Steamにて「スタジオ名」が原因でゲームが削除される事例発生。Steamレビューが“非常に好評”と誤解させるとして
Steamにて、『Emoji Evolution』なるゲームがValveによって2月13日に削除された。Steamでは、配信されたゲームの表現内容や権利関係のトラブルなどが原因で、ストアから取り下げられる例がこれまでにいくつかあった。ただ今回の件については、「開発元の名前」が問題視されたようだ。海外メディアVICEなどが報じている。
『Emoji Evolution』は、今年2月10日にSteamにて配信開始。異なるオブジェクトを組み合わせて、合成にて新たなオブジェクトを生み出すごくシンプルな作品である。特に過激な表現を含むわけでもなく、ゲーム内容にはValveに目をつけられるような要素は見当たらない。しかし、配信からわずか2日後に削除されてしまった。そのきっかけとなったのは、VICEの記者であるPatrick Klepek氏の以下のツイートだ。
Klepek氏は、配信されたばかりの本作の開発・販売元の名前に注目した。ストアに掲載されていた名前はどちらも「Very Positive」である。ゲームスタジオの名前は本当にさまざまで、ユニークな名前も多いため、Very Positiveというスタジオが存在していても不思議ではない。ただSteamにおいては、ややこしい状況を引き起こしてしまう。
Steamのストアページでは、開発・販売元名と並んで、リリース日やユーザーレビュー評価が掲載される。このユーザーレビュー評価が本件のポイントだ。日本人ユーザーには馴染みがないかもしれないが、Steamの英語ページではレビュー評価の「非常に好評」は「Very Positive」と表記される。すなわち『Emoji Evolution』の開発元の名前と同じ。テキストリンクによりどちらも青文字となっていて目立つため、パッと見で本作を「非常に好評」の作品だと受け止める人が現れる可能性がないとはいえない。
本作の開発元Very PositiveのMike氏はVICEに対し、Steamのそうしたストアデザインを理解した上で、あえて「Very Positive」というスタジオ名をつけたことを認めている。レビュー評価は、消費者がその作品を購入するかどうかの判断に大きく影響を及ぼすとされていることから、この名前を仕込んだそうだ。実際の評価がどうあれ、「非常に好評」だと勘違いして購入する人が現れるかもしれない。
ただMike氏としては、本気でゲーマーを騙してやろうと考えていたわけではなく、ジョークの側面が強かったようだ。なにより、すぐ上に本当のレビュー評価が記載されているため、この“トリック”はすぐにバレるだろう。
Mike氏によると、当初はValveも問題ないとしてこのスタジオ名での本作の配信を認めたという。しかし、前出のPatrick Klepek氏のツイートをきっかけにほかの大手メディアも本作について報道。直後に、ValveはMike氏の開発者アカウントを停止処分にし、その結果『Emoji Evolution』がストアから削除された。Very Positiveというスタジオ名をつけるとストア上で何が起こるのか、Valveはようやく気付いたのかもしれない。
この処分の理由についてValveは、「レビューの人為的操作(review manipulations)」をおこなったためと説明したとのこと。Steam向け開発者に対しては、「レビューシステムの悪用や人為的操作はおこなわない」ことが規約にて定められている。ただMike氏は、そうした操作行為を否定。Valveに、スタジオ名に対するスタンスを問い合わせるとした。
Very Positiveという名前をスタジオにつけること自体は問題ではないが、Steamのレビュー評価表記とストアデザインとの関係において、今回のような問題に発展してしまったようだ。Mike氏にはジョークの意図があったとしても、自身で“トリック”という言葉を使い、あえてレビュー評価表記に合わせて命名したことを認めていることもあり、消費者の誤解を狙ったと判断されても仕方がない面はあるだろう。一方で、スタジオ名の自由度という側面から考えると、もっと分かりやすくレビュー評価と区別されるストアデザインが望まれるところかもしれない。
ちなみに、Steam上には「Miracle Positive」という日本のデベロッパーも存在している。「奇跡的に好評」とも読めるこのスタジオ名は、今のところValveからのお咎めはないようだ。