PlayStation 5(PS5)を求めて、ヨドバシカメラ秋葉原店(ヨドバシカメラ マルチメディアAkiba)に人々が殺到していたようだ。Twitterでは現場の写真などが投稿されており、警察まで出動したと伝えられている。この様子は、国内および海外メディアに取り上げられ、大きな騒ぎとなった(ねとらぼ)。
実際のところ、何があったのか。同件についてAUTOMATON編集部はヨドバシカメラに問い合わせをおこなった。同社広報は、1月30日にヨドバシカメラ秋葉原店に人が殺到したことについて認めている。人がどんどん集まり、店員がそれを抑制しようとしたものの、止まらず人が押し寄せる騒ぎになってしまったそうだ。この日、PS5の店頭販売はおこなわれず。今後についても、入荷状況次第ではあるものの、しばらく店頭販売をおこなう予定はないとのこと。
ヨドバシカメラは今年に入り、各店舗にてゲリラ的に店頭販売をおこなっていることが報告されている。その流れで、店頭販売を期待した人々が集まった可能性はあるだろう。他方、1月30日の騒動については、現地にて入荷アナウンスが流れ、その結果人々が殺到したとの報道もある。そうした理由によって人が集まったのか、もしくは入荷予告があったことにより人々が殺到したのか。 事情は定かではない。ヨドバシカメラにこの点について追加質問をしたが、現時点では回答は得られていない。
そもそもの背景として、PS5の在庫が全世界規模で不足している。新型コロナウイルス感染拡大による影響により、半導体などの製造が追いついていないといった指摘や転売屋の買い占めなど複合した原因により、同ハードを欲するユーザーに十分に行き渡っていない状況。このコロナ禍にて店頭販売を決行し、“密な状況”を生み出しかねないヨドバシカメラ側の対応が疑問視されている。
一方、小売側もまたPS5の扱いに苦しんでいる。各ストアはPS5販売においてはどこも抽選形式を採用している。ストアでの購入歴があるユーザーや、会員であるユーザーを対象とした抽選にすることで、転売屋による購入を制限する狙い。しかし、この手法は小売側に負担を強いる。抽選販売というのは、そもそも工数がかかるプロセスだ。消費者にとっては平等に入手機会が提供されるシステムであるが、小売店にとっては店頭販売やオンライン販売と比べれば、こなすプロセスが多く、負担ははるかに大きい。12月に抽選販売を実施した家電量販店ノジマは、転売屋ではない希望者にPS5を届けられるように、12万件の応募に対し、ひとつひとつ目視で確認をおこなったと報告していた。その手間は想像を絶する。
さらにPS4含めゲームハードは原価率が高いことが有名(AllThingsD)。そうした事情もあり、小売店側も仕入れ値と売り値の差をつけづらく、利益が薄いとされている。利益率の低い商品を、複雑なプロセスで売らなければいけない。そうした背景を考えると店頭販売をする決断を下すのは、不可解なことではない。もちろん、PS5の扱いそのものをやめればいいとも考えられるが、ゲームソフトなどを扱うことを考慮すれば、やはりハードウェアについても押さえざるを得ないだろう。他チェーンが店頭販売を自粛する中、コロナ禍での店頭放出に踏み切ったヨドバシカメラ側の責任はある。ただし、在庫僅少と転売屋の暗躍により、小売側も苦難を強いられているわけだ。
SIE側も出荷を続けているが、前述したように半導体やチップの製造が安定しないとの報道も出ている。AMD CEOのリサ・スー氏も先日、PS5に使われている同社のチップセットの半導体生産について言及。2021年上半期は同社のCPU供給がタイトなものになるとコメントしていた(PC Watch)。メーカー側もギアを上げきれないのが現状である。
販売方法について、SIEがPSNアカウントを利用しPSユーザーに対して優先的に供給していくにしても、非PSユーザーを除外することで新規ユーザーを取り込めなくなり、また小売店経由での拡販を見込めなくなるといったデメリットもある。あちらが立てばこちらが立たず。がんじがらめが続くメーカーと小売店のゲーム機販売は、2021年も続きそうだ。
【UPDATE 2021/02/12 13:33】
リサ・スー氏の発言箇所について、「2020年上半期」を「2021年上半期」に訂正。