『マインクラフト』都市伝説「Herobrine」シードが特定される。 白目スティーブ最初の目撃情報の地


『マインクラフト』界隈で語り継がれる都市伝説、「Herobrine」。その怪談の舞台となったワールドのシード値が特定されたようだ。 PC Gamerが報じている。「Herobrine」は、『マインクラフト』のゲーム内に存在すると謳われる謎の人物。見た目は青いTシャツにジーパン姿で、デフォルトスキンであるスティーブとほとんど変わらない。しかし、違いはその顔だ。瞳がなく、真っ白い目が不気味に光る奇妙な表情をしている。気味が悪いのは見た目だけでなく、数々の奇怪なエピソードとともにファンコミュニティ内で語り継がれてきた都市伝説だ。その「Herobrine」が最初に“目撃された”とされるワールドを生成するシード値が、今回判明したのである。彼がはじめて海外の匿名画像掲示板4chanで目撃報告された際に投稿された、スクリーンショットも同じ構図で再現されている。 
 

 
「Herobrine」の都市伝説は2010年に投稿された4chanの目撃写真が初出のようだ。一見ただの霧に覆われた景色だが、霧の奥をよく見ると、白目のスティーブがこちらを見ているというもの。報告によれば、投稿者は『マインクラフト』で新しいワールドを作成して、シングルプレイモードでサバイバル生活を楽しんでいた。いつの間にか周囲を霧に囲まれていたが、描画範囲が小さいせいだと思って気にしなかったという。ウシを見つけて革の鎧にしようと追いかけていると、実はウシではなく人であることに気が付く。その人影が振り返ると、白い目のスティーブだったのだという。 

投稿者はそれ以降もワールドの各地で2×2のトンネルや海底のピラミッド、葉を刈り取られた樹木などほかのプレイヤーの痕跡を目にするようになる。もちろん投稿者はシングルプレイのため、本来ならほかのプレイヤーなどいるはずがない。やがて、白目のスティーブが霧の奥から自分を見ているのではないかという不安から、投稿者はそのワールドでのプレイはやめてしまったという。フォーラムで白目のスティーブの目撃情報を募るが、投稿はすぐに消され、ユーザー名「Herobrine」から「止めろ」とメッセージを受け取る。調べてみると「Herobrine」とは、『マインクラフト』開発者Notch氏の亡くなった兄弟の名前であったというオチだ。 
 

BroCraft配信時のHerobrine(Image Credit : Official Minecraft Wiki)

 
実際にはこの投稿はジョークで、そもそもNotch氏には兄弟はいない。よくできたホラーとしてインターネット上で親しまれてきた、コピペ怪談だったわけだ。次に「Herobrine」がネットに登場したのは、『マインクラフト』コミュニティBroCraftの配信者Copeland氏の企画中だ。同氏は通常の配信と見せかけ「Herobrine」を登場させるホラー系のドッキリを行ったのだ。実際に「Herobrine」が出現したわけではなく、絵画のテクスチャを書き換えてそれらしく見せていたのだという。しかし「Herobrine」はこの配信をきっかけに有名な都市伝説と成長してゆく。MINECONのトレーラーや公式画像に紛れ込んでおり、開発陣もこの都市伝説を気に入っているようだ。 Java版バージョン1.16.2の配信時には、わざわざパッチノートに「Herobrineを削除した」と記載されていた。 

さて、 Herobrine 自体は存在しないが、スクリーンショットは現存している。すなわち、最初に“目撃写真”が作られたワールドは存在したということだ。『マインクラフト』におけるワールドは、いずれもシード値と呼ばれる固有の数値を入力することで常に同じワールドを生成することができる。そこで、はじめて Herobrine 伝説が作られたワールドのシード値を割り出し、実際に“現地”に行ってみようというプロジェクトが立ち上がった。「Herobrine」のシード値を特定するプロジェクトが開始したのは2020年9月5日のことだ。シード値を特定したのは今回も『マインクラフト』の調査研究コミュニティ「Minecraft@Home」の仕事だ。これまでも「タイトル画面のワールド」や「pack.pngのワールド」の特定に成功してきた界隈である。現在も『マインクラフト』のトレーラーを再現するプロジェクトが進行中だ。 
 

 
今回シード値を発見したのはandrew_555(Kimister)氏。281兆4749億7671万0656通りもあるシード値から、「Herobrine」シードを探査した方法を公開中だ。これによると最新のGPUを使用した場合、1日もあれば特定のスクリーンショットのシード値を発見することは基本的に可能であるという。ただしそのためのプログラムとデータを用意するには、計算するよりはるかに長い時間が掛かるようだ。 

このプロジェクトで難しいのはもとのスクリーンショットの描画範囲が小さく、使える情報が少なかったことだ。以前のプロジェクトでは、空に浮かぶ雲のパターンから撮影箇所の座標を割り出すことができたが、「Herobrine」写真は霧がかかっているためそれも難しい。今回の手がかりとなったのは、スクリーンショット左奥にある2本の巨木。巨木を生成できるチャンクは木を生成するチャンク10個のうち1つだけだ。そして、同じサイズの巨木が隣り合う2つのチャンクで並んでいる可能性よりも、1つのチャンク内に隣接して生えている可能性の方が高いという。

そこでチームは、画像が撮影されたロケーションが「2本の隣り合う巨木を含む1つのチャンク内」であると仮定した。隣接した2本の大きな木を生成できるシード値の候補は4億3000万ほどであるという。ほかにも8本見える小さな木は巨木と同じチャンクには生成されないこと、異常な地形が4の倍数の座標でのみ観察されることも有用な情報であったそうだ。泥のテクスチャの向きから方角を割り出すなどアナログな手法も使用されている。 さらにアルファ版でみられたという木の葉がランダムに枯れるバグを考慮しつつ、オリジナルの木の形を絞り込んでいった。木の形が解明されると10億分の1ほどのスケールで一気に候補が少なくなる。最終的に11個まで候補を減らし、あとは手動で「Herobrine」のシードを特定したそうだ。 
 

 
都市伝説となったシード値は「478868574082066804」。座標はX=5.06 Y=71 Z=-298.54。カメラアングルは(93.75/-1.2)となっている。バージョンはJava版のa1.0.16.であり、かなり昔のものだ。セーブファイルを編集する必要もあるそうだ。ワールドへ入るための詳細な手順については、「Minecraft@Home」を参照していただきたい。