『トゥームレイダー』幻のPSP向け作品が発掘され配信中。オリジナル開発チームが手がけた悲劇の初代リメイク

 

かつてPSP向けソフトとして開発されながら、発売がキャンセルされた『Tomb Raider: 10th Anniversary』のアルファ版が発見された。現在、インターネット上でダウンロード・プレイすることができるようになっている。失われたララ・クロフトの歴史が現代に蘇ったようだ。

『Tomb Raider: 10th Anniversary』は2006年、『トゥームレイダー』シリーズ開発元のCore Designが制作していたPSP向けソフトだ。当時、 Core Designは疲弊していた。シリーズ6作目にあたるPlayStation 2向けソフト『トゥームレイダー 美しき逃亡者』の失敗でスタッフは消耗。シリーズ7作目以降の開発を、スクウェア・エニックス・ホールディングス傘下の米Crystal Dynamicsに託すこととなった。いちどララ・クロフトから離れ、PSP向けの新規ゲームなどに取り組むことで再生を図ったCore Design。しかし、パブリッシャーのEidosが再編につきスタジオ閉鎖を検討していることを告げられる。

なんとか閉鎖を退けようと苦闘する中、PSP向けオリジナルゲームを開発したエンジンで制作しようと企画が上がったのが『Tomb Raider: 10th Anniversary』だった。かつて1997年に発売された初代『トゥームレイダース』をリメイクした作品で、10周年の名前を冠する記念碑的として計画された。当初Eidosに提案した際は煮え切らない反応だったものの、まもなくSCi EntertainmentがEidosを買収。こちらでの反応がよかったため、本格的に開発が始まった。

ただしその後、シリーズ7作目『トゥームレイダー レジェンド』を手がけて好評を博したCrystal Dynamicsが、にわかにPSP版のデモを公開。Xbox360を含めたクロスプラットフォーム展開ができる強みなどが評価され、結局同社が『トゥームレイダー アニバーサリー』を手がけることとなる。Core Designは再生のチャンスを逃したまま、『Tomb Raider: 10th Anniversary』も封印された。
 

 
上記の悲劇により幻と化していた作品が、今回再発見されインターネット上にアップロードされたわけだ。プロジェクトを率いたファンのひとりAsh Kaprielov氏によれば、2020年同氏のもとに、元Core Designのスタッフから『Tomb Raider: 10th Anniversary』のファイルが送られてきたという。同ファイルの公開にあたっては、Kaprielov氏らはCrystal Dynamicsに対し複数回問い合わせた。しかし返答を得ることができなかったため、DMCA免除を受けたソフトウェア保存サイトInternet Archiveにてアップロードするに至った。

プレイするには同ページで配布されているパッチのインストールと、マイクロソフトから無料版も配布されているVisual Studioが必要。また操作はPS4もしくはXbox360用コントローラーでのみ可能となっている。実際にゲームを起動してみると、できることは遺跡内の移動や壁の上り下り程度。敵は出現せずアイテムも拾えないため、ステージを観光する程度の体験にとどまる。しかし興味深い点も多く、フォルダ内には「ケイジ」と名付けられたインディ・ジョーンズ風のキャラクターが存在。『Tomb Raider: 10th Anniversary』のキャンセル後、ニコラス・ケイジの「ナショナル・トレジャー」を題材とした作品に作り変えられようとしていた可能性が指摘されている。
 

 
『Tomb Raider: 10th Anniversary』アーカイブはこちらからダウンロードが可能だ。ただし、現在コンソール版などの『トゥームレイダー』フランチャイズの権利がスクウェア・エニックスのもとにある以上、本作が著作権侵害とされる可能性がある点についてお忘れなく。

【UPDATE 2021/01/12 16:03】
最終段落を加筆。