パブリッシャーのVicturaは2月11日、FPS『Six Days in Fallujah』の開発再開を発表した。対応プラットフォームはPC(Steam)およびコンソールとされ、リリース時期は2021年後半を予定。
『Six Days in Fallujah』は、2004年にイラク・ファルージャで起きた戦いを描いたシューターだ。米国軍兵士とイラク民間人、そしてアルカイダによる過酷な市街戦が描かれている。実際の戦場にいた元兵士のナレーションが収録されており、現代戦におけるリアルなコンバットや、いつどこで攻撃を受けるかわからない緊張感が生々しく描き出されているという。プロジェクトに携わった元海兵隊員・兵士・イラク民間人は100名にもおよぶとのことだ。
本作はイラク戦争を描いた初のゲームとして、もともとPlayStation 3/Xbox 360/PC向けに開発されていた。ところが戦死した兵士の遺族による抗議を受けて、パブリッシャーを担当するはずだったコナミデジタルエンタテインメントが撤退を表明。2009年内に事実上の開発中止となっており、デベロッパーのAtomic Gamesも2011年に閉鎖してしまっている。背景には、ファルージャの戦いがいまだ議論の多いセンシティブな話題であることが挙げられるだろう。当時の戦いでは対人使用が問題視されている白リン弾や、劣化ウラン弾を米国軍が使用したことが疑われている。先天性障害を患った子どもが次々生まれていることも報告されており、いまだに戦いの傷跡は深く刻まれているのが現状だ。
今回のリブートにあたっては、パブリッシングをVicturaが担当。VicturaはBungieの元副社長Peter Tamte氏が立ち上げた会社である。同氏はオリジナル版『Six Days in Fallujah』開発にも携わっていた人物だ。また、開発を新たに担当するデベロッパーはHighwire Games。ベテランゲームデザイナーのJaime Griesemer氏が立ち上げたスタジオであり、同氏は『Halo』や『Infamous』といったフランチャイズに関わった実績がある。開発チームには元Bungieにてキャラクター・車両・武器などを手がけたアーティストが参加。また『Halo』『Destiny』にてオーディオディレクターを務めたMartyO’Donnell氏も加わっているという。
プロジェクトに参加する元海兵隊長のEddie Garcia氏は、真実を知るにはときに自分で体験するしかない場合がある、と語る。同氏は2004年当時ファルージャの戦いに参加し、負傷した経験をもつという。戦争とは不確実性と過酷な選択に満ちており、テレビや映画のスクリーンを通しては伝えきれないものがあるとするGarcia氏。ビデオゲームが、他のメディアではできない方法で現実世界の出来事を理解する助けになると考えているそうだ。イラク民間人の死者は800人にものぼるといわれ(赤十字)、リブート版にて過酷な戦場がどこまで写実的に表現されるか注目されるところだろう。
公式サイトのFAQによれば、本作において遺族の許諾なしに特定の従軍者の死が描かれることはなく、代わりに収録されたビデオインタビューにて元海兵隊員・兵士の口からチームメイトの死が語られるという。また一般には知られていないが実際の戦場には多国籍の兵士がいたとのことで、ゲームは常に米国軍兵士として戦うことになるわけではないとのこと。シングルプレイヤーキャンペーンでは、非武装のイラク市民としてステルスミッションに挑むこともあるようだ。またシングルプレイヤーキャンペーンおよび、史実を元にしたマルチプレイヤーモードにて反乱軍としてプレイすることはないと伝えられている。なお本作は独立したプロジェクトであり、制作に米国政府が関与しているわけではないとのこと。また『Six Days in Fallujah』の収益は元連合軍兵士を支援するために寄付されるとしている。
『Six Days in Fallujah』はPC(Steam)およびコンソールにて、2021年発売予定だ。