任天堂、『あつまれ どうぶつの森』を利用する企業・団体向けにガイドラインを設ける。政治主張とマーケ行為はご法度


任天堂は11月19日、『あつまれ どうぶつの森』を利用する企業や団体向けガイドラインを発表した。同作においては、島クリエイターやマイデザインによって、島や服などを他のユーザーに手軽にシェアすることが可能。この機能を用いて、さまざまな企業や団体がPRに勤しんでいる。こうした企業や団体に向けて、声明を出したわけだ。

任天堂は、原則として企業や団体が『あつまれ どうぶつの森』を利用することは認めている。具体的には以下の行為を認可しているという:

・ご自身が作成したマイデザインやご自身の夢番地を、他のお客様に提供すること。
・他のお客様をご自身の島に招待すること。
・上記の目的のために、本ソフトのスクリーンショットや映像を、適切なウェブサイトや共有サイトにアップロードすること。

一方で、以下の行為自体は控えてほしいとしている:

・お子様にふさわしくない表現など、全年齢向けでない表現を行うこと。
・他のお客様の迷惑になることや、暴力的、差別的など他のお客様を傷つける恐れのある表現、政治的な主張を含む表現を行うこと。
・本ソフトの内容を誤解させる行為や、事実と異なる内容が含まれる行為(事実に反して任天堂から個別の許諾を取得したと表明することなどを含む)。
・他のお客様をゲーム外の行動に誘導するなどの本ソフトを利用したマーケティング行為(商品購入サイトへの誘導、クーポンの配布、景品の提供、懸賞の実施、SNSアカウントのフォローなどの要求、他のお客様の情報の取得、その他勧誘行為などを含む)。
・本ソフトに関連して金銭的な利益を得ること(有償でのマイデザインの提供や、広告掲載による収益の受領などを含む)。

特筆すべきは、政治主張に言及している点。アメリカ民主党のジョー・バイデン氏陣営が、マイデザインなどを通じて選挙活動をしていたことは記憶に新しい。また日本の自由民主党元幹事長の石破茂氏が総裁選に向けて宣伝活動を開始。その後キャンペーンを撤回したという背景があった。今回改めて、任天堂は政治主張について“控えてほしい”としていることを明らかにした。なお、ニンテンドーアカウントの利用規約はアメリカと日本で異なっている。アメリカでは政治主張は禁じられておらず、一方で日本は禁止されている。しかし今回の発表においては英語でも声明が出されており、『あつまれ どうぶつの森』においては、日本語・英語ともに政治主張がご法度になっているようだ。

また、同ソフトを利用したマーケティング行為も控えてほしいとされており、今後『あつまれ どうぶつの森』を利用しPRをおこなおうとしていた企業は、展開手法に慎重になる必要がありそうだ。なお企業側がマイデザイン配布し、最終的には公式コラボを果たした、gelato piqueのようなケースもある。


そのほか、「事実と異なる内容が含まれる行為(事実に反して任天堂から個別の許諾を取得したと表明することなどを含む)」も、控えてほしいとしている。「トレジャーアイランド」の一件が事例としてあげられそうだ。先月10月、コンサベーション・インターナショナルと広告代理店によるPR事務局は、『あつまれ どうぶつの森』にて、生物の多様性をテーマにした水上都市「トレジャーアイランド」をオープンしたと発表。一種のキャンペーンである。

しかしコンサベーション・インターナショナル・ジャパンは、そうしたキャンペーンに協力しておらず、著作物の内容やデザインを模した文面・意匠、当社公式ホームページへのリンクなどが無断・無許可で掲載されたと主張 。PR事務局とコンサベーション・インターナショナル・ジャパンの主張がはっきり食い違うかたちとなった。その中でPR事務局は、「トレジャーアイランド」制作においては任天堂の監修を受けていると主張していたが、任天堂はその主張を否定。任天堂が団体同士のトラブルに巻き込まれるような事件が発生していた(Game*Spark)。そうした、事実と異なる内容が含まれる行為についても、控えるよう呼びかけた形だ。

なお任天堂は、こうしたガイドラインは今後更新していくともコメントしているほか、ガイドラインにて許可されていること以外でゲームを利用する場合は、別途、任天堂からの事前の許諾を得る必要があるとしている。そのほか、ガイドラインで明示的に記されている内容以外の部分では、Nintendo Switch利用規約やニンテンドーアカウント利用規約などが適用されるとのこと。企業や団体利用が増えるにあたり、トラブルも増加していく。大きな火種が生まれる前に、先手をうった形だろう。『あつまれ どうぶつの森』を利用する企業や団体は、こうしたルールをしっかりと守る必要がありそうだ。