米ディズニー・ワールドで廃止されたアトラクションをVR空間で再現。消えゆく遊園地をアーカイブするプロジェクトの遥かなる憧憬


YouTubeチャンネルDefunctlandは、かつてフロリダのディズニー・ワールドに設置されていたアトラクション「海底二万マイル」を体験できるVR作品を公開した。同アトラクションは1971年から1994年の間のみ搭乗できたもの。日本では2001年より東京ディズニーシーで同名のものが設置されている。元祖というべきフロリダ版はすでに廃止となって久しいが、このたびバーチャル空間で追体験することが可能となった。 
 

 
DefunctlandはクリエイターのKevin Perjurer氏が運営するドキュメンタリー系チャンネル。題材として、すでに失われてしまった遊園地やテーマパークのアトラクション、そして子ども向けテレビ番組などを扱っている。ディズニーやユニバーサル・スタジオなど、大手アミューズメントパークの今はなきアトラクションもアーカイブ。当時の映像をふんだんに使い、高いクオリティで編集されたコンテンツが特徴だ。チャンネルは2017年に立ち上がり、現在の登録者数は85万6000人を超える。 

資料映像やインタビューによる遊園地史の保存を目的とするDefunctlandだが、同時に早い時期からある野心を抱いていた。それは、消えゆくアトラクションを仮想空間上に再現し、VRコンテンツとして永久にアーカイブすることだ。このアイデアはすでにチャンネル設立の同年より公開されており、Perjurer氏がBlenderを駆使して作ったというオブジェをチラ見せ。2015年までフロリダのディズニー・ワールドに設置されていた巨大なソーサラーハットが、素朴ながらもバーチャル上に鎮座していた。その後もチャンネルは数々のドキュメンタリー映像を発表していった一方、VR制作についてはとりたてて進捗が見られなかった。多くの人から計画は凍結されたものと思われていたのが、このたび満を持して公開されたわけだ。 
 

 
映像では当時のライドの様子がフル3DCGで再現されており、上下左右のインターフェースを利用することで周囲を見舞わせる。潜水艦を模した乗り物の内部は無骨なリベットと皮張りの椅子が印象的。19世紀ジュール・ヴェルヌの時代を彷彿とさせるディズニーらしい作りこみだ。同時に、当時のアトラクション内のナレーションがフルで収録されていることにも驚かされる。 

窓の外に繰り広げられるめくるめく水中世界のスペクタクルとともに、ひとときの冒険を盛り上げる。天井に海面が見える明るい水深から、徐々に潜水艦は深淵の世界へ。アトランティスや人魚が出現する未知の領域へ沈んでゆく。最後には絶体絶命の危機を切り抜けてクライマックスだ。本作はブラウザのYouTubeで視聴可能なほか、Oculus/Vive/Index/ Oculus Quest(要リンクケーブル)にも対応。ヘッドセットを利用すれば、より臨場感ある再現映像を楽しむ事ができるだろう。 

Defunctlandはウォルト・ディズニー・カンパニーからのライセンスを受けているわけではないが、研究・保存・教育を目的として、連邦法およびフェアユースの原則によって著作物を含んでいるという。今後もVR作品が制作され、消えゆく遊園地のユートピアが築かれるか要注目だ。