ウェブサイト「SilentHill.com」にて、怪しげな画像が表示されているとしてSNSなどで話題を呼んでいる。『サイレントヒル』は、コナミがIPを保有するホラーゲームシリーズ。タイトル名+.comという組み合わせは、ゲームの公式サイトに使われがちなドメインパターンである。ではSilentHill.comにアクセスするとどうなるのか。見てみよう。
Si lentHill.comにアクセスすると、『サイレントヒル』シリーズに登場するクリーチャーである三角頭のイラストが表示される。イラストの下にはHE WAS FIRSTというテキストが確認できる。黒い背景ながらしっかり見つめると身長を示すグラフも存在する。どうやら三角頭は9フィート(2.74メートル)であるそうだ。そのほか、特に情報があるわけではない。SilentHill.comに載っている情報は、このイラストとグラフがすべてである。
一見するとかなり意味不明であるが、それもそのはず、このネタは『バイオハザード』新作のネットミームに関連している。カプコンが2021年5月8日に発売予定の『バイオハザード ヴィレッジ』。同作では、敵キャラとして巨大な背丈を誇る婦人のドミトレスクが登場する。主人公のイーサンを付け狙う存在になるという。彼女の特徴は、その大きさだ。ドミトレスクは初登場時から大きな注目を集めており、妖艶さと大きさが話題を呼んでいる。海外メディアは独自に身長をはかるなどし、またたくまにネットミーム化。さらにはカプコンが公式に彼女の身長について回答しており、アートディレクターの高野友憲氏は「ゲーム内の実測でヒールと帽子込みで290cm程(9.6フィート)」と述べていた。ドミトレスクの身長は、今ホットなネタのひとつだ。
こうした『バイオハザード ヴィレッジ』の情報を踏まえて、再びSilentHill.comのページを見てみよう。三角頭のイラストと、9フィートの身長を示すグラフ。そしてHE WAS FIRSTのテキスト。これらを加味すると、ドミトレスクより先に、背丈の高い9フィート超えの人型モンスター三角頭が存在していたのだと、主張しているように読み取れる。確かに、伊藤暢達氏がデザインした三角頭はデザインの奇抜さから、背丈が高いことはやや見落とされがち。三角頭が先駆者だと主張したくなる気持ちもわかる。しかし、誰がなぜこんなことをしたのか。さっぱり意図が図りかねるのだ。
SilentHill.comは、かつてコナミが保有していたとされるドメイン。かつて、という文言からわかるとおり、現在コナミは同ドメインを保有していない。TweakTown によると、コナミがSilentHill.comを活用していたのは『サイレントヒル3』が発売された2003年頃までだとされている。2006年になるとドメインこそ誰かに保有されているものの、サイトとして内容がない空洞サイト化。ゲームにまったく関係のないアフィリエイトリンクやテキストがあるだけ。
その後も、ドメインは存在しながらも中身はコロコロと変わっていた。2019年8月には、SilentHill.comのドメインが9835ドル(約100万円)で売り出されていたことも話題となっていた(RelyonHorror)。コナミは2003年にはすでにドメインを放棄しており、さまざまなユーザーがドメインを転がしていった結果、三角頭が身長を主張するページが生み出された。Whoisで調査しても持ち主は不明。おおかた、愉快犯による仕業だろう。
『サイレントヒル』のナンバリングタイトルがリリースされなくなって久しい。しかし、ゲームシリーズとして完全に沈黙しているかと言われれば、そういうわけではない。非対称対戦ゲーム『Dead by Daylight』では「サイレントヒル」チャプターが登場し、三角頭が殺人鬼デビュー。同DLCにはマップとしてミッドウィッチ小学校が、生存者としてシェリル・メイソンが収録されており好評を博した。最近ではホラーパーティーゲーム『Dark Deception: Monsters & Mortals』ともコラボを果たしており、DLCが2月にリリース予定。そのほか、GOG.comではPC向けに『サイレントヒル4』がリリースされるなど、派手さはなくとも動きはあるわけだ。
『サイレントヒル』公式サイトともとれるドメインにて、三角頭と『バイオハザード』新作キャラとの身長比べが発生しているのはなかなかシュール。とはいえ、異様な物を売りつけたり怪しげなサイトにリダイレクトさせたりするような業者よりはよっぽどマシだろう。おふざけをしているとしても、約100万円で売られていたドメインを取得しているというのだから、熱意はあるはず。今でも100万円で売買されているのかどうかはわからないが、SilentHill.comというドメインに一定の価値があるのは確かだ。いびつなかたちではあるが、誰かがシリーズ復活を願っているのかもしれない。『サイレントヒル』シリーズがさらに賑わう未来に期待したい。