刺激強めのジョークなどは、のちに消されることもある(Minecraft Wiki)。2019年3月には、原作者であるNotch氏に賛辞を贈るスプラッシュテキストを削除。クレジットに同氏の名前は残しつつも、差別発言などを繰り返す生みの親から距離をとろうとする試みではないかと、注目された(関連記事)。今回の4chanへの言及の削除についても、同様の意図があるのかもしれない。
『マインクラフト』はどんどん進化を続けており、グラフィックも含めて美しくなった。スプラッシュテキストはそんな中でも、初期版のようなアングラな雰囲気を漂わせる項目だ。もともと“地下”のコミュニティに支えられ発展したゲームなだけに、4chanへの言及も当時の名残として違和感がないかもしれない。とはいえ、 さまざまな世代の人々が遊ぶ『マインクラフト』と巨大企業マイクロソフトにとって、4chanとの関わりを断っておきたいのも理解できる。Kotakuはマイクロソフトに、同文言の削除について問い合わせたが、広報はコメントを拒否したという。いずれにせよ、『マインクラフト』がさらに“きれい”になっていることを示す、象徴的な動きだと言えそうだ。
『マインクラフト』では6月9日に大型アップデート「Caves & Cliffs」第1弾が配信予定である。