『ポケットモンスター』ダイパリメイクは、“テクスチャに発生していたバグ”まで正しく原作を再現している

 

今年2月に放送された「Pokemon Presents」にて、株式会社ポケモンが発表した『ポケットモンスター ブリリアントダイヤモンド・シャイニングパール』。ニンテンドーDS向けに2006年に発売された『ポケットモンスター ダイヤモンド・パール』のリメイク作品であり、最新のグラフィックに生まれ変わりながらも、原作に登場したポケモンたちやストーリーなどが再現される。そんな本作では、意外なテクスチャまでもが再現されているという。

https://www.youtube.com/watch?v=fc9iS36k3eE

*以下の該当シーンは38秒あたりから。


TwitterユーザーのJoey氏は3月2日、『ポケットモンスター ブリリアントダイヤモンド・シャイニングパール』の発表にあわせて公開されたトレイラーの一場面を投稿した。女性主人公であるヒカリが、家でテレビを見ているゲーム冒頭のシーンである。この部屋は、テレビの横にあるWiiがNintendo Switchに変更されるなど一部アレンジされているものの、ほぼ原作どおりに再現されており、懐かしく感じたファンもいるかもしれない。

そしてJoey氏が注目したのは、テレビの後ろにある部屋の壁だ。薄い黄色にグレーのストライプ模様が入ったテクスチャの壁であるが、よく見るとストライプの上半分は、小さな葉っぱがいくつも生えているようなデザインとなっている。オリジナル版はというと、このストライプは上半分がギザギザしている。解像度が低いためギザギザしているとしか表現のしようがないが、今回リメイクするにあたって、これをおしゃれな模様として解釈し再現したことがうかがえる。

ただ、オリジナル版にてこの壁のストライプがギザギザしていたのは、実は意図してデザインされた模様ではなく、バグだったという。その証拠としてJoey氏は、オリジナル版をエミュレーターで動作させた際の同じ部屋の様子を投稿。エミュレーター上では、問題のストライプ模様は上から下まで真っ直ぐであり、ギザギザは見当たらない。つまり、ニンテンドーDS本体との組み合わせに由来するバグによって、ストライプが歪んでいたのだ。

Joey氏によると、ニンテンドーDS本体はテクスチャ座標を補間する際の精度により誤差が発生し、このようにギザギザに描画されてしまうことがあるという。一方エミュレーターは、この部分を再現できておらず精度が高いため、データを正しく表示しているそうだ。ニンテンドーDS本体では、場合によっては一部のストライプだけが歪む場合もあるとのことで、やはりオリジナル版に収録されたデータとは異なる表現として、スクリーン上に描画されていることが分かる。


一般的に、リメイク版の開発においてはオリジナル版に存在したバグは修正されることが多い。ただ今回の例は、ゲームプレイに支障をきたすようなバグではなく、ビジュアルのみに軽微な影響を及ぼしていただけ。再現するにあたって、特に問題となる要素ではなさそうである。

そしてこの部屋の壁について、オリジナル版を手がけたゲームフリークが意図したデザインではなかったとしても、プレイヤーの思い出に残っているのはギザギザストライプ模様である可能性が高い。変えてしまうと逆に違和感が出てしまいかねない。リメイク版の開発を担当した株式会社イルカは本来のデザインを知る立場にあるはずだが、バグによって歪んでいることを承知であえて採用し、その名残が感じられるデザインへとアレンジしたのだろう。公式もリメイクについては、原作を再現していることを示唆している。今回の「テクスチャバグレンダリング」は、そうした再現へのこだわりが垣間見える事例と言えそうだ。


『ポケットモンスター ブリリアントダイヤモンド・シャイニングパール』は、Nintendo Switch向けに2021年冬発売予定だ。