パブリッシャー/デベロッパーのustwo gamesは12月12日、『Alba: A Wildlife Adventure』を配信開始した。対応プラットフォームはPC(Steam)/Apple Arcadeで、追ってコンソールでの発売も検討しているという。Steamでは12月19日までセールを実施しており、定価1730円のところ1384円で入手することが可能だ。本作は日本語字幕とインターフェースに対応している。
『Alba: A Wildlife Adventure』は、穏やかな島を探索するアドベンチャーゲームだ。主人公アルバは祖父母の家を訪れるために、地中海の自然豊かな島を訪れる。しかし友人のイネスと過ごすうちに、島の動物たちが危機に瀕していることに気づくのだ。自分に何かできることはないかと模索を始め、アルバは島で動物たちを救うために動き出す。本作の主な目的は、美しい島を自由に探索することだ。動物とふれあうもよし、写真を撮って図鑑に集めるもよし。そして危険な状態にある動物たちを助け、島の住人をボランティアに誘って活動を拡げることもできる。
本作を手がけるのは『Monument Valley』シリーズを贈ったustwo games。海外メディアGamesRadar+はスタジオのアートディレクターDavid Fernández Huerta氏に取材を実施している。同氏によれば、本作ははじめustwo gamesのプログラマー/デザイナー/サウンドアーティストを務めるKirsty Keatch氏との共同プロジェクトから始まったという。Fernández Huerta氏・ Keatch氏のアイデアは、子どものころの夏の記憶を引き出すような環境で自然撮影をする散策型の作品、というものだった。Keatch氏はスコットランド出身だがスペインのイビサ島育ち、またFernández Huerta氏もスペインで育ったということで、地中海が舞台となったのは両者の幼少期の経験に深く根ざしているようだ。
やがて作品は、「島や自然を保護する」という目的に主題をおいた現在のかたちに姿を変えていった。とはいえオリジナルのコンセプトは生き続けており、チームメンバーの経験や地中海への愛着が舞台となるPin del Marを形づくっている。同時に、Fernández Huerta氏やKeatch氏が過ごした子ども時代の夏の記憶がアルバの冒険に色濃く反映されているようだ。Fernández Huerta氏によれば、アルバのおじいさん・おばあさんは同氏自身の祖父母がモデル。メインキャラクターの家も、彼らが田舎にもっていた住宅をモデルにしているとのこと。本作に登場するキャラクターは可能な限り、現実に存在した人物にもとづいているとのことだ。
主人公アルバが「小さな少女」に設定された理由のひとつは、先述のとおり「子どものころの夏」を表現するため。もう一方の理由としては、スタジオの不文律「女性にリードさせる」にのっとり、よりインクルーシブなデザインにする狙いもあったそうだ。Fernández Huerta氏によれば、アルバの父親はインド人、母親はスペイン人だという。どんなキャラクターになってほしいかを思い浮かべつつ、意味のある設定でディティールを描くことにより、アルバをより現実味のある人物として造形していったようだ。キャラクターに興味をもってもらい、チームが作品で表現したいことに対し”センス・オブ・ワンダー”を感じてもらえるようなデザインを目指しているという。そうした狙いにあたり、子どもを使うことは非常に効果的だとFernández Huerta氏は語る。同氏は自身も5歳の子どもをもっており、小さな子が日常的なものにも不思議さや感動を覚える姿に影響を受けているようだ。
Fernández Huerta氏によれば、アルバが島を救おうとするのは、コミュニティーの一因になりたいという動機から生じているという。地元民がスペイン語を話すのに対し、アルバはイギリス育ち。言葉が不自由なため、会話の選択肢は「首を振る」「肯定/否定」のかたちでしか表れないのだ。こうした設定もFernández Huerta氏自身の思索から生じている。自身の子どもが、親とは異なる国で育ったとき、どのように適応していくのか。アイデンティティはスペインになるのか、イギリスになるのか。子どもにとっては早すぎる問いかけだが、この問題意識が『Alba: A Wildlife Adventure』制作にあたり強いインスパイアを与えたようだ。島を救うことで、はじめて島の一員となった実感を得られる。利他的な行動に見えるアルバの行動だが、その背景には自身のための動機もあるというわけだ。
自分の欲求にもとづいたアルバの活動だが、結果的に彼女はコミュニティー全体の結びつきを強めていく。クエストを進めるうちに仲間がふえ、ボランティアに参加してくれる人も増える。はじめは「橋を直す」といった小さな行動だったのが、やがて島全体を救う大きな影響へと変化していくのだ。Fernández Huerta氏が発信したかったのは、誰しも行動を起こせるという肯定的なメッセージ。ひとりですべてを成し遂げようとするのではなく、小さなことから始めてみること。それを見た周りの人も何か行動を起こすことで、大きな目標を達成する連鎖が生まれる。こうしたポジティブなテーマが『Alba: A Wildlife Adventure』の根幹にある。このほか、ゲームの大きな要素となっている写真撮影に関してもFernández Huerta氏自身の趣味が大きいところなどが語られた。
『Alba: A Wildlife Adventure』は自然保護団体「Ecologi」とパートナーシップを結んでおり、ソフトが1本売れるたびに木を1本植える活動をおこなっている。目標は100万本の木を植樹することだそうだ。Fernández Huerta氏は本作について、『どうぶつの森』がロックダウン中に果たしたような癒やしの役割を担えることを願っていると語った。
『Alba: A Wildlife Adventure』はPC(Steam)/Apple Arcadeにて配信中だ。