Nintendo Switch『ミートピア』はロシアでは“18禁”だとして話題にのぼる。同性愛描写が影響か

 

任天堂は2月18日、『Miitopia(ミートピア)』をNintendo Switch向けに発表した。5月21日に発売される。同作は、ニンテンドー3DS向けに発売された同名作品の移植タイトルだ。新たな髪型やメイク要素、馬などが導入されるほか、Nintendo Switch向けに最適化され移植される。同作はグローバルに発売される作品であるが、ロシアでのレーティングが18歳以上対象であるとして、Redditなどで話題を呼んでいる。日本でいうところの、CERO Zレベルの扱いである。


ロシアには、コンテンツのレーティング審査をおこなう独自機関Russian Age Rating System(RARS)が存在する。ゲームだけでなく、映画やテレビ番組、そして音楽。多彩なエンタメコンテンツがRARSに審査されレーティングが決定される。RARSはこのたび『ミートピア』を18歳以上対象の「18+」としている。なぜなのだろうか。

主には、同性愛を示唆する要素が存在することが原因と考えられている。『ミートピア』は、その名のとおり任天堂のアバターMiiが登場するRPG。本作ではMii同士の関係性が大きく鍵を握る。戦闘中に協力したり宿屋にて共に時間を過ごしたりすると、好きレベルがアップ。好きレベルを上昇させることで、バトルが有利に進んでいく。Miiたちの関係性が極めて重要なのだ。同作では、はっきりとした同性愛要素が描かれているわけではない。しかし、宿屋の1室にて共に仲良く夜を過ごす描写や、好きレベルが一定以上になることで特別な演出があったりと、“示唆的”な描写が散りばめられている。これらの描写が異性に限定されていないことから、同性愛要素も含まれていると考えられている。LGBTQ Video Game Archiveにも、『ミートピア』を扱うページがあり、コミュニティでは、そうした描写のあるゲームだとみなされているわけだ。


ではなぜ同性要素があればロシアでは18+扱いなのか。同国では2013年に、いわゆる“同性愛宣伝禁止法”が制定された。ざっくりといえば、コンテンツを通じて「非伝統的な性的関係」を未成年に宣伝してはならないという内容。非伝統的な性的関係には同性愛も含まれるため、同性愛宣伝禁止法という呼称が根付いている。同性愛関係コンテンツが未成年の発達に悪影響を及ぼすことを防ぐ、というのが公式の目的だという(国立国会図書館調査及び立法考査局)。ゲームやドラマなどを通じて、未成年に同性愛のプロパガンダをしてはいけないということ。この連邦法は当然RARSレーティングに影響を及ぼし、それゆえに『ミートピア』が18+扱いになったのだろう

Image Credit : Human Rights Watch


もちろん、こうした法律の影響を受けたと考えられているのは『ミートピア』だけではない。同性愛描写が含まれるタイトルは、基本的にどれも18+指定なのである。『ファイアーエムブレム 風花雪月』や『ファイアーエムブレムif』、そして『Stardew Valley』も対象となっており、同性愛のロマンス描写があれば牧歌的なゲームでも18+。ロシアにおいては、キスやベッドシーンといった直接的な描写はなくとも、同性愛を“示唆する”だけで18禁になるというわけだ。ニンテンドー3DS版『ミートピア』も18+であり、そもそもロシア語を含んでいない。そして今回のNintendo Switch版もまたロシア語が含まれていない。それでも、発売するとすればレーティング審査は必要なのだ。 


同性愛要素を含んだゲームがロシアでは18+になるのは、今回の事例が初めてではない。しかし『ミートピア』のような、他国では全年齢向けのゲームが18禁になるのは興味深い。同作の日本でのレーティングはもちろんCERO Aである。Miiを扱った任天堂の過去作『トモダチコレクション』シリーズでは、同性愛の要素が存在しないとして北米を中心に批判を受けた過去がある(CNN)。今回のように逆に同性愛を描くことで、特定の国で成人向け指定されるパターンもあるということ。さまざまな国でゲームを売るということの難しさを、あらためて感じさせるだろう。