『Apex Legends』運営陣の多くはユーザーとの直接交流を避けている。スタッフが語った、インターネットの“毒気”に対する苦悩
『Apex Legends』開発に携わるスタッフの多くは、ネット上の攻撃的なユーザーのためにオンライン上で直接やりとりすることを避けているという。ゲームデザイナーのDaniel Zenon Klein氏が海外掲示板Redditで語った。
Reddit上で開発チームとユーザーが直接コミュニケーションをとる機会の多い『Apex Legends』だが、時に緊張関係に陥ることも多い。シーズン7のバトルパス改変に対する賛否にはじまり、最近はホロデーバッシュ限定スキンの販売方法に対して非難が集中している(関連記事)。Klein氏も連日多くのスレッドで(時には無関係な文脈でも)、問い合わせの対応に追われる状況が続いていた。
同氏は基本的にレジェンドの調整に携わるリードデザイナーであり、ストア関連については管轄外。そのため回答は差し控える旨のレスを重ねていたが、あるユーザーからは「価格設定・バンドル・ひどい状況のストアについて話のできる相手を出せ」と強く迫られることに。対してKlein氏は、「そうした決定に携わる人間の多くは、Redditでの扱いを受けて直接コメントすることを差し控えている」とコメント。長文で、多くのスタッフがインターネットで直面する厳しい状況について綴っている。
Klein氏は以前のスタジオで信憑性の高い殺害予告を受け取り、それにともないスタジオツアーがすべてキャンセルになった経験を告白。また同氏の配偶者はまったくゲームとは無関係の職に就いているが、ほぼ毎日雇用主のもとに「(Klein氏の配偶者を)解雇しろ」「小児性愛者だ」との誹謗中傷メールが届いているという。Klein氏の義理の両親はネット上で「晒し」や「swatting(存在しない事件に関する虚偽の通報によって、警察に部隊を送り込ませる行為)未遂」などの被害を受けているとのこと。
運営側の人間は攻撃性の強いユーザーからの被害を受ける可能性が高く、精神的な負担を受ける可能性が高い。Klein氏はすべてのスタッフがソーシャルメディアで直接コミュニケーションをとる義務を課されるべきではないと考えているという。自身が頻繁にReddit等に露出していることについては、14年間の経験から「トレードオフ」に対する慣れを獲得したからだと説明。自身の携わる作品について直接プレイヤーと話すことは、ネガティブな面を跳ね除けるのに十分な活力と幸福を与えてくれると語った。どうしても耐えがたいときは、ゲーム関連のSNSから離れるなどの自衛手段を講じているという。
ただし、もっと若い開発者の場合こうした対応は難しいだろうとKlein氏は見ている。ネット上の反応は時にきわめて非人道的であり、スタッフはそうした負担を強いられるために給与を受け取っているわけではないと主張。チームとしても、スタッフがオンラインで被りうるダメージをケアする体制が整っておらず、すべてのスタッフがKlein氏のように積極的に露出する必要はないとの考えを示した。総括として同氏は、Reddit上の多くのユーザーは親切であるとしつつも、上述の理由で必ずしもユーザーが求める管轄のスタッフが表舞台に出て来られない事情をまとめている。
Klein氏の説明に対し、ユーザーの反応は賛否両論。スタッフの事情に理解を示す向きや、あくまで責任逃れに過ぎないと追及する声までさまざまだ。『Apex Legends』をはじめ、近年のタイトルはRedditやTwitterを通じて利用者と直接コミュニケーションする機会がきわめて多い。対話がもたらすポジティブな側面もある一方、オンラインゆえの攻撃性から自衛を余儀なくされる開発者も少なくないようだ。SNS時代の運営チームならではの苦悩が垣間見えた一幕となった。