『Starfield』『The Elder Scrolls VI』に向けてゲームエンジンの大規模な刷新を図っていると、Todd Howard氏が改めて言及

『Starfield』『The Elder Scrolls VI』に向けてゲームエンジンの大規模な刷新を図っていると、Todd Howard氏が改めて言及。今後『Fallout 76』のようなマルチプレイゲームを手がける可能性についても触れた。

Bethesda Game StudiosのゲームディレクターTodd Howard氏は、11月2日〜11月4日にかけて開催中のゲーム業界関係者向けデジタルイベント「Develop:Brighton Digital 2020」にて、GamesIndustry.bizのインタビューに応じた。その中で、『Starfield』『The Elder Scrolls VI』の開発に向けてゲームエンジンの刷新を図っていると、改めて説明。『The Elder Scrolls III: Morrowind』と『The Elder Scrolls IV: Oblivion』の間でおこなったオーバーホールよりも、大規模な取り組みかもしれないという。ゲームエンジンの開発に関わっているスタッフの数は、かつての5倍にも及ぶとのこと。

*ゲームエンジンの刷新や今後のゲーム開発に関する話は、動画の45分15秒〜より

ゲームエンジンの改良は作品ごとにおこなわれている。そして次世代機向けにも開発される『Starfield』『The Elder Scrolls VI』に向けては、通常よりも大規模なオーバーホールを実施すると、かねてから説明されていた。今年9月にマイクロソフトがBethesda Softworksの親会社ZeniMax Mediaを買収した際にも言及(関連記事)。また10月には、同社のシニアプログラマーが自身のLinkedInページにて、『Starfield』用にアニメーションシステムをゼロから書き直したと記載したことが取り上げられた(Game Informer)。そして今回Howard氏は、改めてゲームエンジンの大規模な刷新をおこなっていると述べ、レンダリング、アニメーション、経路探索、プロシージャル生成技術など、変化が見られる分野をいくつか列挙した。

ゲームエンジンの刷新には想定よりも時間がかかっているそうだが、その出来栄えには自信を覗かせている。ただ、その成果が見られるのはいつなのか、『Starfield』およびその後に控えている『The Elder Scrolls VI』の発売時期については、依然として不明のままである。近年のBethesda Game Studios作品は、新作披露からリリースまでのスパンが短い。『Fallout 4』は発表から発売までわずか5か月であった。今後の作品についても、同様のアプローチが考えられているという。

また、開発期間の長いタイトルにおいては、情報を小出しにしていくよりも、リリースまで時間がかかると予め伝えておく方が、ユーザーは寛容になるとの見解も述べている。新情報の発信やプレビューが続くと、興奮していたユーザーたちが疲れてしまう。うまくバランスを取らねばならないのだ。開発側としても、定期的な情報発信をおこなうとなると、トレイラーやデモ、アセットを制作するのに相当な工数をかけねばならない。それよりも、労力をゲーム自体の開発に注ぎたいとのことだ。

*2018年6月に公開された『Starfield』の発表ティザー

『Starfield』と『The Elder Scrolls VI』はいずれもシングルプレイ用のゲーム。だからといって、同スタジオが今後『Fallout 76』のようなマルチプレイのオープンワールドゲームを作る可能性がないわけではないと、Howard氏は語っている。ただし、もう一度マルチプレイゲームを開発する際には、フルプライスで販売する前に、『Fallout 76』よりも入念なベータテストを実施するだろうと述べている。

なお『Fallout 76』については、ローンチでつまずき、多くの人々をがっかりさせてしまったと、改めて振り返っている。だが、遊び続けてくれるコミュニティの熱心なサポートのおかげもあり、ゲームは改善していき、総合的には開発陣にとって非常にポジティブな経験になったと伝えている。開発者の成長、コミュニティとのつながりの強化など得られたものは多く、マルチプレイゲームの開発が『Fallout 76』の1作だけで終わるとは限らないと、将来に向けて可能性を残した。

発売から9年が経った今でもなお遊ばれ続けている『The Elder Scrolls V: Skyrim』については、ゲームづくりの考えを改めるきっかけになったと触れられている。ずっと遊ばれ続けることを想定した、より未来を見据えた考え方にシフトしていったという。遊ばれ続けると想定してゲームをデザインするのは、そう想定しない場合とは違ったアプローチになる。Modコミュニティも重要だが、ずっと遊び続けられると感じられるような土台ができあがっていないといけない。また、1分あたり、1時間あたりの体験を薄めて引き延ばしていくことで、ユーザーがゲームにかける時間を延ばすという簡単な方法もあるが、そうはしたくないとのこと。

*2018年6月に公開された『The Elder Scrolls VI』発表ティザー

Howard氏は次世代機に向けたゲーム開発にも触れている。ハードウェアの進歩にともない、グラフィックやNPC(数や反応)の可能性が広がっていくのはもちろんのこと。ロード時間の大幅短縮やクイックレジューム機能の活用、クロスプレイ対応など、ゲームを遊ぶ上での摩擦がなくなり、シームレスな体験になっていくだろうと、今後5〜10年の展望を述べた。

過去作品での経験を活かしつつ、次世代機対応の作品として開発が進められている『Starfield』と、その後にやってくる『The Elder Scrolls VI』。両作ともゲームの詳細や発売時期が明かされるのは、『Fallout 4』『Fallout 76』がそうであったように、発売の直前となるだろう。なおマイクロソフト傘下になったとはいえ、『The Elder Scrolls VI』がマイクロソフトのプラットフォームでの独占販売になるとは想像しづらいと、Howard氏は私見を示している(関連記事)。

Ryuki Ishii
Ryuki Ishii

元・日本版AUTOMATON編集者、英語版AUTOMATON(AUTOMATON WEST)責任者(~2023年5月まで)

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