BioWareスタジオ統括者と『Dragon Age』幹部が退社。『Anthem』にも関わった社歴20年のCasey Hudson氏とMark Darrah氏

BioWareスタジオ統括者と『Dragon Age』幹部が退社。『Anthem』にも関わった社歴20年のCasey Hudson氏とMark Darrah氏。Mark Darrah氏は『Dragon Age』シリーズのエグゼクティブ・プロデューサーとして知られる人物であった。

BioWareは12月3日、同社の全スタジオを統括するゼネラル・マネージャーのCasey Hudson氏と、『Dragon Age』シリーズのエグゼクティブ・プロデューサーとして知られるMark Darrah氏の退社を発表した。ともに90年代に入社し、BioWareタイトル開発の主要人物として長年活躍してきた古株だ。公式ブログにて、Hudson氏Darrah氏がそれぞれ別れを告げている。

Casey Hudson氏は1998年入社後、『Mass Effect』3部作のディレクターを務めた人物。開発難航期に突入する前の、コンセプト段階の『Anthem』プロジェクトも率いていた。2014年に一度BioWareを退社し、マイクロソフトに移籍。2017年BioWareに復帰し、全スタジオを統括するゼネラル・マネージャーとして同社を率いてきた。2019年、海外メディアのKotakuが『Anthem』の開発難航に関する詳細レポートを公開。BioWareの労働環境面での問題が指摘された際には、そうした社内の問題を解決すべくリーダー陣の立て直しを図ることが、BioWare復帰の理由のひとつであったと語っていた(関連記事)。

Casey Hudson氏。Image Credit: BioWare/EA


Hudson氏は別れを告げるブログにて、長年勤めてきたスタジオを離れ、新たな世代のリーダー陣に道を譲ると伝えた。難しい決断であったが、BioWareにとってもHudson氏自身にとっても、変化を起こすのに適した時期であるとコメント。『Star Wars: The Old Republic』と『Anthem』を応援し続けてくれるコミュニティに感謝の意を告げるとともに、新作の開発が進行している『Dragon Age』シリーズ、新作の開発が示唆された『Mass Effect』シリーズ、そしてさらなる未発表プロジェクトと、BioWareには明るい未来が待っていると述べた。

2020年は多くの人々にとって、仕事や人生について考え直す年になったと告げ、Hudson氏としても、まだ創作意欲がみなぎっているとコメント。よりパーソナルな仕事を通じ、創作にかける情熱を再発見していきたいと伝えている。それが具体的に何になるのかは、まだ決まっていないという。新たなゼネラル・マネージャーとしては、暫定措置として2020年BioWareに入社した開発運営部門シニア・ディレクターのGary McKay氏が就任する。親会社Electronic Artsのチーフ・スタジオ・オフィサーであるLaura Miele氏もBioWareブログに寄稿しており、次のゼネラル・マネージャー候補探しを進めていると説明している。


同じくBioWareを退社するMark Darrah氏は、長年BioWare作品のエグゼクティブ・プロデューサーやプロジェクト・ディレクターとしてリーダー職に就いてきた人物。入社自体は1997年、社歴23年の大ベテランである。『Dragon Age』シリーズを率いてきた実績があり、その手腕は高く評価されている。一時は、開発難航が続いていた『Anthem』の発売を間に合わせるべく、6年半という長期開発期間のうち、最後の1年4か月にかけて『Anthem』のエグゼクティブ・プロデューサーを担当。それまでの『Anthem』プロジェクトリーダー陣に不足していた、決断を下す能力に長けていたと、先述したKotakuレポートにて従業員評が記されている(関連記事)。

『Dragon Age』シリーズの今後に関しては、Darrah氏がいなくとも栄えていけるような充実したチームができあがっていると記した。BioWareはキャラクターを通じて感情を揺さぶる物語を描くことを強みとしており、その軸から逸れてしまうこともあったが、『Dragon Age』の新作は本来のBioWareらしい作品になると自信を覗かせている。


BioWareが現在開発している『Dragon Age』新作のエグゼクティブ・プロデューサーは、今後Christian Dailey氏が務めることに。『Anthem』のライブサービス・フランチャイズ開発ディレクターを担当したのち、2020年からBioWare Austinのスタジオ・ディレクターに就任した人物だ。現在再開発中である『Anthem』の近状をブログで発信していることでも知られる(関連記事)。なお『Dragon Age』新作のクリエイティブ・ディレクターは、引き続きMatthew Goldman氏が担当する。『Dragon Age: Origins』からシリーズに関わってきた人物だ。

BioWareからは、2019年に『Anthem』のリード・プロデューサーであったBen Irving氏(現Crystal Dynamics)、ライブサービス責任者であったChad Robertson氏(現Wizard of the Coast)が退社(関連記事)。さらに今回のCasey Hudson氏とMark Darrah氏と、BioWareに長年関わってきた主要人物が複数去っている。『Mass Effect』『Dragon Age』および再開発中の『Anthem』は、新世代のリーダー陣が率いる作品となっていくのだろう。

Ryuki Ishii
Ryuki Ishii

元・日本版AUTOMATON編集者、英語版AUTOMATON(AUTOMATON WEST)責任者(~2023年5月まで)

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