『サイバーパンク2077』の世界では、キアヌ・リーブスが演じるジョニー・シルヴァーハンドとは別に、キアヌ・リーブスも存在した。驚きの設定
CD PROJEKT REDは11月14日、『サイバーパンク2077』で使用される楽曲「No Save Point」のミュージックビデオを公開した。Killer MikeとEI-Pが組んだヒップホップデュオRun The Jewelsが手がけた曲だ。ゲーム内で登場する架空アーティスト「Yankee and the Brave」が作った楽曲という設定であり、歌詞・映像ともにゲームの世界観に沿った内容になっている。
民間企業による都市支配、犯罪行為の蔓延などに触れる「No Save Point」。そんな中、Killer Mikeパートの「Keanu Reeves, cyber arm under my sleeve」という歌詞が注目を集めていた。なぜ現実世界の俳優であるキアヌ・リーブスの名が、フィクション世界のアーティストであるYankee and the Braveの楽曲内で発せられるのか、という疑問だ。これが作中アーティストの曲(という設定)だとすると、『サイバーパンク2077』の世界の住民は、キアヌ・リーブスという人物を知っていることになる。
この疑問に、CD PROJEKT REDのシニア・クエストデザイナーであるPatrick K. Mills氏が回答(Eurogamer)。キアヌ・リーブスという人物は、90年代(96年のアメリカ崩壊期)に活動していた、あまり名の知られていない俳優として『サイバーパンク2077』の世界に存在したという。現実世界のキアヌ・リーブスは引く手数多の大人気俳優だが、『サイバーパンク2077』の世界では、そこまで名を馳せていなかったようだ。
現実世界の俳優キアヌ・リーブスは、『サイバーパンク2077』にてジョニー・シルヴァーハンド役を演じている。シルヴァーハンドは、2000年代に活動していた伝説的ロックバンド「Samurai」のリードボーカル。原作であるテーブルトークRPG「サイバーパンク2.0.2.0.」に登場しており、『サイバーパンク2077』ではデジタル・ゴーストとして主人公V(ヴィー)に語りかけてくる。主人公の次に出番が多い、コンパニオン・キャラクターとしての役どころである。
キアヌ・リーブスは、ジョニー・シルヴァーハンドというフィクション上のキャラクターを演じている。そしてそのフィクション世界には、キアヌ・リーブス自身も存在している。ここが混乱のもとになっているのだが、先述したMills氏によると、キアヌ・リーブスとジョニー・シルヴァーハンドは顔が激似。活動期間が被っていたため、キアヌ・リーブスはよくシルヴァーハンドと間違われたという。2020年にシルヴァーハンドが失踪してからは、その傾向が顕著になっていったとのこと。設定上さほど有名ではない俳優ながらも、作中曲で言及されるのは、伝説的人物であるシルヴァーハンドとそっくりだからなのだろう。
Mills氏の発言の信憑性を疑う声がある中、「サイバーパンク2.0.2.0.」を出版するR. Talsorian Gamesの公式Twitterアカウントが、Mills氏のツイートに反応。Mills氏は作品の設定について原作者Mike Pondsmith氏と直接やりとりする立場にあることから、正史である可能性は高いと援護している。
*ジョニー・シルヴァーハンド率いるSamuraiが残した楽曲「Black Dog」(スウェーデンのバンドRefused作)
現実世界のキアヌ・リーブスと、フィクション上のキャラクターであるシルヴァーハンドの活動期間は確かに似ており、なかなか面白い設定である。同シリーズの世界線が、現実世界と大きくズレていくのは、先述した西欧圏の崩壊、90年代半ばから。一方、キアヌ・リーブスのキャリアは長く、80年代から活動していた。ゆえに作品設定との統合性を保てるということなのだろう。
ただ、「Keanu Reeves, cyber arm under my sleeve」という歌詞は、キアヌ・リーブス演じるシルヴァーハンドの義手(サイバーアーム)を踏まえた韻文と思われ、後付け設定と感じられる部分があることは否めない。そもそもYankee and the Braveという架空アーティスト名義の曲ながら、イントロの「R T mother**cking J, RTJ」(RTJ = Run The Jewels)やブリッジ部分の「Run The Jewels」など、現実世界でのグループ名が連呼されている。これをどう説明するのかと問われたMills氏は、Run the jewelsは強盗のスラングであり、Yankee and the Braveが頻用するキャッチフレーズであると回答している。
キアヌ・リーブス演じるジョニー・シルヴァーハンドだけでなく、キアヌ・リーブスも存在した。そんなびっくり設定が飛び出した『サイバーパンク2077』は、12月10日発売予定だ。