クトゥルフオープンワールド『The Sinking City』Steam版が突如配信開始するも直後に取り下げ。開発元と対立する販売元が配信再開について声明発表


デベロッパーのFrogwaresが手がけた探索型アクション・アドベンチャーゲーム『The Sinking City』。本作をめぐっては、同スタジオと販売元Nacon(旧BigBen Interactive)の間で昨年から裁判沙汰になっており、その過程で各ストアから取り下げられている。そんななか、本日1月6日になってSteamでの配信が突如開始するも、数時間後に販売停止する奇妙な状況が発生。そして、時を同じくしてNaconが声明を発表した。
 

 
『The Sinking City』は、作家ハワード・フィリップス・ラヴクラフトが手がけた「クトゥルフ神話」の世界観をもとにする、探索型アクション・アドベンチャーゲーム。1920年代のアメリカ・マサチューセッツ州に位置する架空の街オークモントを舞台に、主人公の私立探偵チャールズ・リードが、謎の水位上昇による浸水被害や、幻影に取り憑かれた人々による集団狂気事件の調査をおこなう。

本作は、2019年6月にPC(Epic Gamesストア)および海外PS4/Xbox One向けにリリースされ、のちに国内PS4/Nintendo Switch版も発売。しかし2020年7月になって、Nintendo Switch版や一部ストアのPC版を除き、突然配信終了となってしまう。その背景には、開発元Frogwaresと販売元Naconが結んだ本作の販売契約に起因するいざこざがあった。

Frogwares側は、ロイヤリティの支払い拒否などNacon側の契約不履行を主張。開発中も開発費の支払い遅延が常態化し、発売後になってその開発マイルストーンの承認を取り消すなど、不誠実な対応があったとしている。また、本作の権利はFrogwaresが保有するという内容で契約していたにもかかわらず、Naconは自社が保有していると上場時に報告していたという。一方のNaconは、Frogwaresは契約内容を誤って解釈していると主張。両者は裁判で争うこととなり、Frogwaresは混乱を避けるため各ストアに本作の取り下げを要請した(関連記事)。
 

 
当時Frogwaresは、Naconに対して契約解除を通告。その上で、Nacon側が起こした契約解除の無効を確認するための訴訟は裁判所が却下し、法的には契約解除が妥当との判断が下されたと発表していた。しかし、Nacon側はまだ係争中であると報告。そして今回の声明にてNaconは、裁判所はFrogwaresによる契約解除の違法性を認めたとコメント。最終的な決定が下るまで契約は継続されるものとし、また本件に関する訴訟を起こすことを控えるよう、裁判所はFrogwaresに命じたとしている。これに対して、Frogwaresは現時点では反応を示していない。

声明にてNaconは、『The Sinking City』の販売再開にも言及。すでにXbox One版がMicrosoft Storeにてふたたび配信され、これに合わせて国内配信も開始した。PC(Steam)/PS4版については、後日配信するとしている。なお、本稿冒頭でSteam版の配信開始と直後の販売停止について触れたが、ストアページにはFrogwaresが販売元として記載されている。本作の権利の保持と、Naconとの販売契約の解除を主張するFrogwaresが、独自に配信しようと試みたのかもしれない。

こうした状況から察するに、『The Sinking City』の取り扱いについては、現時点ではNacon側が主導権を握っているようだ。もっとも、Nintendo Switch版などもともとFrogwaresが販売を担当しているものも存在する。ただ、たとえばFrogwaresが販売していたOrigin版が最近になって配信停止になっており、またオーイズミ・アミュージオが販売を担当していた国内PS4版もストアから取り下げられたまま。裁判にて最終的な決着を見るまでは、混乱した状況は続きそうだ。