『Apex Ledends』オリンパスの「登れない柵」について開発者が説明。どんなに手を尽くしても落下死し続ける、愛すべきプレイヤーたち

『Apex Ledends』の開発者より、マップ設計にあたっての苦労が語られているようだ。『Apex Ledends』マップのひとつ、オリンパスの地形についての秘話が明かされた。

Apex Ledends』の開発者より、マップ設計にあたっての苦労が語られているようだ。きっかけとなったのは、海外掲示板Redditに投稿された映像だった。動画では、投稿者一行がオリンパスを探索中。その最中、オクタンのジャンプパッドを使って極端なショートカットを敢行しようとしている。ガーデンからアンダーパスに向かってジャンプし、その間にある大きな穴を飛びこえようというのだ。当然、失敗すれば眼下の雲海に真っ逆さまである。先行した2人のプレイヤーは首尾よく対岸に滑りこんだものの、投稿者は足場を踏みはずし下へずり落ちてしまう。「助けて!」と叫びながら壁にしがみつく投稿者。あわや落下死かと思われたが、なぜかこのとき「無限壁のぼり」が発動し、からくも危機を脱している。 
 

 
笑いに包まれる危機一髪映像に対し、スレッドの反応も大わらわ。このときトピックはオリンパスのさまざまな「地形」に及んでおり、ユーザーのひとりがある不満を口にしている。それはオリンパスに存在する「登れない柵」の存在だ。通常、レジェンドは壁に向かって走ることで、ある程度の段差であれば乗りこえることが可能。しかしオリンパスには、明らかに乗りこえられる高さにもかかわらず登ることのできない柵が存在しているのだ(上掲の動画では、ジャンプパッドを使用することで無理やり柵を飛びこえている)。 
 

 
この不満が語られると、Respawn Entertainmentの開発者から回答が寄せられてきた。コメントを寄せたのは、シニアレベルデザイナーを務めるStryderPilotことDave Osei氏。Osei氏によれば、そもそもオリンパスというマップの開発は落下死し続けるプレイヤーとの戦いだったようだ。いかに進入不可の区域をプレイヤーにわかりやすく示し、死の危険が近づいていると気づかせるか、ということにチームは頭を悩ませていたという。そして「柵を設置する」というアイデアは、当然ながら最初から試されていた。そしてこのときの柵は通常の壁と同様、登ることが可能なオブジェクトだったようだ。ところが柵を設置してみると、驚きの光景が広がっていた。プレイヤーたちは、わざわざ柵を登っては真っ逆さまに落下していくではないか。 

ここでOsei氏らはプレイヤーの習性、もとい傾向を学習した。すなわち、安全なエリアに隣接した柵があり、しかも柵が「登ることができる」オブジェクトだった場合、プレイヤーは半自動的に「柵の向こう側も通行可能なエリアに違いない」と認識してしまうようなのである。テスト期間中しばらく柵を設置しておいたものの、落下死被害者の会から苦情が絶えることはなかったという。 

この問題に対しては、さまざまなアプローチがとられたようだ。たとえばワールズエッジにおける、「マグマ落下」のシステムを応用すること。同ステージでは溶岩に落ちた際も即死とはならず、キャラクターがホバリングすることでゆっくり上昇し戦線に復帰できる。オリンパスの穴に落ちた際も、同様にジェットホバーで戻れるようにしてはどうか、という案だ。 
 

 
しかしこのアイデアは程なくボツとなった。というのも穴の中でホバーが可能となると、それは実質プレイヤーに新たな機動力を与えてしまうことになるからだ。穴に落ちても即死しないなら、あえて落っこちて浮遊し、そのまま別のスポットでひょっこり顔を出して奇襲をかけることも可能。オリンパスは、すでにトライデントやフェーズランナーといった機動ツールが豊富な上、そこらじゅう穴ぼこだらけだ。相手に気づかれず攻撃をしかけるチャンスを無闇に作ってしまう設計は、「相手の行動の予見性」をコアとする『Apex Legends』の開発ポリシーと反する。ゆえにホバリング案は不採用となった。 

すると、やはり重要なのは「穴に落ちた後」ではなく「そもそも穴に落とさない」こととなる。「登らないで」のカンバンをつけてしまうという案もあった。そして「近づいたときだけ見える透明なバリア」を設置する案もあった。数か月間、行ったり来たりの議論を重ねた末にたどり着いた妥協案が、「見えるけど登れない柵」だったという。シンプルな柵であれば、別段注意を向けなければ意識に入ってくることはない。代わりに、いざ穴の方向へ直進しようとすれば、はじめてプレイヤーの視界に入ってくる。「必要な時だけ見えるバリア」を、もっとも簡潔なかたちで実現した障害物といえるだろう。 
 

 
開発者がさまざまなトライアンドエラーを経て設計したオリンパス。ちなみに冒頭動画の「無限壁のぼり」が生じた原因については、「落下死を防ぐための出っぱりがあって無限に壁を登れる(ように見える)のではないか」「急にレヴナントが乗り移ったのではないか」などの推測が語られている。いずれにせよ、開発チームの細やかな設計の苦労がにじみ出た一幕といえるだろう。 

夢の都市オリンパスは、近々装いを新たにするのではないかとの噂が立っている。プレイヤー数1億人突破を告げる記念トレイラーにて、43秒ごろに一瞬だけ、様変わりしたオリンパスの様子が映し出されているのだ。果たして、これはシーズン9におけるマップ改変の予告なのだろうか。そしてどれほど開発者が手を尽くしても、プレイヤーたちは落下死し続けるのだろうか。その答えはプサマテの空だけが知っている。 
 

https://twitter.com/PlayApex/status/1382378457808699396
Yuki Kurosawa
Yuki Kurosawa

生存力の低いのらくら雰囲気系ゲーマーです。熾烈なスコアアタックや撃ち合いを競う作品でも、そのキャラが今朝なに食ってきたかが気になります。

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