Facebook風の青春ADV『Emily is Away <3』4月17日発売へ。SNSを通して00年代の学生時代をノスタルジックに描く

Facebook風の青春ADV『Emily is Away <3』4月17日発売へ。SNSを通して00年代の学生時代をノスタルジックに描く。『Emily is Away』シリーズの新作だ。

個人開発者のKyle Seeley氏は3月16日、『Emily is Away <3』の発売日を発表。4月16日(日本時間では4月17日)、PC/Mac(Steam/itch.io)向けにリリースされる。同作は青春アドベンチャー『Emily is Away』シリーズ最新作だ。対応言語は英語のみ。


『Emily is Away』は、想いを寄せる友人との淡い青春を描くアドベンチャーゲームシリーズ。2015年に配信された1作目『Emily is Away』は、高校から大学時代にかけて交わされるEmilyとのもどかしいテキストのやりとりを、90年代風のノスタルジックなPCインターフェイスの中で描く作品であった。AOL風のインスタント・メッセンジャー、Windows XPの起動音、PCハードディスクの書き込み音、当時全盛期であったアーティストたちなどのポップカルチャー情報など、ノスタルジア全開の世界観。その中で、気になる相手につい見栄を張ってしまったり、ちょっとした嘘をついてしまったりといった、主人公のぎこちないコミュニケーションに対するやるせなさを感じさせるような、甘酸っぱい青春模様が描かれた。

2作目『Emily is Away Too』は、「YouToob」「Facenook」といった新参勢力が台頭し始めた00年代中期に舞台を移し、新しい物語・人間関係が描かれた。ノスタルジックな作風を残しつつ、中心人物がEmilyとEvelynという2人のキャラクターに増え、1作目以上に主人公の心をかき乱す設定に。メッセンジャーでの返答の選択肢を通じて、キャラクターとの関係性が変わっていくマルチエンド構造となっていた。YouToobやFacenookといった架空のサービス名になっているものの、ゲーム内では本物のYouTube動画へのリンクが貼られていたりと、ノスタルジアの発信方法としても、新しい試みが見られた作品であった。


そして新たに発売される最新作『Emily is Away <3』も、シリーズの精神を継ぐ懐かしさあふれる作品である。ただし、上のトレイラー冒頭で流れているのは、2020年現代のFacenook。皮肉で嘲笑的なネットミームを嬉々としてシェアするユーザーや、政治・社会記事に対して反射的な怒りを露わにするユーザーによる投稿が、タイムラインを埋め尽くしている。それらの投稿に対し、絵文字選択式で手軽な反応を示していく主人公。フェイクニュースやキャンセルカルチャー、ヘイトコメントの反射的な拡散など、毒々しさが増していく現代SNSの様子が垣間見れる。

そうした中、Facenookから一通の通知が届く。「Facenookの利用開始から12年が経ちました」というメッセージとともに、これまでの記憶を振り返る「View Memory」機能への誘導がかかっていた。「View Memory」へのリンクをクリックすると、主人公の回想が始まったのか、2008年のFacenookが画面に映し出さされる。2020年とは対比的な、まだ無垢な雰囲気を漂わせていた頃のFacenookだ。


2008年の夏、AIM(AOL Instant Messenger)からFacenookに移行してきた高校生の主人公は、学生友達のEmilyやEvelynにフレンドリクエストを送信。そこからEmilyやEvelynを含む、学生友達とのメッセンジャーを通じたパーソナルな交流劇が始まる。友人から寄せられるメッセージへの返答を、選択肢から選んでいくことで、展開が変わっていく。なおトレイラーでのFacenookプロフィール作成画面を見る限り、性別などにとらわれず主人公のプロフィールを設定できるようだ。

フレンドが投稿した写真を閲覧したり、簡素なつくりのブラウザーゲームを遊んだり、シェアされたYouToob動画を再生したり。そうしたSNS活動を通じたノスタルジア演出は健在の様子。ゲーム内から実際のYouTube動画リンクへと繋ぐ仕様も、『Emily is Away Too』から引き継いでいるようだ。そのほかフォーラムサイト風のWebページを巡回する様子も見られ、「ヒース・レジャー死去」「バラック・オバマ 大統領選挙当選」といった2008年当時の懐かしいニュースがずらりと並ぶ。

シリーズ過去作は、青春ストーリーの過程と結末の両面で工夫が凝らされていた。新作『Emily is Away <3』にも物語分岐があるということで、今度はどのようにプレイヤーの心を揺さぶってくるのか。また、新作は2020年の現代から2008年の学生時代を振り返るという回想構造になっていることから、EmilyやEvelynとの過去、そして2020年現在がどのように紡がれていくのか注目したいところだ。


『Emily is Away <3』は日本時間4月17日、PC/Mac(Steam/itch.io)向けに発売予定。対応言語は英語のみとなっている。

Ryuki Ishii
Ryuki Ishii

元・日本版AUTOMATON編集者、英語版AUTOMATON(AUTOMATON WEST)責任者(~2023年5月まで)

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