お金稼ぎ2Dオープンワールド『Forager』マルチプレイモード開発中止、その発表に内部関係者が怒る。ヒットゲームが陥った落とし穴

HopFrogが手がけ2019年にPC/コンソール向けに配信された『Forager』に関して、開発チーム内で何やら内紛が勃発しているようだ。マルチプレイモード開発中止に際したものだという。

アルゼンチンのインディースタジオHopFrogが手がけ2019年にPC/コンソール向けに配信された『Forager』に関して、開発チーム内で何やら内紛が勃発しているようだ。海外メディアNintendo Lifeが報じている。

『Forager』は、『Stardew Valley』や『Terraria』『ゼルダの伝説』シリーズから影響を受けて開発された2Dオープンワールドゲーム。海に浮かぶ島を舞台に、狩りや採掘、農業、釣りなどにより資源集めてはクラフトをおこない、お金を貯めて周囲の島を購入し行動範囲を広げていく。幅広いプレイスタイルに対応し、またキュートなビジュアルが特徴の作品だ。

*任天堂のIndie Worldでの紹介映像


本作においては、最大4人で楽しめるマルチプレイモードの追加が計画され、今年2月にはベータテストが開始。しかし開発元HopFrogは4月6日、マルチプレイモードの開発を中止し、マルチプレイ目的に本作を購入したユーザーには返金すると発表した。開発中止の理由としては、バグの多さなどベータ版のクオリティの低さなどが挙げられている。短期間での改善が困難な見込みであることから、これ以上ファンを待たせたり中途半端な状態でリリースするよりも、中止を選択したとのこと。

問題となったのは、この発表での当初の記述だ。『Forager』を手がけたHopFrogはMariano Cavallero氏の個人スタジオであり、本作についてはしばしば同氏の個人開発であると紹介されることもあった。しかし実際には、数名のプログラマーやアーティストが携わっている。マルチプレイモードの開発中止に関してCavallero氏は、開発を任せたプログラマーに責任があるかのような説明をしており、これをきっかけに関係者が声を上げることとなる。


『Nuclear Throne』や『Rivals of Aether』などの開発に携わったプログラマーのVadim氏は、2019年から2020年にかけて『Forager』に参加。今回のHopFrogによる発表を受けてコメントしている。まず、クオリティの低さについては、開発初期におこなわれた判断が今になって問題化したのではとし、本来であれば発売の前後にコードを書き直すなどメンテナンスをしておくべきだったと指摘。また、次から次へと問題が発生しているにもかかわらず、同程度の規模の他作品と比べてプログラマーが少なすぎたとも述べている。

HopFrogは、マルチプレイモード開発にてゲームバランスが崩壊し、キャラクターなどのアニメーションの質も悪いとしていた。ただVadim氏は、本作のゲームデザインはMariano Cavallero氏が指揮していたとした上で、ゲームバランスについては誰の責任なのかは分からないと皮肉。また、アニメーションの質を保ちたかったなら、アーティストのGaziter氏との関係を絶つべきではなかっただろうとコメントしている。


Gaziter氏は、『Forager』の開発初期からアーティストとして参加。発売時に収録された、ほぼすべてのアートを手がけたという。そして発売後も引き続き本作に携わるよう求められたが、売り上げが好調であるにもかかわらず、最低賃金をわずかに上回る程度の報酬を提示されたため辞退したそうだ。なぜそのような低い報酬なのかCavallero氏に尋ねると、「君はスタジオの設立者ではないから」「ゲームの成功は君の給料とは関係ないだろう」と返されたとのこと。なお前出のVadim氏も、給料の支払い遅延などのトラブルを経験したのちにプロジェクトを離れたという。

Vadim氏は、今回の発表に対する反論を含む詳細な経緯を書き記している。そして、開発元HopFrogはマルチプレイモードの開発中止をSteamのストアページにて案内していなかったため、その記事を掲示板に投稿したところ、HopFrogによりBANされたそうだ。同様のBANは本作のDiscordサーバーでも実施されている模様。またモデレーターのひとりは、自身がトランスジェンダーであることをカミングアウトしただけで、“精神的な問題”を理由に締め出されたという。


このように関係者が声をあげたことを受けてか、HopFrogは発表文を修正。スタッフの責任について言及した部分を削除し、マルチプレイモードの開発中止の責任は自身(Mariano Cavallero氏)にあると述べた。感情的になって暴言を吐いてしまったが、スタッフらの努力には感謝しているとのこと。

またCavallero氏は、自身はリーダーやマネジャー向きではなく、小さな作品を作ることを好む開発者であるともコメント。チームを上手くマネジメントできなかったことについても自身の責任であるとした。関係者の証言により明らかになった、同氏の横暴にも見える言動についても、そうした背景がありそうだ。

なお『Forager』の今後については、マルチプレイモードは開発中止となったが、別のコンテンツを手がける可能性はあるとのこと。一方で、Steamの掲示板では、クラッシュにより本作が起動しないとの報告が多数寄せられている。こちらについて現時点では開発元からの言及はないが、早急な対応が求めらる。

Taijiro Yamanaka
Taijiro Yamanaka

国内外のゲームニュースを好物としています。購入するゲームとプレイできる時間のバランス感覚が悪く、積みゲーを崩しつつさらに積んでいく日々。

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