『Among Us』新マップ「The Airship」は3月31日配信へ、暫定アカウント制度も実装。5人体制のスタジオは限界ギリギリ開発中


Innerslothは3月20日、『Among Us』の大型アップデートを現地時間3月31日に配信すると発表した。新マップ「The Airship」が登場し、新たなタスクや暫定的なアカウント制度が実装される。 
 

 
「The Airship」は上空に浮かぶ飛行船だ。スタジオの過去作『The Henry Stickmin』シリーズに登場した船がモデルとなっている。その広さは歴代ステージでも最大級。ゲーム開始時にスタート地点を選択できることが特徴となっており、最初に3つ提示されるスタート地点から1か所を選んでスポーンすることとなる。広大さゆえに人員が分散するリスクが大きく、スタート地点も毎回異なることから常に柔軟な立ち回りを求められそうだ。ハシゴによる高低差や動く足場などの新たなギミックも出現。肝心なところで向こう岸に渡れない……など、追いかけっこもスリリングなものになるだろう。未知なる結晶のクリーニングやゴミ箱の中身取り替えなど、タスクも多数用意されている。 

本マップは、昨年12月にはすでに発表されていたもの。実装が遅れたことに関してInnerslothは開発ブログで説明している。まず大きな要因としては、メンテナンス業務の繁忙があったようだ。サーバーダウンやハッカー報告などは数百万人規模のプレイヤーに影響を与えるため優先順位が高く、いつでも開発をストップして対応せざるを得ない実情がある。またスタジオ規模に対するタスク量の膨大さがあるようだ。 

モバイル・PC・コンソールと多岐にわたるプラットフォームで展開する現在、小さな変更であっても実装には非常に時間がかかる。各デバイスでの動作確認に加え、プラットフォームによっては実装までの承認に時間を要する場合も。ごく初期の3人チームだけで動いていたときならまだしも、現在の『Among Us』は無数の人間が関わって運営されている作品だ。ゲーム内・ゲーム外の出来事を問わずミーティングすべきことは多数あり、数時間におよぶ会議が週に数回あることも。最近では『Among Us』を模した偽グッズ販売業者まで出現しており、法的な対応に頭を悩ませているようだ。 
 

 
ときに「もっとスタジオに人を雇うべきではないか」との批判が上がることもあるが、Innerslothとしては大規模組織化した場合の人的リスクや機動力の低下を避けたい考え。しかも採用活動をするとなれば、それこそ開発を離れてリクルート業務に時間を取られることとなり、あまり現実的ではないようだ。ちなみに『Among Us』を内部で開発するスタッフの雇用には慎重ではあるものの、サーバー管理やコンソールへの移植、グッズ販売、法務・会計業務などは外部パートナーと契約。スタジオ外のリソースを活用することで、なるべくInnerslothの負担を減らす方針に舵を切っている。 

また大きな問題として、昨年から触れられているアカウント制度の整備があった。『Among Us』が大ヒットとなって以来、安全性の管理と通報機能の実装は大きな課題となっていた。実際、昨年10月ごろには「Eris Loris」を名乗るチャットスパムbotを使った荒らしが横行し、深刻な問題と化していた。原因のひとつとしては、『Among Us』にまだアカウント機能が実装されておらず、個々のユーザー情報を管理側としても特定できていなかったことがある。したがって、プレイヤーとアカウントを紐付け、有害ユーザーの通報機能を実装することは長らく最優先の課題となっていた。しかし簡単に実現できるものではなく、「アカウントをホストするサーバーはどこに置くのか」「個人情報保護や法的課題をクリアできているか」「虚偽の通報をどうやって防ぐか」といった問題を慎重に吟味する必要があった。結果的には予定より遅れ、新マップ実装と同時期のリリースに至ったようだ。 
 

 
スタジオとしては昨年からホリデー休暇も取れておらず、疲弊状態にあるのが正直なところだという。ゲーム業界においてクランチが問題視されてはいるものの、透明性を保つためにあえてチームの現状を開示したとのことだ。ただし上記に述べた説明はあくまで「説明」であって愚痴ではない、コミュニティには大きな感謝を抱いている、として改めてファンへの謝辞を述べている。2020年のバイラル化より波乱の道を辿ってきた本作だが、2021年はより安定した運営にシフトできるかがキーポイントとなりそうだ。『Among Us』最新アップデートは現地時間で3月31日の配信を予定している。 

ちなみにハチャメチャ忙しいInnerslothであるが、弊誌から「日本語名は『アモングアス』と『アマングアス』のどちらが正しいのか」と問い合わせたところ、至極丁寧な回答を寄せてくれた。気になる人はこちらの記事も参照してほしい。