世界屈指の人気ゲーム実況者Pokimane氏が、“投げ銭上限額”を約500円に制限。同氏の決断を支持する声集まる

ゲーム実況者のImane“Pokimane”Anys氏は11月3日、実況用ツール提供会社Streamlabsと協力し、自身の配信における“投げ銭”上限額を5ドル(日本円にして約520円)に設定したと発表した。収入源であるとされている、投げ銭に上限を設定した。

ゲーム実況者のImane“Pokimane”Anys氏は11月3日、実況用ツール提供会社Streamlabsと協力し、自身の配信における“投げ銭”上限額を5ドル(日本円にして約520円)に設定したと発表した。ファンに感謝を述べつつ「気前の良い人は成長中のチャンネルや募金、自分自身に使ってあげてください」と語っている。この行動が反響を呼んでいるようだ。


Pokimane氏は、Twitchにて活躍するストリーマーだ。『リーグ・オブ・レジェンド』のプレイや観戦で頭角を現し、『フォートナイト』の実況などで人気が爆発。Twitchでのフォロワーは約620万で、Twitterのフォロワーは約260万。Instagramのフォロワーも540万に及び、Twitchのフォロワー数は全世界6位である。チャーミングなだけでなく、時に熱い部分を見せたり、視聴者をからかったり。また時には冷静に理知的な意見を述べたり。可憐さと聡明さを持ち合わせており、男性と女性両方のユーザーから熱狂的な支持を得てきた。女性ゲーム実況者としては、世界でトップとも言えるほど人気を獲得している。

Pokimane氏は、Ninja氏やShroud氏のようなほかのトップ配信者のように、ゲームが卓越して上手いわけではない。そのパーソナリティによって、視聴者を魅了する配信者である。ゲーマーガールを自称しており、等身大の自分を見せる。飾らない魅力が支持を得ているのである。そんな彼女にもとには、多額の投げ銭が投じられてきた。この投げ銭は、Pokimane氏にとって悩みのタネでもあった。

https://twitter.com/pokimanelol/status/1265096018057560064


投げ銭とは、配信中のストリーマーにその場でお金を支援できるサービスの総称だ。YouTubeではスーパーチャット、TwitchではビッツCheeringなるシステムが用意されている。スーパーチャットやビッツCheeringにはそれぞれ独自の要素があるが、お金を支援すれば送信したテキストとユーザー名が画面に表示される仕組みは同じ。そして支援額が大きくなればなるほど文字のサイズも大きくなり、存在感が強くなっていく。多額の支援をすれば、配信者に自分のメッセージや存在を認知してもらえるわけだ。多額の支援をすることで、配信者にお願いを聞いてもらえるといったケースもある。プラットフォーム側が手数料をとり、それを差し引いた額を受け取る形ではあるものの、ストリーマーにとっては貴重な収入源。そして視聴者にとっては、お金で自分の存在を誇示できるチャンスであるわけだ。

ところがPokimane氏はこの投げ銭を負担に思っていたという。同氏は20ドルの支援を受けた時でさえも罪悪感を抱いていたとのこと。お金を支援する際には、視聴者は当然何かをPokimane氏に期待する。しかし、同氏はその期待に応えたり、相応しいリアクションができないと感じており、バツが悪いと思っていたそうだ。Pokimane氏は極めて高い人気を得ており、それゆえに彼氏の有無をめぐり大騒ぎが起こり、配信を休止した期間もあるほど。視聴者からの期待というプレッシャーと、常に戦ってきたのだ。そんな彼女が投げ銭に上限を設けたのは、自然だと言えるだろう。

※ 休止を謝罪する動画


同じくTwitchのストリーマーであるTucker Boner氏は、この施策を支持。eaJ氏やJoel Berghult氏のような人気ストリーマーも決断を尊敬すると返信している。視聴者もまたこの行動を“自分たちが大切にされている”と感じているようで、翌日の配信では賛辞の嵐。Pokimane氏は結果として大きく株を上げている。Streamlabsの広報によると、投げ銭に上限を課すように求められたのは初めてだという(Polygon)。むしろ逆で、視聴者により多くの投げ銭をしてもらうための相談にのることが多いそうだ。なおStreamlabsの取り組みとしては、配信者が一定以上の支援額を獲得した場合、それらを指定の団体に寄付する選択ができるような方法を模索しているという。

ただし、Pokimane氏による施策は、経済的余裕があるからこそできるということも留意すべきだろう。同氏は今年3月に、Twitchと数年にわたる独占契約を締結。ほかのプラットフォームよりも提示額が低かったと説明していたものの、大きなお金が動いたのは確かだろう。こうした独占契約のほかにも、チャンネルのサブスクリプションによる収入も存在している。さまざまなメーカーとコラボしており、案件によるロイヤリティもある。同氏自身も今回の発表にて、必要以上の支援が不要だと考えられるところまでサポートしてくれたファンに感謝する旨のコメントをしている。経済的地盤があるからこそ、投げ銭に頼る必要なく活動できるのだ。視聴者から、多額のお金を得ることはリスクにもなる。リスク管理としても、賢明な行動だと評することもできるかもしれない。


日本ではVTuberなどを対象とした熱心な投げ銭文化が根付きつつある(Playboard)。配信者によって方針や収入、場合によっては所属している事務所の都合など事情が異なるため、誰しもがPokimane氏のように投げ銭を制限する施策を採用できるわけではないだろう。Pokimane氏の起こした行動は、ほかの配信者に影響を与え、やがて日本でもこうした制限を設ける配信者があらわれるのだろうか。ゲーム実況者にまつわるお金をめぐる動きについては、今後も注目が集まるところだ。

Ayuo Kawase
Ayuo Kawase

国内外全般ニュースを担当。コミュニティが好きです。コミュニティが生み出す文化はもっと好きです。AUTOMATON編集長(Editor-in-chief)

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