任天堂が、海賊版ROM配布サイトを訴えた裁判にて勝訴。弁護士なしで挑んだ被告、約2億円の損害賠償金の支払いを命じられる
任天堂の米国法人Nintendo of Americaが、2019年に会員制ROM配布サイトの運営者を提訴していた件について、今年5月26日に任天堂側の勝訴とする略式判決が下されていたことが明らかになった。海外メディアTorrentFreakが報じている。
今回の訴訟は、任天堂がカリフォルニア州中央地区連邦地方裁判所にて、RomUniverseというウェブサイトを運営するMatthew Storman氏を被告として、2019年9月10日に提訴していたもの。RomUniverseは、さまざまなゲームのROMやISOファイル、映画、電子書籍などを配布していたウェブサイトで、特に任天堂ハード向けのゲームが充実していたそうだ。
提訴時点で、RomUniverseでは海賊版のNintendo Switch向けゲームは約30万回、ニンテンドー3DS向けゲームが50万回以上ダウンロードされていたと任天堂は指摘している。同サイトには、ひと月あたり数十万人規模のアクセスがあり、また年額30ドルの有料会員制度も用意。今回の訴訟においては、Storman氏はサイトを通じて、2019年に3万〜3万6000ドル(330万〜394万円)の収益を得ていたことが明らかになっている。
任天堂は訴訟にて、ROM配布による著作権侵害と、RomUniverseのウェブサイトや海賊版ゲームによる商標権侵害を主張。著作権侵害については一件あたり最大15万ドル(約1600万円)を、商標権侵害については一件あたり最大200万ドル(約2億1800万円)の損害賠償金を求めた。さらに、これらの権利侵害行為の差し止めや、任天堂が権利を保有する各種コンテンツの海賊版の破棄、ウェブサイトのドメインのNintendo of Americaへの移管も要求し、RomUniverseの閉鎖を迫った(関連記事)。
これに対し、被告であるRomUniverseの運営者Matthew Storman氏は、サイトの閉鎖を拒否し、任天堂と戦う道を選択。自身やそのほかの人々の権利を守ると主張し、クラウドファンディングサイトGoFundMeを通じて、ファンからの寄付金を募った。訴訟費用にあてるつもりだったのだろう。しかし、まったく寄付金が集まらずクラウドファンディングは中止(関連記事)。その後、RomUniverseのウェブサイトは閉鎖された。
Storman氏は弁護士をつけずに裁判に臨み、RomUniverseを通じた任天堂作品の海賊版の配布と、自身による海賊版ゲームのアップロードを否定。法律違反は犯しておらず、訴えを棄却するよう裁判所に要求した。しかし任天堂側は、Storman氏の直接的な関与を示す証拠を提出したという。そして最終的に、損害賠償金の合計を1500万ドル(約16億4200万円)とし、略式判決を下すよう裁判所に求めた。
判決にて裁判所は、著作権侵害については171万5000ドル、商標権侵害については40万ドルの損害賠償金を認定。合わせて211万5000ドル(約2億3000万円)を任天堂に支払うよう、Matthew Storman氏に命じた。一方、RomUniverseのウェブサイトがすでに閉鎖されていることから、差し止め命令の要求については却下した。
著作権侵害および商標権侵害行為に対しては、任天堂はかねてより強い姿勢で臨んでおり、これまでにもRomUniverseと同様のROM配布サイトなどを閉鎖に追い込み、また損害賠償金を勝ち取っている。多くの場合は運営者は任天堂との和解を選ぶため、今回の裁判には注目が集まったが、結果的に任天堂に証拠を突きつけられ、事実審理を省略して任天堂の勝訴とする判決に至った。なお、被告のStorman氏は判決を受け入れるのか、控訴するのかどうかは現時点では不明である。