『大逆転裁判1&2』英語版では、シャーロック・ホームズは“エルロック・ショルメ”として登場する

 

カプコンは7月29日、『大逆転裁判1&2 - 成歩堂龍ノ介の冒險と覺悟』を発売する。対応プラットフォームは、Nintendo Switch/PS4/PC(Steam)。『大逆転裁判』シリーズが海外でリリースされるのは、今回が初。期待度も非常に高い。そんな中、英語版におけるシャーロック・ホームズのキャラ名が注目を集めている。


日本語版『大逆転裁判』では、ホームズとワトソンが登場する。世界で有名な大探偵シャーロック・ホームズとして登場し、その推理力と無秩序さで、物語を引っ掻き回す。トリックスター的存在だ。相棒であるワトソンは、かわいらしい少女のアイリス・ワトソンとして登場。医学博士号持ちの小説家、そしてホームズのパートナーとして、英国で展開される騒乱にちょっとした癒やしをもたらしてくれる。

しかし、英語版では彼らの名前は少し違う。シャーロック・ホームズは「Herlock Sholmes(エルロック・ショルメ、もしくはハーロック・ショームズ)」、アイリス・ワトソンは「Iris Wilson(アイリス・ウィルソン)」。ホームズとワトソンではなく、ショルメとウィルソンになるわけだ。似ているようで、結構違う。なぜホームズではないのだろうか。訴訟対策であると考えられそうだ。


「シャーロック・ホームズ」シリーズといえば、もともとイギリス人小説家アーサー・コナン・ドイルが書き上げたシリーズだ。医学に精通しており、医師として活躍しながらも空き時間にて小説を執筆。紆余曲折を経て売れっ子小説家となった。ドイル氏は1930年に死去。その後はコナン・ドイル財団(Conan Doyle Estate)が「シャーロック・ホームズ」の一部著作権を管理している。

この財団はホームズの描写をやや厳しく取り締まっている。たとえばコナン・ドイル財団は、映画「エノーラ・ホームズの事件簿(Enola Holmes)」のホームズの性格描写をめぐって、Netflixや製作会社を相手に訴訟を起こした。同映画のホームズは温厚で友好的で女性に優しいが、この描写は後期の作品の著作権を侵害しているとコナン・ドイル財団は主張していた。


「シャーロック・ホームズ」の権利については、米国では1922年までの作品はすべてパブリックドメインであり、すでに財団は権利を持たないという判決が下されている(GIGAZINE)。一方で、ドイル氏が1923~1927年に執筆した10作品の権利は財団にあるという(THE RIVER)。コナン・ドイル財団はこれまでにもほかの「シャーロック・ホームズ」映像作品の関係者を相手に訴えを起こしており、取り扱うには注意が必要なトピックであることは否めない。

エルロック・ショルメは、そうした「シャーロック・ホームズ」関連の訴訟対策として用いられる名前である。モーリス・ルブラン著作の「ルパン対ホームズ」にて、ドイル氏への配慮のもとに使用された名前である。お決まりの名前として定着しており、映画「快盗戦隊ルパンレンジャーVS警察戦隊パトレンジャー_en_film」やゲーム・アニメ『Code:Realize』においてもエルロック・ショルメが登場。どちらかといえば、ルパンと対峙するキャラの文脈で使用される名前であるが、一定の知名度があるキャラ名だ。

『大逆転裁判』シリーズをグローバル展開する際には、そうした事情を加味し、名前をエルロック・ショルメへと変更したのだろう。同作内のシャーロック・ホームズは、紳士さと異質さを持ち合わせている。同作が英国で人気を博した場合は、コナン・ドイル財団に目をつけられる可能性は十分にある。妥当な変更だと言えそうだ。なお『大逆転裁判』シリーズには小説家の夏目漱石が登場。なかなかに悲惨な目にあわされるが、死後70年が経過しパブリックドメイン化していることで、事なきを得ている。そのほか、開発側が夏目漱石の子孫に許可どりをするなど、根回しもされていたようだ(ファミ通.com)。
【UPDATE 2021/4/26 12:50】
夏目漱石の許諾について追記


『大逆転裁判』シリーズの英語展開においては、舞台となる日本と英国の両方のエッセンスを意識した声優キャスティングがなされている(関連記事)。原作の魅力を引き出すキャスティングだけでなく、リスクを考慮したキャラ名変更なども実施している本作。英語版をプレイしてみて、日本語版との違いを感じてみるのも面白そうだ。

大逆転裁判1&2 - 成歩堂龍ノ介の冒險と覺悟』は、7月29日に発売予定だ。