『モンスターハンター:ワールド』Steam版にて“レビュー爆撃”が発生。中国で先行公開された映画「モンスターハンター」のセリフが原因か

Steam版『モンスターハンター:ワールド』のストアページにおいて、いわゆるレビュー爆撃が12月4日から発生している。公開開始された映画「モンスターハンター」が原因にあるようだ。

Steam版『モンスターハンター:ワールド』のストアページにおいて、いわゆるレビュー爆撃が12月4日から発生している。原因となったのは本作ではなく、同日中国にて公開開始された映画「モンスターハンター」にあるようだ。

映画「モンスターハンター」は、ポール・W・S・アンダーソン監督、ミラ・ジョヴォヴィッチ主演という、映画「バイオハザード」シリーズでのコンビによって製作。ミラ・ジョヴォヴィッチ演じるアルテミス率いるエリート部隊は、砂漠地帯を偵察中に超巨大な砂嵐に遭遇し、モンスターが存在する世界に迷い込んでしまうという物語が描かれる。モンスターには近代兵器が通用せず、アルテミスらはこの地に生きるハンターから戦い方を学ぶ。作中では、ゲーム版に登場したモンスターや武器種が登場するという。

本作はもともと9月4日に公開予定だったが、新型コロナウイルスの影響で延期。その後アメリカでは12月25日、日本では2021年3月26日の公開が決定しており、これに先駆けて12月4日から中国で公開開始した。しかし、映画冒頭のあるシーンでのセリフが、中国国内で問題視されることとなった。調査会社Niko PartnersのシニアアナリストDaniel Ahmad氏が伝えている。

問題のシーンは、砂漠を偵察中とみられるアルテミスの部隊メンバーらの会話だ。中国系アメリカ人ラッパーのMC Jin演じる隊員が「Look at my knees(俺の膝を見ろよ)」と運転手に話しかけ、「What kind of knees are these?(どんな膝なんだ?)」と問われると、「Chinese」と返している。knees(ニーズ・膝)とチャイ”ニーズ”をかけた、他愛ない言葉遊びである。

ただこの会話は、かつて英語圏にて子供が遊び歌としていた「Chinese, Japanese, dirty knees. Look at these」を想起すると指摘されることに。この遊び歌においては、中国・日本人を“dirty knees(汚い膝)”と並べているだけでなく、目尻をつり上げたり小さな胸を表現するなど、中国・日本人の一般的な特徴を嘲笑するジェスチャーを伴うこともあり、現在では人種差別的であるとの認識が定着している。

また、当該セリフでの「Chinese」には「有黄金」と字幕がつけられている。これは、軽々しくひざまづくべきでないとする中国の言葉「男儿膝下有黄金」に由来するとみられ、汚れた膝(dirty knees)と関連づけて受け止められる結果に。人種差別的な遊び歌を意図的に使ったセリフだったのではないかと、中国人を大いに刺激することとなった。当初は中国国内でもこの問題が報じられていたが、現在はそうした記事は姿を消しているようである。


このセリフの存在が発覚したのち、Steam版『モンスターハンター:ワールド』には不評レビューが大量に投稿。内容を見ると中国語や英語で例のセリフについて指摘するレビューがほとんどである。これに対抗するかのような内容の好評レビューも増加しているが、不評が大きく上回っている状況。レビュー欄には「Steam担当者が最近のユーザーレビューアクティビティを審査中です」との表記があり、ゲームの評価とは関係のないレビュー爆撃がおこなわれているとの疑いからValveが調査しているようだ。

同じ「モンスターハンター」IPではある、映画とは別のゲーム作品に怒りの矛先が向けられたかたちである。もっとも、『モンスターハンター:ワールド』は映画とのコラボを実施中で、アルテミスの衣装がゲーム内に登場している。関連作とみなされ攻撃された可能性はあるだろう。あるいは、コラボをしていなかったとしても、同じシリーズの作品というだけでターゲットにされていたかもしれない。


中国で先行公開された映画「モンスターハンター」について、カプコンは香港を拠点にするCapcom Asiaを通じて12月4日に声明を発表(Weibo)。この映画は別の会社が製作したものではあるが、ファンのフィードバックを集めた上で、関係する会社に意見を伝えたという。同社としては、高品質なゲームを制作しファンに届けていく姿勢を貫くと表明している。

また中国国内では、映画館筋の情報として、映画「モンスターハンター」の上映が12月5日に中止になり、チケット購入者への返金手続きが進められていると報じられている(网易游戏)。同国では規制当局による検閲を経て上映されていたはずだが、問題のセリフのシーンを修正して再上映する計画だそうだ。このセリフについて脚本家の真意は依然不明ではあるものの、関連が指摘された遊び歌が人種差別的だとする認識は中国人以外も同じだろう。今後他国で公開される際にも、修正されることとなるのか注目されそうだ。

映画「モンスターハンター」は、日本では2021年3月26日に公開予定だ。

Taijiro Yamanaka
Taijiro Yamanaka

国内外のゲームニュースを好物としています。購入するゲームとプレイできる時間のバランス感覚が悪く、積みゲーを崩しつつさらに積んでいく日々。

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