ケモノオープンワールド『BIOMUTANT』の情報が途絶えていたのは、スタッフに健康的に働いてもらうためだった。開発長期化の背景を明かす

『BIOMUTANT(バイオミュータント)』の発売日が、5月25日に決定した。しばらく情報が途絶えていた『BIOMUTANT』だが、その背後には何があったのだろうか。

オープンワールド・アクションRPG『BIOMUTANT(バイオミュータント)』の発売日が、5月25日についに決定した。本作は2017年に発表され、当初は2018年発売予定とされていたが、その後2019年へと延期。しかし、続報が届いたのは2020年になってからだった。この間には、開発中止になってしまったのではないかと不安視するファンもいたが、実際のところ何が起こっていたのだろうか。開発元Experiment 101のクリエイティブ・ディレクターStefan Ljungqvist氏が、海外メディアIGNのインタビューに答えている。
 

 
『BIOMUTANT』は、文明崩壊後の世界を舞台に、小さなケモノのキャラクターが活躍するオープンワールド・アクションRPGだ。近接格闘と射撃を組み合わせたスタイリッシュなバトルや、自由度の高い武器クラフトおよびキャラクターカスタマイズ要素、そして旧世界の汚染物質から獲得できるミュータント能力などを特徴とする。開発元Experiment 101は、『Just Cause』シリーズなどで知られるAvalanche Studiosの元スタッフによって設立されたスタジオであり、本作はオープンワールドゲームのスペシャリストが手がける新作としても注目されている。

本作については、2017年から2018年にかけて積極的に情報公開されてきたが、その後続報が途絶えることに。そして2020年6月になって上のトレイラーが公開。発売時期は「When we are happy with it(我々が本作の出来に満足できたとき)」とされた。すなわち発売時期を未定にしたわけだ。この背景には、スタッフに健康的に働いてもらう狙いがあったという。

Stefan Ljungqvist氏は、Avalanche Studios時代に開発において燃え尽きてしまった経験があり、それ以来そうした分野について勉強してきたそうだ。Experiment 101は20人程度の小規模なスタジオであるため、誰かが体を壊したり辞めてしまったりすると、すぐに開発に影響が及ぶ。それゆえに、「完成した時が発売日」という余裕のあるスケジュールを組み、情報公開を一旦絞ったのだ。長時間の激務となる日もあるが、体を休める時間が確保され、その分も給料が支払われるというから徹底している。
 

 
Experiment 101は『BIOMUTANT』を発表した直後の2017年11月に、販売元を務めるTHQ Nordicに買収されている。そうしたスタッフの健康に配慮した働き方についてはTHQ Nordicの理解も得られ、完成を急がせるようなプレッシャーはなかったそうだ。ただ、20人程度というスタジオの規模を維持してきたことで、開発は長期化することとなった。

理由のひとつにはQA(品質管理)が挙げられている。オープンワールドゲームである本作の場合、バグを見つけるだけでも苦労し、いざ見つかったなら少人数で対処しなければならない。また同スタジオでは、ゲーム体験を阻害するようなバグは可能な限り排除した状態でリリースする方針を立てており、結果的に作業量が増えることに。特に2020年は、ほとんどの時間をバグ修正に費やしていたそうだ。

さらに、本作のシナリオについては、2019年時点では8万〜8万5000ワード程度だったが、最終的に25万ワードにまで膨らんだことも影響した。本作は13か国語をサポートし、このうち10か国語については吹替にも対応。日本語も含まれる。膨大なシナリオを取り扱い、またローカライズして実装する作業も大きなチャレンジとなった。
 

 
近年ゲーム業界では、“クランチ”とも呼ばれる強制的な長時間労働が問題視され、告発も多く見られる。Experiment 101がスタッフの健康面を大切に考えた職場環境を整えたのは、Stefan Ljungqvist氏の個人的な経験はもとより、そうした業界の流れも影響したかもしれない。また、資金力のあるTHQ Nordicのサポートも大きかったといえそうだ。

BIOMUTANT(バイオミュータント)』は、PC(Steam)/PS4/Xbox One向けに5月25日発売予定だ。日本語表示・吹替にも対応する。

Taijiro Yamanaka
Taijiro Yamanaka

国内外のゲームニュースを好物としています。購入するゲームとプレイできる時間のバランス感覚が悪く、積みゲーを崩しつつさらに積んでいく日々。

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