『GTA5』などで知られるTake-Twoが、NPC車両の経路探索に関する特許を出願中。より自然な動きを実現するための技術


パブリッシャーTake-Two Interactive Software(以下、Take-Two)による、NPCの経路探索に関する特許出願がredditユーザーの注目を集めている。発明者の欄にて、Rockstar Games開発スタッフの名が書き連ねられていることから、Rockstar Gamesの次回作に向けた特許出願なのではないかとの推測を呼んでいるわけだ(米国特許商標庁)。

具体的には、Rockstar GamesにてAI/ゲームプレイに関するテクニカル・ディレクターを務めるDavid Hynd氏と、同社のリードAIプログラマーであるSimon Parr氏の名が発明者の欄に記載されている。いずれも『Grand Theft Auto V』『レッド・デッド・リデンプション2』などに携わった人物。特許出願された技術が実際に使われるとは限らないものの、NPC車両に関する特許ということもあり、『Grand Theft Auto』シリーズ新作用に検討している技術のひとつではないかと、期待が寄せられている。

NPC車両が抱える課題


「ゲーム世界におけるバーチャルナビゲーションのシステムとメソッド」と題された特許出願(2020年10月提出)は、NPC、特にNPC車両の動作や経路探索に着眼したもの。まず既存のゲームで使用されているNPCの経路探索システムでは、人間らしい動きを生み出す上で限界があると説明。NPC車両の挙動に関連したアルゴリズムに割けるリソースも、ハードウェア上の制約によって限られていると、現在の課題を伝えている。

制限というのは、なにも画面に表示できる車両の数といった物量的な意味合いに限る話ではない。今回の出願書類では、NPC車両の反応が例として挙げられている。NPC車両は、周囲で起きている事柄すべてを判断材料として取り入れているわけではなく、ごく間近にある物体や、間近で起きている出来事に基づく反応しか示せない。交差点に差し掛かったときに交通量を考慮して進行ルートを決めたり、高速道路の出口までの距離を見越して車線変更したり、現在の天候を踏まえて速度の出し方を変えたりといった、細かな判断ができない仕組みになっているケースが多いと、特許説明欄にて言及されている。

従来のシステムにおけるNPCは一連の特徴群によってグループ化されており、どれも同じ動きをし、同じ反応を示す。また従来のシステムでは、各NPC車両が、ほかの車両とぶつからないよう、道路状況の把握を、ローカル環境にてフレーム単位でおこなっていると指摘。過去のフレーム時に処理した情報を役立てることなく、フレームごとに処理している。そのため、計算資源を要するだけでなく、潜在的な危機を探知するのが遅れてしまう場合があるという。「この先の道路が封鎖されている」といった情報に基づいて適切な計画を立てることができないのだ。

こうした複数の要因が絡み、従来的なゲームのシステムでは、現実的なNPCの挙動や交通状況を生み出すことが難しい。それらの課題をクリアしていくのが、今回の特許出願の狙いである(特に、マルチプレイゲームにおけるNPCの挙動が視野に入れられている)。簡単に言えば、NPCの状況判断能力を高めると同時に、経路探索にかかる負荷を低減する技術によって、NPC車両の動きや、ゲーム世界の交通状況をより現実的なものにするという内容だ。

より自然な状況判断の実現へ


従来のシステム下で作られたゲーム世界では、道路やオブジェクトの情報を含むノードが密集していることが多い。そのため、たとえば長距離移動を想定したNPC車両 は、膨大な数のノードを通過していくことになる。車線幅や速度制限などが一定の直線を走っている際には、経路探索として役に立たない、同じ情報を含むノードを何度も処理する。そこで、今回の特許出願技術によって、同系統のノードや分岐を効果的に圧縮・生成し、プロセッサーやメモリの負荷を低減すると説明。計算資源とリソースの節約、そしてはるかに効率的な経路探索につながると伝えている。

新しい経路探索方法では、スタート地点と目的地を定めた上で、経路探索用のノードリストから、運転中にどれくらいの速度を出すべきか、どれくらい車線幅に余裕があるのか、次の曲がり道の角度はどれくらいなのかといった、各種情報を必要な分だけ取得しながら移動可能。フレームごとに一から処理するのではなく、フレームごとに現在の状況を更新していき、望ましい速度や曲がり方へと調整できるようになる。さらに、移動を開始する前に認証工程を挟むことで、行き止まりや、その車両が通過できないルートに直面しないよう、事前にチェックすることも可能だという。また、各NPCは必要な分だけの経路データをサーバーから読み込み、保存するため、メモリの節約にもつながるとのこと。

より計画的な運転を実現するほか、車両・運転手の種類に応じた対応も容易になるという。たとえば、ノードに特定の制限・条件指定用データタグを結びつけることで、交通のフィルタリングをおこなう技術に触れている。データタグで指定された車種の場合は、特定の道を通らないよう指示するといった具合だ。


また当技術の恩恵として、運転手NPCに運転技術や運転スタイルといったパラメーターを設け、運転している車両の種類や、その日の天候によって運転の仕方を変えることが可能になるとも記されている。カーチェイス時には普段と異なる判断を下したり、雨の日に通るのは危険な道を避けたりといった、人間らしい運転にもつなげられる。そうしたNPC個別の挙動だけでなく、道路を走る車両数をより現実的なものにするよう、車両密度の測定・コントロール方法に工夫を加える方法論にも触れられている。

Take-Twoが、何か特定のタイトルを想定して特許を出願したのかどうかはわからない。特許出願したからといって、実際に使用されるとも限らない。ただ、こうした特許出願は、Take-Twoならびに発明者であるRockstar Games開発陣が、未来のゲームにおいて、どのような技術の活用ならびに実現可能性を検討しているのか、垣間見る機会にはなるだろう。

なお昨年11月には、『Grand Theft Auto Online』のトレイラーに『Grand Theft Auto VI』のティザーと思わしき情報が含まれていたとして、注目を集めた(Dexerto)。噂が絶えないシリーズ新作に関する正式な情報発信が待たれる。

【UPDATE 2021/01/19 16:52】
『GTA5』に関する特許との誤読を回避するため、記事タイトルの「『GTA5』パブリッシャー」という記載を「『GTA5』などで知られるTake-Two」へと変更。