『Call of Duty』プロ6歳少年の両親が「息子がアカウントBANを受けた」と投稿する。Activisionに批判集まるも、この話には“裏”があった

ある少年プロゲーマーの父親が、「息子が『Call of Duty』でアカウントBANを受けた」と報告。Activitionに批判が集まったが、のちに騒動の真相が語られている。

ある少年プロゲーマーの父親が、話題を集めるために「息子がアカウントBANを受けた」と虚偽の投稿をしていたことがわかった。数ある競技ゲームの中でも『Call of Duty』シリーズはレベルの高いシーンのひとつ。『Call of Duty: Modern Warfare』のプロリーグ「Call of Duty League」の賞金総額約600万ドル。優秀なプレイヤーにはスポンサーがつくことも珍しくない世界だ。大手PCメーカーASUSも、数あるeスポーツチームや選手とパートナーシップを結んでいる。その中でも一際異彩を放つのが、『Call of Duty』選手のひとりRowdyRoganくんだ。年齢はわずか6歳。しかし実力は指折りのもので、今年10月にもわずか8分間で21キルを達成する動画を公開したばかり。父親が運営するYouTubeチャンネルの登録者数は13万4000人、Twitchチャンネルの登録者数は9万8000人におよぶ。別格の才能とスター性を秘めた存在だといえるだろう。
 

 
しかし12月10日、RowdyRoganくんにある“事件”が起きた。ストリーミングにて『Call of Duty』をプレイしていたところ、メニューにて異変が生じる。「アカウントは無期限で停止処分を受けています」との表示が映し出され、ゲームをプレイすることができないのだ。すなわちこれは、RowdyRoganくんが何らかの理由でActivisionからBANを受けたことを意味する。状況を理解すると同時に自身の顔を覆い、静かに父のもとへすがりつくRowdyRoganくん。父親は、何かの間違いだからきっとアカウントは元に戻るよ、と息子をなだめる。やがて少年が部屋を去るとともに、父は怒りとやるせなさを露わにした。ただならぬ様子に気づいた母親が部屋を訪ね、ストリーミングを切るように促したところで配信は終わる。
 

 
“悲劇”の瞬間を目の当たりにしたインターネットは、瞬く間に火の海に包まれた。海外のeスポーツメディアDexertoやエンタメ系メディアPolygonなどがこぞって報道。市井の民も黙っているはずがなく、Twitterでは「#FreeRogan」のハッシュタグが大規模な運動を巻き起こした。批判の矛先は、“BAN処分を下した”とされたActivisionへと向かう。理不尽にも若き『Call of Duty』プレイヤーの夢を絶ったとして、処分撤回を求める声が相次いだ。またユーザー間では、6歳という年齢がゲームの規約に引っかかったのではないかという推測もまことしやかに囁かれる。真相を求める声の高まりにもかかわらず、海外メディアPC Gamerが送った問い合わせに対しActivisionは回答を寄せなかった。

なぜActivisionは何も答えなかったのか。それは「何もしていなかったから」である。代わりに答えを示したのは、他ならぬRowdyRoganくんの両親だった。12月11日、YouTubeのチャンネルにて真相を語った。BANを受けたという報告は、すべて「ある計画」のためにおこなわれていた狂言だったというのだ。
 

  
ことの次第を説明するには、まず「FaZe5チャレンジ」について解説する必要があるだろう。FaZe Clanといえば、いわずと知れた名門eスポーツ団体。『Call of Duty』はもちろんのこと、『フォートナイト』『PUBG』などあらゆる競技シーンでその名を轟かせるプロチームだ。そのFaZe Clanが採用活動の一環として主宰しているのがFaZe5チャレンジである。実況者をはじめ、あらゆるコンテンツクリエイターが応募可能。ゲームスキルやエンターテイメント性などを吟味され、最終5名に晴れて世界的チームへの門戸が開かれる。加えて2万ドル(約206万8060円)の賞金と、数か月間におよぶエナジードリンクブランドG FUELのスポンサーシップ、優勝者には日産のSUVまで贈られるおまけつきだ。RowdyRoganくんはこのコンテストにて、すでにトップ20に上り詰めていた。最終選考まであとわずか。FaZe Clanへの切符を手にするために与えられた次なるお題、それは「5日間以内でバイラル化(=バズり)コンテンツをつくること」だった。
  
母はRowdyRoganくんに尋ねる。「バイラルって何かわかる?」「めちゃ速く広まること」「じゃあ、バイラルになるアイデアは何かある?」。こう問いかける母親に対し、RowdyRoganくんは答えた。「BANされるとか」。

かくして計画が始まった。動画では、件の“悲劇”の裏側が克明に描かれている。涙ながらに部屋を去ったRowdyRoganくんはバックグラウンドのカメラの前で、まさにいたずらっ子らしい満面の笑み。チャット欄が「クレイジー」と化していく様子を眺め、家族一同が笑いに包まれた。心配した祖母の電話には、秘密の計画を打ち明け得意満面のRowdyRoganくん。満を持して父親が前掲のツイートをネットに放つと、濁流のように流れていくタイムラインを一家団欒で眺めるファミリービデオが記録されていた。
 

*0分35秒ごろ、母親とRowdyRoganくんのやりとり。4分15秒ごろより、実際のストリーミング時の様子。
 

動画の最後で、父親と母親のそれぞれが改めて顛末についての総括を語っている。母からは、すべてはまったくの「家族の楽しい出来事だった」とし、何ひとつ深刻なことは起きていないと説明した。同時に、サッカーやゴルフといったスポーツ業界と比較しながら、ゲーム業界は若いプレイヤーを受け入れ育成する土壌がないことを主張。今回のバイラル化を経て、ポジティブな反応がネガティブなものより多かったこと、そして世界がRowdyRoganくんにサポートを示したことが、若いゲーマーに門戸を開く第一歩になるだろうと語った。父であるHarry Drew氏も姿を見せ、一連の騒動がFaZe5チャレンジの一環だったことに対し不快感を抱く人もいるだろうとコメントしている。両者とも、「Activisionは何も悪いことをしておらず」、「同社に対して感謝しており」、「息子はActivisionのゲームを愛している」と付け加えた。

PC GamerはDrew氏に問い合わせを送るも、回答は得られていない。一方、FaZe Clanに問い合わせたところ、CEOのLee Trink氏より回答が返ってきている。今回の選考では、参加者がどのようなトピックを選択し、取り組むかを評価していると説明。あえて幅広いテーマで設定されているのは、参加者がFaZe Clanに参加した際にどのような経験を積むかを象徴しているからだとした。審査プロセスについては定量的なものではないとしつつ、詳細は明かせないとの回答。総じて、今回Drew氏ら一家が実施した計画の是非や、6歳の子どもがチャレンジに参加することの適切さについては、はっきりと述べられていないかたちだ。
 

 
FaZe5チャレンジの結果発表時期については、今のところ明かされていない。 RowdyRoganくんは引き続き動画配信を続けていく見込みだ。

Yuki Kurosawa
Yuki Kurosawa

生存力の低いのらくら雰囲気系ゲーマーです。熾烈なスコアアタックや撃ち合いを競う作品でも、そのキャラが今朝なに食ってきたかが気になります。

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