空中都市建設&探索シム『Airborne Kingdom』配信開始。雲の間にまの優美なる王国は、水面下でデスマーチ

 

インディースタジオのThe Wandering Bandは12月18日、都市建設シム『Airborne Kingdom』を発売した。対応プラットフォームはPC/Mac(Epic Gamesストア)。現在20%オフのセールが適用されており、定価2580円のところ2064円で入手可能。サウンドトラックつきのDeluxe Editionも同様のディスカウントが適用され、2464円で販売されている。
 

 
『Airborne Kingdom』は、空に浮かぶ不思議な王国を建設する都市建設シミュレーションゲームだ。王国が旅するのは無限に続く砂漠の世界。不安定な空中の足場を徐々に拡大し、家を建て、民が暮らす領土を拡大していこう。建設に必要な木材や水・食料などの資源は、地上の森やオアシスから入手可能。さらに、荒野に散らばるさまざまな王国と交易したり、失われた技術の設計書を手に入れたりすることも可能だ。ロストテクノロジーを収集し、多くの国々と同盟を結び、今ひとたび天にあまねく巨大帝国を造りあげることが究極のゴールである。

世界観も最終目的も広大無辺な本作は、グラフィックの美しさも相まって非常に優美な印象だ。とはいえ、ゲームの始まりは実に慎ましく幕を開ける。はじめて空へと舞い上がった偉大な9人の住民は、残念ながらメイン動力を浮かび上がらせるのに必死だったらしく、家なきままに宙を漂っている。最初にわずかながら木材が手元にあるので、いくつか彼らのための住宅を建ててあげよう。ただし、チュートリアルに少々罠があるので注意。指示どおり全員分の家を作ろうとすれば、先に資材が枯渇する。そこで先述のとおり、地上に降りて森で木を伐採する必要がある……のだが、どうやって? 実は、空中の民が地へ降り立つためには飛行機が必要だ。したがって最初に建設すべきは、レンガで作れる「格納庫。空から降り立つ準備ができたら、地上で追加の木材を調達しよう。
 

 
気を取り直して、最低限の建物と地上に派遣するための設備を備えてゲームを開始しよう。最初はひとところに留まって、森の木を伐採するのに専念することになるはずだ。飛行機をあるだけ飛ばして、待つ。帰ってきたら家を建てる。また人員を飛ばして待つ。家を建てる。これを繰り返す。できることが少ないうちは、プレイヤーは雄大な地平線をただ見つめることに時間を費やすことになるはず。そのうちぼんやりと、遠くにある別の森林や、オアシスや、建物らしき影が目につくかもしれない。やがて森の木々は刈り尽くされる。王国を移動し、別の資源を探すタイミングだ。この瞬間こそが『Airborne Kingdom』の本性が見えるときである。

はじめのうちは、無計画に飛び回ってあちこちの木材や食料を拾い集めるのが楽しい作業。途中の集落では新たな人員を雇用することもできてラッキーだ。すると今度は、またしても家が足りなくなる。気の毒なので増築を重ねてやる……が、なぜか国民の不満は募るばかり。するとうっかりしたことに、片側にばかり建設していたせいで国土が空中で傾いているではないか。建物を作る際には、常に重心と水平を意識することが必要なのだ。慌てて反対側にも適当な建設物を付け加える。と、今度は木材が足りなくなる。
 

 
さすがに辺りの木々は刈り尽くしてしまったので、別の供給源を探さなくてはならない。これまでより少し遠くに見当をつけて舵を取ってみる。航行を続けていると、突如危機が訪れた。動力源である石炭が枯渇してしまったのだ。このままでは墜落まっしぐらである。慌てて周囲を見回しても鉱山の姿は見つからない。しかし、代わりに異質な影が目に入る。地上の王国が荒野の真ん中に屹立しているのだ。これ幸いと駆け込んで、慌てて交易をもちかけて石炭を買い込む。本作のトレードは物々交換でおこなわれるため、余裕がある資源をとにかく売り払うとよい。なんとかエンジン燃料を確保し一安心、かと思うと、またしても国民が不満を訴え出した。何事かと思って見ると、今度は飲料水が足りないではないか。確かに先ほどの交易で多少は売り払った。しかしどうしてこんなに急に枯渇するのか? しまった、さっき人員を増やしたばかりだ。

かくして空の民は、夜通しオアシスを探し求めるはめになる。本作は一見癒やし系のスローライフシムだが、実際は無限に不足する資源をめぐる終わりなき死闘。しかも、ある資源を探して足を伸ばせば、新たな国や遺跡などの発見がある。そこで手に入る設計図やレリックを拝領して、ついでにクエストにも手を出したくなる。そうやって遠出するうちにまた資源がなくなって、探し回って、新たな発見があって……という無限ループに陥るのだ。プレイするうちに、資源がすぐなくなるのは、浮遊王国の推進力が足りないからだと気づくかもしれない。よってプロペラやオールなどのテクノロジーを解放しようと思えば、さらなる人員や資材が必要だ。こうなるともはや抜け出せない。まるで湖畔の白鳥のように、優美な空中楼閣の栄華を築くためのデスマーチ。この中毒性こそが『Airborne Kingdom』の真髄である。
 

 
『Airborne Kingdom』はPC/Mac(Epic Gamesストア)向けに配信中だ。