『ポケットモンスター ソード・シールド』では、なぜ3バージョン目の販売ではなくDLC方式がとられたのか。公式が回答

株式会社ポケモンは、海外メディアGame Informerの問い合わせを通じて、なぜ『ポケットモンスター ソード・シールド』にてDLC方式が採用されたのかを改めて説明している。

株式会社ポケモンは、海外メディアGame Informerからの問い合わせを通じて、なぜ『ポケットモンスター ソード・シールド』にてDLC方式が採用されたのかを改めて説明している。

『ポケットモンスター』シリーズ本編では、新作が2バージョンにて発売され、その約1年後に3番目のバージョンもしくはマイナーアップデート版がリリースされるサイクルが通例となっていた。『ポケットモンスター 赤・緑』における『ポケットモンスター 青』に始まり、『ポケットモンスター サン・ムーン』に対する『ポケットモンスター ウルトラサン・ウルトラムーン』など、形態などを変えながらマイナーアップデート版がリリースされてきた。


しかしながら、『ポケットモンスター ソード・シールド』ではマイナーアップデート版は発売されず、有料追加コンテンツのエキスパンションパスにて、本編を拡張していく方式が採られている。なぜ今回はDLC形式が採られたのか。形式移行への不安はなかったのか。Game Informerがその疑問をぶつけたわけだ。

株式会社ポケモンは、DLC形式への移行には不安もあったとしつつ、「鎧の孤島」や「冠の雪原」における舞台やストーリー、新キャラやポケモンとの出会いを楽しんでくれると確信していたとコメント。さらに過去作では、新バージョン発売時にポケモンをゼロから集め直したり育て直さなければいけなかったと言及。DLC形式を採ることで、新環境に移動後もすぐにお気に入りのポケモンを使ってもらえるだろうと考えたという。

実はこうした説明は、はじめてなされたわけではない。シリーズを統括する増田順一氏は、エキスパンションパス発表時にDLC形式について言及。「これまでは同じ地方を舞台とする新しいソフトを届けてきました」としつつ、「エキスパンションパスはそれらと異なり、今プレイしているレポートからそのまま新しい冒険を楽しむことができます」とコメントしていた。エキスパンションパスのテーマも「より長く、より深く、より新しく」と掲げられており、継続性が強調されている。これまでの作品では、ポケモンそのものを旧作から新作へと移動させることは可能とはいえ、新しい主人公と物語を始めれば、体験のリセットは免れなかった。ガラル地方の体験を途切れさせないために、DLC形式が採られているということ。その主張は発表時から一貫している。

https://youtu.be/ees8NsHd1XA?t=1099

リリース当初こそ“ポケモンリストラ”により大きな批判を受けた『ポケットモンスター ソード・シールド』であるが、DLCの盛り上がりは上々。「鎧の孤島」リリース時にはさまざまな旧ポケモンが復活したほか、連れ歩きが導入されファンを喜ばせた。リベロ・エースバーンが登場やウーラオスの登場は、対戦シーンを大きく賑わせた。「冠の雪原」では、レイドコンテンツを強化するダイマックスアドベンチャーの導入と共に、伝説のポケモンが大量に投下され話題を集めた。新ポケモン追加だけでなく、独自の新コンテンツも好意的に受け取られてきている。従来作品とは異なり、発売のタイミング以外でも大規模な話題集めに成功しているのが『ポケットモンスター ソード・シールド』の特徴である。

※ ガラルサンダーの爆走っぷりも見どころのひとつ


とはいえ、マイナーアップデートバージョンは売上としての貢献度が高い。『ポケットモンスター サン・ムーン』の全世界売上が1620万本である(2020年9月時点)のに対し、『ポケットモンスター ウルトラサン・ウルトラムーン』の売上は、全世界で889万本(2020年9月時点)。合算すると2500万本を超える。『ポケットモンスター ソード・シールド』も売上好調であるが、2020年9月時点での売上は1902万本である。DLCの売上が開示されておらず、また価格も税込2980円と『ポケットモンスター ウルトラサン・ウルトラムーン』の定価を2000円ほど下回ることから、ビジネス的な観点でいえば前作の形式がベターという可能性もあるだろう。


とはいえ、ゲームの売り方は多様化しているのも事実。たとえば、基本プレイ無料の『ポケモンGO』の売上は極めて高い。調査会社による推定値レポートではあるものの、同作は今年10月時点で約1兆円もの収益をあげていると報告されている(Sensor Tower)。形態や求められるミッション、コンテンツ内容などは『ポケットモンスター』本編とは大きく異なるが、無視はできないだろう。同じやり方を続けることがベストとは限らないのだ。そうした意味では、ポケモンのリストラ敢行(およびリリース後追加)やDLC形式をとった『ポケットモンスター ソード・シールド』は、シリーズ本編としてはかなり挑戦的な試みだったと言えるかもしれない。

『ポケットモンスター ソード・シールド』は、Nintendo Switch向けに発売中。今月11月6日からは、本編とDLCがセットになったパッケージ版『ポケットモンスターソード+エキスパンションパス』『ポケットモンスターシールド+エキスパンションパス』が、税込み9558円にて販売されている。

Ayuo Kawase
Ayuo Kawase

国内外全般ニュースを担当。コミュニティが好きです。コミュニティが生み出す文化はもっと好きです。AUTOMATON編集長(Editor-in-chief)

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