Nintendo Switch/PC(Steam)向けに配信されていた2Dアクション『助けてタコさん(Save me Mr Tako)』が、ニンテンドーeショップ・Steam双方で入手不可能の状態だ。同作のNintendo Switch版はPikiiから国内販売されていたが、同じくストアページは消滅している。Twitterでは、パブリッシャーNicalisおよび開発者Christophe Galati氏のパートナーシップが終了したことが伝えられている。Galati氏は、いずれパッチを適用した状態にて同作を再リリースする意向を示している。
『助けてタコさん』は2018年に配信された、ゲームボーイ風2Dアクションゲームだ(関連記事)。人間とタコが対立し激しい戦争が繰り広げられている世界にて、主人公となる小さなタコが争いを解決するための旅に出るアドベンチャー。レトロなビジュアルやサウンド、スプライトなどでゲームボーイ時代へのリスペクトを最大限に表しており、ノスタルジックなデザインや可愛らしいキャラクターが好評を博していた。
一方、ポップな外見とは裏腹にその難易度については賛否が分かれることに。海外メディアのDestructoidは、どこからともなく現れる敵や前触れなく出現する隠しオブジェクト、数フレームずれただけで落下する崖などデザインの粗を指摘。「挑戦的というより怒りを招く」と評し、「Switchを床に叩きつけかねない」とまで述べている。また別のメディアINDIE GAMER CHICKによれば、ギミックを解いた際にカメラが移動したことでキャラクターが死亡するという不具合も見つかっていた。こちらはSteam版では早期に修正されたものの、Nintendo Switch版では長らくパッチが配信されなかった。
この、Nintendo Switch版における修正の遅れが今回の一件の鍵を握っている。開発者であるGalati氏はTwitterにて、修正パッチで難易度問題やイージーモード追加の予定があることを早い段階で告知。ところが肝心のパッチは完成しているにもかかわらず、一向にリリースされない状況が続いていた。Galati氏は、パッチの配信時期はパブリッシャーNicalis次第であるためどうしようもできないことを説明。Nicalisの動きが遅れていることで、プレイヤーらにストレスを与えていることに強い遺憾の意を表明していた。
Nicalisは、ローグライク『The Binding of Isaac』や2Dアクション『Cave Story 洞窟物語』などを擁するパブリッシャー。数々のインディーゲームヒット作を送り出してきた一方で、その企業体質を問う議論が昨年より沸き起こっていた。海外メディアKotakuは同社と関係をもった外部デベロッパーや元従業員を取材。パブリッシングを約束したインディー作品との間で音信が不通となったり、、CEOのVictor Rodriguez氏による人種・性差別的発言やパワハラなどが暴露され批判を集めていた。中には『Enter the Gungeon』のコンソール版販売の約束を取り付けてお流れとなった話や、『The Binding of Isaac』開発者であるEdmund McMillen氏がNicalisとの決別を表明したことなども伝えられている。
Nicalis 側としては、トラブルの渦中にあってデベロッパーへの細かなケアまで手が回せなかった事情があるのかもしれない。パートナーシップ終了を告げるアナウンスにおいては、このたび袂を分かつことが両者とも合意の上だったこと、 Nicalis ・ Galati氏とも互いの働きに対し感謝を示していることなどが表明された。
Galati氏も、序盤ストーリーの導入部分や成功のヘルプを受けたことについてNicalisに感謝しているという。とはいえ、同氏は前述したようにNintendo Switch版にてパブリッシャーがパッチ差し止めしていたことについて、フラストレーションをためていると幾度もコメントしていた。袖を分かつに至る過程においては、パブリッシャー側の対応のまずさが関連していることに疑いはないだろう。前掲した配信停止を告げるGalati氏のツイートに対しては作品が自由になったこと・パッチを当てられて再リリースされる予定があることを歓迎する、ファンの喜びのリプライが多く見られる。2周年のタイミングで大きな波乱を迎えた『助けてタコさん』だが、コミュニティの応援を支えに再起を期待したいところだ。