マイクロソフトがPCゲーム体験強化に向けた取り組みを発表。Microsoft Storeの収益分配率は、開発者取り分70%から88%に変更へ
マイクロソフトは4月29日、PCゲーミングに向けた今後の取り組みを明らかにした。同社のゲーム部門はここ数年、“プレイヤーファースト”を掲げたアプローチをとっており、これはPCの領域に対しても適用されるものであるとして、投資を続けてきたという。
マイクロソフトはまず、この1年半のあいだには『Age of Empires II: Definitive Edition』や『Age of Empires III: Definitive Edition』『Gears Tactics』『Wasteland 3』『Minecraft Dungeons』『Microsoft Flight Simulator』といったタイトルをリリースし、この多くがローンチ時にはSteamの売り上げトップへと駆け上がったと報告。人気シリーズの続編であれ、新たなジャンルへの挑戦であれ、PCゲーマーがプレイしたいと思う作品を作り続けていくとした。
そして、2021年内に発売予定の『Halo Infinite』については、クロスプレイおよびクロスプログレッションに対応することを明らかにした。すなわち、本作のPC/Xbox Series X|S/Xbox One版のプレイヤーは、プラットフォームの垣根を超えて一緒に対戦・協力プレイをおこなうことができ、またPCでプレイした続きをXboxで楽しむようなプレイスタイルが可能となる。
『Halo Infinite』においては、最高のPCゲーム体験を得られるよう、コミュニティと密接に協力し開発しているとのこと。例として、アスペクト比21:9や32:9のモニタのサポートや、広範なグラフィック設定などを用意することを挙げている。
Windows 10においては、ゲーム向けの標準機能として「Xbox Game Bar(ゲームバー)」が用意されている。マイクロソフトは、プレイヤーごとに異なるゲーム体験を向上させる、ゲームバーのような機能の開発には継続的に取り組んでいるとのこと。さらに、プレイヤーのQoLをより向上させるため、ゲームのインストール機能やダウンロード速度の改善を、今後数か月の間に提供するとした。
これに関連して、マイクロソフトの内部事情に詳しい海外メディアWindows Centralが、同社はWindows 10向けMicrosoft Storeアプリの刷新に取り組んでいると4月20日に報じている。このストアアプリの刷新は、今年の秋の配信が予想されているWindows 10の大型アップデート(コードネーム:Sun Valley)に合わせて実施されると見込まれている。内容としては、新たなUIの導入や、開発者向けのポリシーの変更、そしてゲームのダウンロード・インストールの改善などが挙げられている。あくまで噂レベルの情報ではあるが、ダウンロード・インストール機能の改善について今回マイクロソフトが認めた格好だ。
また同社は今回の発表にて、開発者向けのポリシー変更についても触れている。Microsoft Storeにてゲームをリリースし販売した場合、開発者とマイクロソフトの収益分配はこれまで業界標準ともいえる70:30でおこなわれていたが、今年8月1日からは88:12に変更されるという。開発者の取り分を増やしたかたちであり、新たな分配率はEpic Gamesストアと同じである。マイクロソフトは、この変更により開発者はMicrosoft Storeでより多くのゲームをより多くのプレイヤーに届け、より大きな成功をつかむことができるだろうとしている。
*Microsoft Storeの収益分配率の変更に、Epic GamesのCEO Tim Sweeney氏も反応。
PCゲーム開発者向けには、DirectX 12の最新機能を利用できる「DirectX 12 Agility SDK」や、すでにXbox Series X|Sに導入している「Auto HDR」「DirectStorage」の提供についても改めて案内。Auto HDRでは、非HDR対応タイトルを自動的にHDR化することができ、DirectStorageはロード時間の短縮を実現する技術である。
このほか、サブスクリプションサービスXbox Game Passについても言及。Xboxコンソールにて大きな注目を集める同サービスだが、PC向けにも提供されており、2019年末に配信されたPC版『Halo: The Master Chief Collection』はこれまでに1000万人以上がプレイしているという。マイクロソフトは、今後もさまざまなメーカーのPCゲームを、同サービスに追加していくとしている。
Xbox Game Passは、Xboxハードウェアとファースト・サードパーティタイトルの販売と並び、マイクロソフトのゲーム部門の収益を支える大きな柱のひとつとなっている。現時点ではあまり評判が良いとはいえないMicrosoft Storeアプリの改善や、新作のリリースによってより多くのPCゲーマーを呼び込み、同サブスクリプションサービスの利用をさらに促していきたい考えなのかもしれない。
またPCゲーム開発者に対しては、技術面でのサポートのほか、ストア手数料を引き下げ開発者の取り分を増やす方針を示した。GDC(Game Developers Conference)の最新の調査によると、Steamなどが採用する70:30の収益分配率に満足している開発者は、3000人以上の回答者のうちわずか3%だったという。今回のポリシー変更は開発者にとって魅力的に映るはず。ただ、実際にMicrosoft Storeにてリリースしてもらうためには、上述のストアアプリなどの改善によって十分に多くのユーザーを獲得できるかがカギになりそうだ。
マイクロソフトのXbox Game Studios代表Matt Booty氏は、PCゲーミングの領域ではまだまだすべきことはあるとしつつ、これまでのPCゲーマーや開発者からの反応から、正しい方向に投資をし進んでいると感じているとコメント。そして、今後もコミュニティの声に耳を傾け、プレイヤーがどのようにPCゲームを楽しむのかを尊重し、約束を果たしていくとした。