英国に拠点をおく転売業者グループCarnageは1月19日、大手ゲームストアGAMEに再入荷されたPlayStation 5を2000台確保したと伝えた。海外メディアのThe Gamerなどが報道している。CarnageはTwitterの同投稿にて、「(買い占めることが)どんどん楽になっている」と発言。このツイートがきっかけとなって批判が殺到し、現在はアカウントが非公開となっている。
昨年から続くPlayStation 5品薄の状況は一向に改善のめどが立っておらず、その一因として転売業者の存在が指摘されている。データエンジニアのMichael Driscoll氏によれば12月1日の時点で、転売されたPS5デジタルエディションの数は7322台、通常版は2万5642台。転売業者/eBayにとっての利益は1900万ドル(約1億9700万円)にのぼるとされている(DEV Community)。
厄介な業者といえるひとつは、限定スニーカーなど他業種で転売のノウハウを積み、PS5転売に参入した個人業者のベテラン。昨年12月には、若干22歳にして400万円以上の利益を獲得した手練れの転売業者が話題となった(関連記事)。一方、より深刻とされるのがCarnageのように組織的に転売をおこなっているケースである。 Carnageは2020年9月より活動を開始した転売業者グループだ。当初は主にフットウェアやディズニー関連の限定商品を買い占め、利益を得ていた。11月にPS5やXbox Series Xが予約を開始すると、次世代コンソールの買い占めに注力するようになったようだ。
組織的転売業者のもっとも手強い点は、専門エンジニアがついていることだ。現在急速に需要が高まっているデベロッパーの手で、さまざまな転売用botが開発されている。在庫入荷の自動検出はもちろん、待機時間を回避する、順番待ちをジャンプするといった多くの機能が生み出されているという。CarnageについてもこうしたBotを使っている可能性が濃厚とされ、GAMEのbot対策不足を批判する向きもある。その後GAMEは海外メディアVGCの取材に対し、今後の入荷時は予約者が正規の消費者であることを確認していくとコメントを寄せた。
*Carnageを使い大量予約に成功したとみられる人物。
転売業者が急速に増加したことの一因としては、新型コロナウイルスの影響で経済的に困窮する層が増加したためではないかとする指摘もある(Business Insider)。英国に拠点をおく別の転売業者グループCrepChiefNotifyは、構成員全体で約3500台のPS5を確保したと発表したことで波紋を呼んだ団体だ。CrepChiefNotifyは公式Facebookにて、構成員の多くがパンデミックにより解雇か、何らかの損害を抱えた人々であるとして、自らの活動を擁護したと報じられている(現在、該当の投稿は削除)。
なおイギリスでは、スコットランド国民党がEarly Day Motion(すぐには審議される見込みはないが、議員に関心を促すために書かれる動議)を提出し、「メーカーの希望小売価格を大幅に上回る価格でのゲーム機とコンピューターコンポーネントの再販を禁止する」立法案を求めている(VGC)。すでに合計15人の国会議員の署名を集めており、英国政府に対し、botを使用して購入した商品の再販を違法行為にするよう求めているという。同国ではすでにチケット類の高額転売を規制する法案づくりが進められており、そうした流れを汲んでの動きといえそうだ。
国内でも転売に対する対策は小売店ごとに取られている。各店が抽選販売を採用しているほか、抽選販売に際しては過去のストア利用が求められる形式が一般化。そのほか、家電量販店のノジマは12月、自社におけるPS5抽選販売に際して「応募総数約12万件に対し、1件ずつ目視での最終確認」をおこなったと発表。当初より当落発表が遅れるかたちとなりながらも、可能な限り転売業者へ手にわたることを避けるかたちで販売した。
一方、転売業者の“主戦場”であるオンラインプラットフォームでの反応はさまざまだ。ヤフオクはすでに昨年11月、「「PlayStation 5」の出品について」との声明を発表。高額出品に対して消費者への注意喚起を促すと同時に、「商品が手元にないと当社が判断した場合や、その他ガイドラインに抵触すると当社が判断した場合には、出品削除等の措置を実施」するとした。ただし現在でも、通常盤の定価が4万9980円に対して6万円〜8万円程度の出品は散見される。
また中古販売プラットフォームのメルカリでは規約にて、手元にない商品の出品が禁止されているものの、PS5予約開始直後から高額出品が相次ぎ批判を呼んでいた。また国内メディア ITmedia NEWS の取材に対し「権利者からの申し立てがあれば削除を検討する」と回答。その後、ソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)より実際にメルカリへ「意見表明」があったことをYahoo!ニュースなどが報じている。メーカーも小売も転売対策については、努力を続けているわけだ。
にもかかわらず、さまざまな姑息な手段により転売が横行するPS5。スペックに伴う販売価格の高さから初期需要は控えめになると予想されたと伝えられるものの、現状では上記の状況が続いている。PS5狂想曲は今年もしばらく続きそうだ。