Appleなどに対し「ストア外決済」を求める法案がノースダコタ州にて否決される。裁判を争うEpic GamesのCEOは試みを称える
アメリカ・ノースダコタ州の議会上院にて、アプリストア運営企業に対する規制を目的にした法案が提出され、投票により否決されていたことが明らかになった。海外メディアPolygonなどが報じている。
その法案の内容とは、年間収益が1000万ドル以上(約10億円)あるアプリストアの運営企業が、特定の単一のアプリストアおよび支払い機能の利用をアプリ開発者に強制することを禁じるというものだ。そして2月16日におこなわれた採決で、11対36で否決されたとのこと。
具体的に名指しはされていないが、今回の法案はApp Storeを運営するAppleを標的にしたものだったと受け止められる。GoogleのAndroidでは、公式のGoogle Playストア以外のアプリストアからアプリを入手することが可能。一方で、iOSにおいてはAppleはそうした方法を認めておらず、App Storeを通じたアプリの配信と、アプリ内課金を含めAppleの決済システムを利用することを開発者に義務付けている。
そうしたAppleの方針に対しては、反競争的であると批判する動きがある。代表的な例は、『フォートナイト』を開発・運営するEpic Gamesだろう。昨年同社は、iOS版『フォートナイト』のアプリ内課金について、Appleのものに加えて独自の決済手段を導入。そして、これは規約違反であるとしてApp Storeから削除され、さらにデベロッパーアカウントの停止処分がAppleから下された。Epic Gamesは、これを不服としてAppleを相手取り訴訟をおこなっており、またAppleも反訴している状況だ(関連記事)。
Epic Gamesなどが、App Store以外でのアプリ配信および決済手段を求める理由のひとつとしては、Appleが開発者に課している手数料がある。Appleは売り上げの30%を徴収しており、これが高すぎると主張しているのだ(売り上げ100万ドル以下の中小開発者は15%に割り引かれる)。音楽ストリーミングサービスを運営するSpotifyも同様に声を上げている。Spotifyは、同サービスにおいてAppleと競合関係にあるが、大きな手数料を課されるため公正な競争ができないと主張している。
Epic GamesやSpotifyなどは、「Coalition for App Fairness」と呼ばれる団体を昨年設立し、アプリ配信における選択の自由と公正な競争を求める運動を開始。実は、今回の法案がノースダコタ州議会上院に提出されるに至ったのは、同団体のロビー活動などによって実現したものだという。結果的に否決となったが、Epic GamesのCEO Tim Sweeney氏は、アプリストア運営者による独占行為に対してノースダコタ州が戦ったことは、消費者や開発者にとって素晴らしいことだとコメントしている。
App Storeを通じたアプリ配信と、Appleの決済システムを開発者に義務付けていることは、iOSデバイスにおけるAppleのビジネスモデルに大きく関わっている。また、Appleとしてはセキュリティ面でのメリットも主張しており、ひとつの州での出来事とはいえ、もし法案が可決されていたら困難な対応に迫られていただろう。一方で、Appleを含む巨大企業は合衆国議会の公聴会に呼ばれるなど、反競争的なビジネスをおこなっていないかどうか厳しい目を向けられており、Epic Gamesなどが発する批判的な声が収まることはまだなさそうだ。