『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』4周年、「雑なブレワイ パロディ」で祝われまくる。絶景バックに背中を見せればあっという間に“BotW風”
『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』(以下、ブレス オブ ザ ワイルド)が発売されてから、3月3日をもって4周年となった。もともとはWii U向けに開発されていたタイトルで、Nintendo Switchの到来とともに2機種でリリースされた、若き不朽の名作。その影響力は今もって衰えず、2021年にしてなお「1.4キロ先の敵を狙撃」「無傷で100%クリア」といった超越的なやりこみ猛者たちが存在するほどだ。もちろん、エクストリームなプレイだけが本作の愛し方ではない。SNSでは、ささやかな画像とともに『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』のアニバーサリーを祝福する声が各所にて聞かれたようだ。ところが、中にはちょっと“素直でない”祝い方をしているユーザーもいるらしい。何やら様子のおかしいブレワイ・バースデーの様子を雑観してみよう。
端的に「Breath of the Wild」とのひとこととともに投稿された壮大な風景。どこまでも広がる青空と緑の草原、はるかに霞む建造物、それらを臨みながら今まさに旅立とうとしている主人公の背中……なのだが、残念ながらこれは『ブレス オブ ザ ワイルド』ではない。映画「シュレック」のワンシーンである。何ひとつ関係ないコンテンツのひとコマが切り抜かれ、『ブレス オブ ザ ワイルド』の文脈として投稿されているのだ。それだけなら突飛な謎のツイートで済むのだが、本ツイートの背後にある支持数に注目してみよう。8万8000件のいいね、リツイートは1万4000件。つながりようのない映画作品と『ブレス オブ ザ ワイルド』をこじつける熱狂の背後にはいったい何があるのか、もう少しインターネットを探ってみたい。
ご覧いただけばわかるとおり、下記ツイートは『ドラゴンクエストVIII 空と海と大地と呪われし姫君』の画像だ。キーポイントとなるのは、「崖っぷちにたたずんで」「雄大な景色を見渡す」「後ろ姿」。そう、『ブレス オブ ザ ワイルド』におけるメインビジュアルの構図をパロディしているのだ。今、ネットでは『ブレス オブ ザ ワイルド』のフォーマットに沿って無関係な作品の風景写真を撮影することがネットミームと化している。
一見あまりに雑なパロディだが、彩度が高めのゲームで件のレイアウトをとると、意外と“それっぽく”見えてしまう点が妙味である。一方、後に挙げたツイートは『ソニックアドベンチャー』のもの。1998年の作品だけあって色味・画質ともそっくりとはいかないものの、「断崖絶壁で遠くを見晴らす背中」という様式にのっとるだけで無理やり『ブレス オブ ザ ワイルド』風を名乗ってしまえる強引さが笑いを誘う作例だ。
『ブレス オブ ザ ワイルド』フォーマットについては、パロディよりもいっそう意図的に模倣している例も指摘されている。先月のオンライン番組で発表された『Pokémon LEGENDS アルセウス』だ(関連記事)。こちらはいまだ謎の多い作品ではあるが、『ポケットモンスター ソード・シールド』のワイルドエリアのような広大なフィールドが確認でき、オープンワールドになるのではないかとの見方が強い。トレイラーでは明らかに『ブレス オブ ザ ワイルド』を意識したと思われるカットが確認されており、比較ショットが注目を集めている。
いうまでもなく『ブレス オブ ザ ワイルド』がのちのゲームに与えた影響は大きい。たとえばオープンワールドRPG『原神』は、オープンエアーな設計を引き継いだ作品としてフォロワーの枠にとどまらない人気を獲得している。ビビッドな色使いの世界で繰り広げられる移動・探索・戦闘が一体となった体験は、間違いなく先達の薫陶を受けたものといえるだろう。『ブレス オブ ザ ワイルド』のゲームデザインとして優れた部分が多くの血を分けたのは自明の理として、その象徴ともいえるのが件の“『ブレス オブ ザ ワイルド』風構図”である。
雄大な景色を見晴らしながら背を向ける主人公リンクの姿は、広大な世界を冒険できるという、本作のコンセプトを端的に語るキーアート。したがって、『ブレス オブ ザ ワイルド』のゲームデザインを引き継いだ作品が似通った構図のビジュアルを採用するのは道理といえるだろう。壮大さを示す手っ取り早い手段にもなっている。その一方で、「絶景をバックにした背中」というフォーマットは多くの作品で真似しやすい構図でもある。ちょっとした工夫次第で何でも“『ブレス オブ ザ ワイルド』っぽく”なるという現象が笑いを誘い、さまざまな作品でのパロディを誘発しているようだ。
そういうわけで、今年の『ブレス オブ ザ ワイルド』アニバーサリーは「雑多な作品の“ブレワイパロ”」という、不思議な手段で祝われる一面もあったようだ。もちろん、多くの人々はファンアートやメッセージなど、素直な気持ちで祝っていたことだろう。方法は違っても、祝いという思いは同じ。こうして振り返ってみると、ここ4年間で『ブレス オブ ザ ワイルド』のまいた種がそれだけ風に乗って芽吹いていることの証左ともいえよう。シリーズプロデューサーの青沼英二氏によれば、本作の続編も順調に開発が進んでいるとのこと。青き英傑の遺した遺産が今後もゲームの世界にどんな影響を与えていくのか、見守りたいところだ。