クトゥルフオープンワールド『The Sinking City』Steam版配信再開。しかし開発元が「購入を勧めない」と発言し、低評価レビュー殺到

昨年ストアから取り下げられていた『The Sinking City』のSteam版が、本日2月27日に配信再開した。しかし『The Sinking City』開発元であるFrogwaresが、このSteam版の購入を勧めないと発信する奇妙な事態となっている。

昨年ストアから取り下げられていた、探索型アクション・アドベンチャーゲーム『The Sinking City』のSteam版が、本日2月27日に配信再開した。しかし開発元であるFrogwaresが、このSteam版の購入を勧めないと、ファンに向けて発信する奇妙な事態となっている。同スタジオは、今回の再配信には関与していないという。
 

 
『The Sinking City』は、作家ハワード・フィリップス・ラヴクラフトが手がけた「クトゥルフ神話」の世界観をもとにする、探索型アクション・アドベンチャーゲームだ。2019年にPC/コンソール向けに発売されたが、昨年7月になって一部を除きストアから突如姿を消してしまう。その背景には、開発元Frogwaresと、販売元Nacon(旧BigBen Interactive)との間の法廷闘争があった。

当時Frogwaresは、Naconによる契約不履行を訴える声明を発表している。本作の開発時、開発マイルストーンを達成し承認を得るごとにNaconから支払われる開発費は遅延が常態化。さらに、本作の発売後になってNaconはマイルストーンの承認を取り消し、支払いを拒んだという。また、本作の権利はFrogwaresに帰属する契約だったそうだが、Naconは自らの保有を主張しているとのこと。一方のNaconとしては、Frogwaresが契約内容を誤って解釈しているとの立場で、結果的に両社は契約解除と解除無効を裁判で争うこととなる(関連記事)。

特に本作の権利保有についての主張が食い違うことから、FrogwaresはNaconが販売を担当する各ストアに本作の取り下げを要請。Steam版も販売停止となった。これに対してNaconは、販売再開に向けて取り組んでいくと発表しており、今回のSteam版の再配信に至ったようだ。実は、Steam版は今年1月にも再配信されたが、わずか数時間後に削除。当時のストア表記から察するに、Frogwaresが独自に配信再開を試みて、Naconが差し止めたものと推測される。
 

 
開発元と販売元の対立が続く中での配信再開となった『The Sinking City』のSteam版だが、本稿執筆時点でユーザーレビューは「ほぼ不評」。不評レビューの内容を見ると、冒頭のFrogwaresのツイートを添えた投稿が多い。すなわち、開発元が関与しておらず購入も推奨していないことから、販売元Naconへの批判としてファンが小規模ながら“レビュー爆撃”をおこなっているのだ。Steamの掲示板でも、購入を検討している人に対して考え直すよう状況を説明したり、Naconに収益が渡らないよう不買を訴える投稿まで見られる。

客観的には、FrogwaresとNaconのどちらの主張が正しいのかまだはっきりしないが、ファンの多くは本作を生み出したFrogwaresを支持しているようだ。ただ、そうしたある種の感情的な側面だけでなく、本作のSteam版は具体的な問題もはらんでいる。開発元が関与していないということは、たとえばバグが発生しても修正されないかもしれない。また現時点でDLCが配信されておらず、クラウドセーブや実績にも未対応。ユーザーレビューでは古いバージョンだとする指摘もあり、アップデートについてもおこなわれない可能性があるだろう。Frogwaresが「購入を勧めない」と述べたのは、そうしたサポートができないという意味でもありそうだ。
 

 

なおFrogwaresの公式サイトでは、『The Sinking City』のPC版を購入できるストアとしてGamesplanetが案内されている。こちらはFrogwares自身が販売を担当するDRMフリー版だ。ちなみに、先日配信開始されたPS5版も同スタジオが販売元である。上述のサポート対応の不安があるため、本作を購入する際は十分に検討したほうがよさそうだ。消費者にとってややこしい状況が続いているため、両社の対立が早く解決することを望みたい。

Taijiro Yamanaka
Taijiro Yamanaka

国内外のゲームニュースを好物としています。購入するゲームとプレイできる時間のバランス感覚が悪く、積みゲーを崩しつつさらに積んでいく日々。

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