『マリオカートWii』レインボーロードで「人間には不可能に近い」とされていた“超ショートカット”に成功するプレイヤー現る。世界記録10秒更新
『マリオカートWii』レインボーロードにて、人力ではほぼ不可能とされたショートカットを成功させたプレイヤーがいるとして、話題を呼んでいる。2008年に発売されながらも、未だに売れ続けている『マリオカートWii』。同作のショートカットをめぐってはさまざまなドラマが発生しており、このたび大きな偉業を成し遂げたプレイヤーがいるようだ。
『マリオカートWii』では、ウルトラショートカットと呼ばれるショートカット群が存在する。これらは、通常のショートカットではなく、仕様の隙間を突いたりバグを利用したりして大規模なタイム短縮を図るもの。YouTubeなどで、ワリオこうざんやキノコキャニオンでの奇妙なショートカット映像を目撃したことのあるユーザーもいるだろう。そのたぐいである。『マリオカートWii』はバイクやジャンプアクションといったダイナミックな要素が導入される一方、奇妙な不具合も残されている作品。ゲーム内容に関するアップデート修正もしづらかった時代ということで、近年の作品では見られない種類のショートカットができるとして人気を誇っている。
そんな『マリオカートWii』のレインボーロードにて研究され続けてきたショートカットがあった。2016年3月にEstaloy62氏によって発見されたこのルートでは、なんとコースの半分をスキップする。驚異的なショートカットであるが、あまりの難易度の高さに人力ではほぼ不可能であるとされてきた。これまではツールを使うことでのみ成功させられる、幻のルートだったわけだ。どんなルートかというと、コースを走り始めたのち、普通なら加速に使うであろう下り坂道にて急停止。来た方向を振り返り、道の端っこに向かい飛び出す。そのまま道の“脇”を滑りながらキノコを使い加速。向かい側にある道へと飛び込むのだ。そのまま着地して差し支えなければ、コースを約半分もスキップしたことになるわけだ。
※ ラップ計測はされていない成功例
見た目こそ変態的ではないものの、極めて厳しい条件がある。スピンドリフトと呼ばれるテクニックを繰り出さなければならないのだ。右にドリフトしながらもスティックを左に戻しつつ、ギリギリのところでジャンプ。空中でキノコを使うことでなんとか向こうへとたどり着く。コース取り、ジャンプのタイミング、向く方向、キノコの使う時、すべてジャストタイミングである時だけ、対岸へと着地できる。また条件はそれだけではない。実は着地場所こそがもっとも重要。『マリオカートWii』には不可視なチェックポイントが仕込まれており、そのチェックポイントのラインをうまく“騙さなければ”逆走扱いを免れない。そのラインを越えてしまうとラップカウントにはならないわけだ。ツールを使ってもなお成功に苦労するという、針の穴を通すような精密なコントロールが要求される関係で、これまで人力で成功させる者はあらわれなかった。
しかしフランス人プレイヤーArthur氏がこのショートカットをついに人力で成功させた。Twitchにて日々このウルトラショートカットを試みていた同氏。1月14日に練習していたところ、なんとこのジャンプを成功させたのだ。まさか成功すると思っていなかったArthur氏は喜びながら混乱。「I did it」と興奮しながら息を荒げつつ3周を完走。その時に飛び出た記録2分14秒677が、そのままワールドレコードになったわけだ。今回のショートカットはグリッチ利用扱いであるが、それでも10秒以上のタイムの更新となっている。
eスポーツ系のインフルエンサーRod “Slasher” Breslau氏がこの出来事を取り上げたことで、Arthur氏の偉業が拡散されていき話題となったわけだ。昨年末、ツールにてキノコ1つでこのショートカットを成功させ(キノコは3つ使うパターンがほとんど)脚光を浴びた、レインボーロード研究家Malleo氏も、Arthur氏の成功に賛辞を贈っている。Arthur氏は、各所で不可能を可能にしたと絶賛されている。このフランス人プレイヤーは、同チャレンジを粘り強く続けており、これまでにもあわや成功というところまで至っていた。偶然の産物ではなく、努力でつかんだ栄光なのだ。
『マリオカートWii』は、すでにニンテンドーWi-Fiコネクションサービスが終了している関係で、ゲーム内世界ランキングにて2分14秒677のタイムが記載されることはない。しかしデータベースサイトMario Kart World Recordsの該当ページには、Arthur氏の努力の結晶が、最下部にて慎ましくもまばゆく輝いている。