ドライブシム『Euro Truck Simulator 2』などで新型コロナのワクチン輸送のゲーム内イベント開催。が、「政治的だ」と批判され開発元が声明

SCS Softwareは1月21日、ドライブシミュレーター『Euro Truck Simulator 2』および『American Truck Simulator』にて「Hauling Hope」イベントを開催すると発表した。ところが、一部のユーザーから「政治的である」との批判が寄せられた模様。

SCS Softwareは1月21日、ドライブシミュレーター『Euro Truck Simulator 2』および『American Truck Simulator』にて「Hauling Hope」イベントを開催すると発表した。新型コロナウイルスの終息祈願として発足した催しだ。ところが、一部のユーザーから「政治的である」との批判が寄せられた模様。最終的にSCS Softwareから声明が発表されることとなった。
 

 
『Euro Truck Simulator 2』はヨーロッパを舞台としたトラックシミュレーターゲームだ。プレイヤーは運送用トラックに積荷を乗せて、欧州を横断する。単に荷物を運べばいいだけでなく、スピード制限といった法的規制や寝不足などのコンディションも導入。万が一事故を起こせば補償金を支払わねばならないなど、生々しさもありつつ没入感を誘う作りが特徴だ。緑鮮やかなヨーロッパを走る『Euro Truck Simulator 2』に対し、『American Truck Simulator』は荒凉たるアメリカが舞台。現実世界である道路が土砂崩れを起こすと、ゲーム内でも連動して該当の道を封鎖するなど、ユニークな仕掛けを施してきた。いずれの作品も、仮想旅行を楽しむ気分でリアルなドライブを楽しめるのが大きな魅力。昨年3月には両作とも「#TruckAtHome」と題して、特殊なペイントModやSteamキーを配布することでステイホームを呼びかけていた。
 

 
今回の「Hauling Hope」イベントのルールはシンプルで、『Euro Truck Simulator 2』もしくは『American Truck Simulator』で「COVID-19ワクチン」を貨物として、少なくとも7つ損傷のない状態で輸送するというもの。イベントを達成すればトラックにぶら下がるキャビンアイテムを記念として入手可能。特に現実世界に影響を及ぼすチャリティーイベントではなく、先述の道路封鎖と同様、リアルの世相を反映したちょっとしたお楽しみ要素だった。

ところがイベント開催を告げるブログポストのコメント欄では、思わぬ波乱が待ち受けていた。「ワクチン賛成/反対という政治的議論をゲーム内に持ち込むべきではない」というのだ。米国では新型コロナウイルスのワクチン接種が昨年12月から始まり、今年1月12日までに約930万人が1回目の接種を終えている(毎日新聞)。一方で、実はワクチン接種に対し反対の意を唱える人々もいるのだという。緊急措置で開発されたワクチンの安全性に対し、医療従事者をはじめ一般社会での不安が拭い切れていないことが背景にあるようだ。同様にヨーロッパでも、特にフランスなどではワクチンへの不信感が強く、接種を拒否する人が少なくないとのこと(FNNオンライン)。「ワクチンの輸送」というテーマは必ずしもすべての人にとって“正しい”行為としては受け取られない。ゲーム内でワクチン輸送を課することは、「接種賛成」という意見をユーザーに押しつけかねない……そんな懸念を抱くプレイヤーがいたのだ。

コメントが200以上つくなど議論が盛んになったのち、SCS Softwareはコメント欄にて謝罪。本イベントはワクチンを支持するか反対するかにかかわらず、昨今の世界情勢にあってたゆまぬ努力を続けている運送業従事者に敬意を表すためのものだったと説明した。その上で、イベントに参加するか否かはプレイヤーの判断に委ねられているとしている。白熱するユーザーらにむけて、コメント欄にてケンカするのはやめてほしいとも呼びかけた。
 

 
現実の世相を反映したリアルさが売りのシリーズだけに、現実社会の政治的問題まで引き入れてしまった今回のトラブル。改めて、「ゲームと政治」の関係の難しさが浮き彫りになった例といえるだろう。「Hauling Hope」イベントは日本時間で2月8日午前8時59分まで開催中だ。

Yuki Kurosawa
Yuki Kurosawa

生存力の低いのらくら雰囲気系ゲーマーです。熾烈なスコアアタックや撃ち合いを競う作品でも、そのキャラが今朝なに食ってきたかが気になります。

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