『スーパーマリオブラザーズ』最速クリアの世界記録が更新される。“ほぼTAS”の「4分54秒台」が人々の度肝を抜く

『スーパーマリオブラザーズ』のスピードランにおけるAny%の世界記録がアメリカのNiftski氏によって更新された。長らく人力での到達が不可能であるとされてきた「4分55秒」を切る大記録となった。

『スーパーマリオブラザーズ』のスピードランにおけるAny%の世界記録がアメリカのNiftski氏によって更新された。記録は4分 54秒948で、長らく人力での到達が不可能であるとされてきた「4分55秒」を切る大記録となった。


スピードランとは、日本ではRTA(リアルタイムアタック)として認知度の高い、ゲーム内の最速クリアなどを競い合う競技だ。登録されているゲームや各レギュレーション、各競技での世界記録などの多くはSpeedrun.comで確認が可能だ。また、Any%は、クリア率など細かな条件を問わない最速クリアを指すレギュレーションとなる。

『スーパーマリオブラザーズ』のAny%カテゴリのチャートは既に最適化がされており、2018年にKosmicd12氏が4分55秒913を記録してから、多くの走者によって新たな世界記録を含めた4分55秒台が記録され続けてきた。2か月前に4分55秒230が世界記録として登録された時点で、上位12の記録が既に4分55秒台に集中している。


2018年に初の4分55秒台が記録されてから、Speedrun.comのフォーラムでは「人類は4分54秒台を記録することができるのか」という議論がなされていた。「現時点でチャート化されている数々のショートカット技やグリッチを完璧に成功させ、さらにフレーム単位でのショートカットが成功すれば“理論上は”可能」というあまりにも無茶な結論に至っており、TAS(ツールアシステッドスピードラン)による理論値が4分54秒26であることを踏まえると、人力では4分55秒を切ることはほぼ不可能であるとされてきた。


前世界記録との違いは一体何だったのだろうか。『スーパーマリオブラザーズ』には「21フレームルール」という概念が存在しているため、最終面となる8-4以外では、たとえ数フレームの短縮に成功したとしても、フレームルールで固定されている暗転時間に吸収されてしまい結果として次のステージの開始は同時になる。つまり、世界記録を更新するには「8-4」をミスなく攻略するか、道中で21フレーム以上の短縮を図るかの二択となっているのが現状だ。

Niftski氏が選択したチャートは、道中で21フレーム以上短縮する方法だった。8-1以前までのチャートは道中でスターを出し、ゴールポールの最上段をつかむというものだ。スターを出した時に限って、通常のゴールに比べて21フレームの短縮が可能になる。Niftski氏は8-1のゴールの際に「旗らけ」と呼ばれるバグ技を併用することで、タイマー読みでさらに0.3秒の短縮に成功した。この0.3秒は現在の『スーパーマリオブラザーズ』RTAにおいてはいわゆる“勝ち確”のリードとなる。このリードがそのまま記録として残ったのが、今回のタイムだったというわけだ。

この記録が『スーパーマリオブラザーズ』のRTA界隈の走者の心に火を付け、新たに“人間を卒業する”走者が現れるきっかけとなるだろう。前世界記録保持者であるMiniland氏はTwitter上で「Niftskiが4分54秒を出したからやる気が出てきた。4分54秒8はもうすぐだ」と対抗心を燃やし、Niftski氏の記録を称えた。


Speedrun.comには『スーパーマリオブラザーズ』のプレイヤーとして1408人が登録されている。次は誰が4分55秒の壁を突破するのだろうか。

Ryo Agawa
Ryo Agawa

FPSするかフライトシムのプレイ中にソシャゲの日課をこなす日々。バンドを組んだり小説を書いたりと、趣味が無法地帯

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