CD PROJEKT Groupが今後の戦略を発表。『サイバーパンク2077』のローンチからの教訓を反映

 

『サイバーパンク2077』の開発元CD PROJEKT REDや、PCゲーム販売プラットフォームGOG.comなどを抱えるCD PROJEKT Groupは3月31日、同社の今後の戦略について投資家に報告した。

この中では、『サイバーパンク2077』ではパッチ/アップデート配信によって改善させることを最優先に取り組んでおり、これに目処がついたら次世代機対応に取りかかるとした。また、『ウィッチャー3 ワイルドハント』の次世代機対応については、2021年後半におこなうことを表明している。
 


CD PROJEKT Group社長のAdam Kicinski氏は、同社が目指す目標として、世界中のゲーマーの心に直接届く革新的な物語主導RPGを制作すること、世界で3本の指に入るデベロッパーであると評価されること、世界のポップカルチャーの中で同社のブランドを永続的に存在させることの3点を挙げている。そして、『サイバーパンク2077』が期待どおりのローンチを迎えられなかったことにも触れながら、「RED 2.0」と名付けたゲーム開発体制の転換をおこなうとした。

RED 2.0においては、2022年から複数のAAAタイトルを同時並行して開発することを前提とし、その効率をより高めるために、スタッフの拡充やCTO職の見直しと強化、職場環境の改善、独自ゲームエンジンREDengineを中心とした開発などを掲げている。また、外部とのコミュニケーションのあり方を再考することもここに含まれている。
 

 
外部とのコミュニケーションとは、マーケティングやPR活動のこと。SVPのMichał Nowakowski氏は、『サイバーパンク2077』においては多くの学びを得たと述べる。同作では、事前に宣伝されていた情報と実際のゲーム内容の差が、プレイヤーから批判されることとなった。今後の作品においては、ティザーを早期に披露することはあっても、マーケティングやPR活動については発売日が近づいた段階で開始するように改めるという。

すなわち、トレイラーやゲームプレイデモなどは、製品版の内容を反映できる段階まで待って公開するということだ。また、リリースするすべてのプラットフォームでのゲームプレイを紹介するよう努めるとのこと。『サイバーパンク2077』では、特に低パフォーマンスが指摘された旧世代機でのゲームプレイを伏せたまま発売したことも批判へと繋がった。

結果的に、PS4版はPlayStation Storeから一旦取り下げられ、返金対応を実施。Xbox One版については「パフォーマンス上の不具合が生じる可能性があります」との注意書きがストアに追記される異例の事態となった。Nowakowski氏は質疑応答の中で、PS4版が配信停止されたことで、ほかのプラットフォームでの購入にも影響が及んだ可能性があるとコメント。同作の今後の売れ行きは、パッチ開発によってパフォーマンスを改善させることにかかっているとの考えを示した。
 

 
CD PROJEKT Groupは、シングルプレイのAAA RPGに注力する方針は今後も継続する。その上で、AAA RPGをコアにしながら複数のジャンルを組み合わせたり、オンライン体験を導入する方向へと移行していくとのこと。また、AAA作品のみを手がけるのではなく、そのIPをモバイルやゲーム以外にも展開していくという。

なお、『サイバーパンク2077』でもオンライン要素の導入が計画されているが、同社はこれとは別に、同作をベースにしたスタンドアロンのオンラインゲームについて以前示唆していた。しかし、こちらは検討の末開発中止にしたそうだ。オンライン体験の導入は段階的におこなう方針で、巨大なオンラインゲームをすぐにリリースする考えはなく、当面はシングルプレイゲーム体験を強化するかたちでのオンライン要素を、今後の作品に取り入れていくとのこと。
 

*『サイバーパンク2077』の開発にも携わっていた、カナダ・バンクーバーのデベロッパーDigital Scapesの買収も発表。

 
今回CD PROJEKT Groupは、『ウィッチャー』と『サイバーパンク2077』を中心とした独自IPの今後の作品の方向性を示すと同時に、CD PROJEKT REDの開発体制の転換を表明した。特に『サイバーパンク2077』をめぐっては、ゲームのパフォーマンス以外にもスタッフの労働環境にも厳しい批判があり、それらにひとつひとつ対応したかたちだ。Adam Kicinski氏は、同社の財務状況は良好であるとし、これを元に今後も改善を続け、また将来のゲーム開発に繋げていく考えを示している。