ゲームパブリッシャーRaw Furyが契約書のテンプレートを一般公開。「秘密情報として扱うべきではない」と、開発者との情報格差解消を目指す

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スウェーデンのインディーパブリッシャーRaw Furyは12月23日、同社がゲームデベロッパーと締結しているパブリッシング契約書のテンプレートを一般公開した。そのほかにもデベロッパー向けのリソースとして、同社が用いている財務計画書、企画書、機密保持契約、外注先との業務委託契約、ファクトシートのフォーマットなど、ゲームの開発・販売に関わるさまざまな資料を開示している。パブリッシャーとデベロッパーとの間で結ばれる契約内容や条件が公になるケースは稀であり、非常に珍しい対応だ。


Raw Furyは正式な契約締結を英語でおこなっているが、英語を母国語としないデベロッパーのために契約書の日本語・韓国語・スペイン語・ブラジルポルトガル語・ロシア語・フランス語・クロアチア語バージョンも開示している(※日本語版の翻訳文はやや荒く、あくまでも英語版の契約内容を把握するための参考資料である)。デベロッパーとパブリッシャーの間ではどのような契約が結ばれ、どのような資料の作成が求められるのか。より多くの人が理解を深められるよう配慮されている。

Raw Furyは『Kingdom』シリーズや『Dandara』『Bad North』『Star Renegades』などで知られるインディーパブリッシャー。公式サイトでの説明によると、開示した資料は、Raw Furyのスタッフが「もしも自分たちがデベロッパーの立場だったらほしい情報」だという。ビジネス面の経験が浅いインディーデベロッパーが、ゲーム業界にてどのような契約が交わされているのか学ぶ術は限られている。さまざまなパブリッシャーとコンタクトを取り、契約内容や条件の相場を探っていくのはなかなかに骨が折れる仕事だろう。


そこでRaw Furyは契約書を一般公開し透明性を高めることで、デベロッパーの理解を深め、図らずも不利な契約条件を呑んでしまったり、パブリッシャーに搾取されたりといった過ちを回避できるようにしたいと説明。知識が浅いことをいいことに、わかりにくい契約内容によってデベロッパー側に不利な契約を結ばせようとするパブリッシャーからデベロッパーを守るための第一歩だと伝えている。ゲーム業界におけるパブリッシャーとインディーデベロッパーの情報格差を埋めようとする動きであり、反骨精神漂うRaw Furyらしい施策だ。

Raw Furyとして特にケアしていきたいのは、契約まわりの知識を収集しにくい地域・言語のデベロッパーであるとも伝えている。またRaw Furyと契約交渉に入るデベロッパーには、弁護士費用などの用途を想定した500ドルの予算を付けているという。なお公開している資料はパブリッシャーの業務範囲のすべてを網羅するものではなく、実際にはブランディング、マーケティング、宣伝、販売、QA、プロデュース、開発支援など、どのようなサポートを提供してくれるのか、各パブリッシャーと話し合う必要があるとも補足している。

また同社は「パブリッシング契約は秘密情報として扱うべきではない」と唱え、業界全体としての透明度を高めるべく、ほかのパブリッシャーにも情報開示を呼びかけている。デベロッパーが業界カンファレンスやオンライン上でゲーム開発情報やノウハウを共有しているように、パブリッシャーも自身の知識やノウハウをもっと多くシェアしていくべきとの見解も示している。デベロッパーが情報を集めにくい契約まわりの知識は特にそうだと。


さっそく、米国のWhitethorn DigitalがRaw Furyの動きに賛同。契約書のテンプレートを一般公開した(上のツイート参照)。『Calico』や『Lake』『Evan’s Remains』などの販売を担当しているインディーパブリッシャーだ。これらのパブリッシャーよりも契約条件が悪い場合は追随しづらいと思われるが、はたして契約書類の開示に踏み切るパブリッシャーはどれほど増えていくのだろうか。業界の変化につながるかどうか注目される。

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