『あつまれ どうぶつの森』アフロやドレッドヘア追加で、アフリカン・アメリカン系ユーザーに喜びもたらす。新たな髪型でより自分らしく


任天堂が11月19日に配信を予定している『あつまれ どうぶつの森』冬の無料アップデートVer.1.6.0について、「ある追加要素」が一部ユーザーに歓喜をもたらしているようだ。今月末に開催予定のサンクスギビングデーや、いよいよ12月に迫るクリスマスイブなど、多くの季節イベントが目白押しの本アップデート。シーズン要素が並ぶ一方で、マニア向けの追加要素もユーザーの注意を惹いている。収納がマックス1600から2400まで増設可能となったほか、たぬきマイレージの追加商品となった「ナウい!リアクションずかん」は自撮りガチ勢垂涎の一品。これら新規要素と並んで話題となっているのが、新たに6種類の髪型を選べる「もっと!ヘアアレンジ×6」だ。
 

*1:20〜参照。

 
新規に収録される髪型は、これまでとはやや趣が異なるのが特徴だ。ドレッドヘアやアフロスタイル、モフモフのカーリーヘアなど、どれも個性抜群。バリエーションに新たな華を添えるラインナップとなっている。特に国内ユーザーをはじめアジア圏のプレイヤーにとっては街中で見慣れない髪型も多く、「変わり種」のヘアスタイルとして捉えられたかもしれない。“ちょっと尖ったスタイル”として新ヘアスタイルが喜ばれる一方、異なる文脈で追加コンテンツを歓迎する人々もいるようだ。
 

https://twitter.com/momiji_atumori/status/1328843742883704832

 
それはアフリカン・アメリカン系ユーザーをはじめとする、もともとカーリーな髪の毛を有している人々だ。海外掲示板Redditでは、あるユーザーが今回のアップデートにおける巻き毛系ヘアスタイルの追加に対し大変な喜びを示す書き込みを投稿した。同ユーザーは生まれつき、フワフワのカーリーヘアの持ち主だという。『あつまれ どうぶつの森』が文化的にインクルーシブな点をもともと評価していたが、今回の追加要素には驚かされると同時に非常な喜びを感じているようだ。このほかにも、ダークカラーの肌にドレッドヘアを合わせることできわめて自然なアフリカン・アメリカン系の外見を再現できることに称賛を送る声がある。
 

 

 

https://twitter.com/PechaGummy/status/1328804103766597634

 
従来のヘアスタイルにおける巻き毛ヘアといえば、軽くウェーブのかかったボブスタイルや短髪のマニッシュなドレッドヘアなど。カーリーヘアを望むユーザーにとっては、やや物足りないラインナップだったともいえるだろう。もともと『どうぶつの森』シリーズに対し、縮毛系のヘアスタイル追加を要望する声は大きかった。1年前のReddit投稿でも、「原作に巻き毛のヘアスタイルがなかったのでオリジナルで考えてみた」とのファンアートが確認できる。こちらのレスにおいても「もっと黒人系のヘアスタイルを追加してくれたらいいのに」との要望が散見された。
 

 
『あつまれ どうぶつの森』においては肌色をいつでも自由に変更できるため、白色・黒色・黄色系いずれの人種にも適応したキャラクターメイクをすることが可能だ。今回の髪型アップデートにより、より多くの文化圏におけるユーザーが自身に近づけたカスタマイズをすることができるようになる。もちろん日本の直毛プレイヤーが、ゲームの中でフワッフワのアフロヘアを楽しむのも乙であろう。

『あつまれ どうぶつの森』はもともと多様性というトピックをカバーしてきたコンテンツだった。たとえばジェンダーについては男女問わずすべての衣装を着用でき、着用時も怪しがられない。性別の設定もいつでも可能。流動的な性自認に対応しており、本作を遊んだことで自身がトランスジェンダーであると自覚したユーザーの報告も話題となった(関連記事)。また Washington Postのインタビューにて本作ディレクターの京極あや氏は、開発チーム全体で「社会が多くの人々の異なるアイデンティティを尊重する方にシフトしている」という価値観を共有しているとコメント。キャラクターカスタマイズの自由度がジェンダー関連に限らないことを示している。たとえばアイテム「くるまイス」が導入された件は、ハンディキャップのある人の存在をゲーム内に受容した例として称賛を受けている。
 

 
ここまで「多様性」との言葉を使ってきたが、『あつまれ どうぶつの森』の試みをより正確に表すなら「レプリゼンテーション(representation)」という単語が正しいかもしれない。2017年に俳優のパキスタン系イギリス人俳優 Riz Ahmed氏がスピーチで持ち出した概念だ。ここでいうレプリゼンテーションとは日本語では「代表」とも訳すことができる。たとえばゲーム内に、単一のジェンダーや人種、非障がい者しか登場しなかったとしよう。そのとき、ゲーム内で表現されなかった人は「自身は社会から認識されていない」と感じうる。たとえフィクションであれ、それを生み出しているのは現実の人間だ。現実の人間が創作物を生み出す際にこぼれ落ちてしまった人々がいたとしたら、彼らは社会的に「いないものとして」認識されているのだといえる。

現実ですべての人々を社会の一員として認めようとするなら、フィクションの中に彼らの姿を含むことは非常に重要な役割を果たす。『あつまれ どうぶつの森』に登場するアフリカン・アメリカンやジェンダーマイノリティ、ハンディキャップを背負ったキャラクターたちは、決してカスタマイズのオプションの多さにとどまるものではない。現実に彼らが存在することが担保し、「代表者」としてゲームの中に存在しているのだ。『あつまれ どうぶつの森』のキャラクターメイクに嬉しさを示す人は、単に自分そっくりのキャラを作れるだけでなく、「自分という存在が認められている」ことへの喜びを感じているのではないだろうか。
 

*アフロヘア追加で現実の自分と同じ髪型ができるようになったことを喜び、ゲーム再開を報告するツイート。

 
『あつまれ どうぶつの森』冬の無料アップデートVer.1.6.0は11月19日に配信予定だ。